第21話 2つ目クリアと赤い脅威

「ふぅ……。だいぶ歩きましたわね」


私はそれなりの時間をかけて山の頂上付近へと到達した。中腹にいた頃に明るかった空は今やオレンジ色に輝いている。


下を見下ろすと、鬱蒼と茂った木々がまるで岩にへばりついたコケのように広がっていた。


周囲の木々に目を向けると、中腹にあったものとは異なり、少し鋭かったりギザギザになった葉っぱが多い。


この木々の中にリーフリザードが紛れているに違いありませんわ。


「魔力感知」


私は早速周囲の魔力を観測する。しかし、それらしい反応はなかった。おかしいですわね。


魔力感知を何度も使いながら頂上付近を往復していく。すると、崖下の部分に生えている1本の木にうっすらと反応があるのを見つける。


「ようやく見つけましたわ。今度こそ、リーフリザードであって欲しいですわね」


私は崖の窪みに足をかけていき、慎重に崖下へと降りていく。降りていった先にある木はあまり高くはなく、牛の全長くらいしかない。


再び魔力感知を使う。どうやら木の中間部分にある枝葉の中にお目当てのものがいるらしい。私はそこに向けて虫取り網を放つ。


網の中でもがいているなにかを逃がさないよう、慎重に捕まえる。網からでてきたのはギザギザの葉に似たトカゲだった。


「これは間違いなくリーフリザードでしてよ」


やっと捕まえられましたわ。目の前で魔力感知を使っても、リーフリザードはうっすらとしか光らない。おそらく、魔物ではあるものの、魔力量が少ないのでしょう。


でもこれで2つ目の試練もクリアですわ。残るはリオンさんを探すことのみ。けれど、これが1番難しい気もする。


リーフリザードと違ってリオンさんの生息地は図鑑に載っていませんもの。


「ただ闇雲に探すしかありませんわね」


これから広大な広さがあり、木々の茂った山の中を探索しなければならないと思うとため息がでますわ。


「「「「グガーーーッ!」」」」


「な、なんですの!?」


空を見上げると、大量の赤い鳥がこちらを見下ろしていた。鳥の頭には槍先のような鋭い一角がついている。


「あれはスピアバード!」


スピアバードは頭にある角を獲物に向けて突進してくる凶悪な鳥です。


おまけに集団で襲ってくるため、大型の魔物であってもスピアバードの群れを見つけると逃げだす傾向にあります。


ついてませんわね……。


スピアバードの群れから数羽がこちらへと突進しだす。小柄な私を仕留めるのに数は要らないと考えたらしい。


そもそも、小柄な私に群がればスピアバード同士がぶつかってしまうに違いない。


それはともかく、このままだとまずいですわ。


「アイスバリア」


魔力で強化した氷の膜を自分の周りに形成することでスピアバードを迎え撃つ。


スピアバードたちは氷の膜にぶつかると動きをにぶらせたものの、氷を砕きながらこちらに向かって突っ込んできた。


「チィッ!!」


氷で作った膜は狭い。けれどその中をなんとか動き回りながらスピアバードの突撃をかわしていく。


アイスバリアのおかげで動きが遅かったため、なんとか避けきることに成功する。


けれど、このままだと彼らの餌食になってしまいますわね。今突っ込んできたスピアバードたちは地面に突き刺さっていてすぐには立ち上がれそうにない。


けれど、第2陣のスピアバードたちが私に凶悪な角を向ける。


「アイスバリア!」


今度はアイスバリアを膜状ではなく、板状に生成する。そして魔力によって空中に浮かせながらスピアバードを迎え撃つ。


こうすることにより、アイスバリアとの衝突で動きの遅くなったスピアバードを避けやすくなる。


第2陣のスピアバードたちを全てかわすと、私は地面に刺さったスピアバードたちにアイスニードルをお見舞いする。


起き上がったスピアバードと上空のスピアバードに挟撃される恐れがあるためでしてよ。


私は上空を見やる。


スピアバードの群れは大きく、まだ数十羽はいる。


途中で私を襲うことを諦めてくれれば良いものの、下手をしたらその前に私の魔力が尽きてしまうかもしれませんわ。


第3陣のスピアバードが落下してくるのを視界の隅に捉えつつ、私は崖の方を見る。あそこから落下した場合、かなり下の方まで落ちれるはず。


「一か八かやってみるしかない。サンドストーム!」


大規模な砂嵐がスピアバードの群れを飲み込んでいく。


「「「グガッ!? グガッ!?」」」


私を刺し殺そうとしていたスピアバードたちも堪らず砂から身を守るために目をつむりながら羽で身体を覆う。


今ですわ!


崖に向かって走りだすと、私は崖を飛び降りる。下を見ると、地上は想像以上に遠かった。まるで木々がゴミのようだ。


「うぅ……。想像していた以上に飛び降りるのは怖へぶぅっ!」


舌を噛んでしまいました。こんな状況で独り言を言うべきではありませんわね。


「グガッ!」


「「グガッ! グガッ!」」


チィッ。サンドストームから抜けだした数羽のスピアバードがこちらへと向かってくる。


おそらく、私が空中で動けないため、チャンスだと思ったのでしょう。


甘いですわ。


「エア・ウイング!」


口の中にある自分の血を味わいながら、私は自身の周りに風をまとわせる。


そして近づいてきたスピアバードの突進をかわし、すれ違いざまに腰から抜いたレイピアで切りつけた。


切りつけたスピアバードはまるで吸い込まれるように落下していく。


その様子を見て激怒した残りのスピアバード達も私に向けて突っ込んでくる。


「ファイアーアロー」


炎で牽制しつつ、私は迎え撃つ体制を整えていった。

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