第9話 戦闘の終結と報酬
「探偵ねぇ。それで稼ぐのも悪くないな。考えておこう」
「残念だが、お前にそんな機会はない」
天井近くの空中にいた赤ん坊は俺に向けて手をかざす。
「『爆風塵』」
赤ん坊の手から大きな風の球体が放たれる。避けきるのは難しいな。
「『マジック・バリア』」
魔力による障壁を作ることで赤ん坊の魔法を相殺させる。
『爆風塵』は範囲攻撃なため、俺の周りは無傷なものの、部屋の床や壁が風の威力によってズタズタになっていく。
「このバーゼル様の攻撃を防ぐとは、やるじゃないか」
こいつの名前はバーゼルか。
「この程度の攻撃ならなんどでも防いでやる」
「口でならなんとでも言えるさ。俺はそう言った祓魔師を何人も殺してきた。『アイスカッター』」
今度は氷の刃が俺の身体を真っ二つにしようと襲ってくる。再びマジックバリアで防ぐ。
「『
白色の光弾がバーゼルを襲う。
「チィッ。ダークシールド」
漆黒のバリアがバーゼルを守ろうと現れる。ダークシールドと
俺は眩い光が部屋に満ちている隙に天井へと飛びあがる。そしてバーゼルへと刃を向ける。
「ククク。お互い実力は互角なようぐごがぁ!?」
音を立てることなく飛び上がった俺にバーゼルは気がつかなかったらしく、俺のショートソードはバーゼルの胸を貫いた。
「貴様、卑怯だぞ」
バーゼルは最後の力を振り絞り、魔法を放とうとする。俺は胸からショートソードを引き抜くと、バーゼルの頭を切り落とした。
「殺し合いに卑怯もクソもあるか。そもそも、お前だってガースとメリーを騙したのだろう?」
こうして、冒険者としての初仕事は終わりを迎えたのだった。
◆◆◆◆◆◆
風鈴亭を後にした俺は冒険者ギルドに寄る。そして風鈴亭に巣くっていた悪霊を討伐し、依頼を達成したことを告げた。
しかし、風鈴亭に悪魔がいた事や人や魔物が捕虜にされ、あちらこちらに死体があったことなどは報告していない。
そんな事が冒険者ギルドに知られれば、カストルが帝都の治安を守る警備兵にしょっぴかれてしまう。
処刑されることはないだろうが、それなりに高額な罰金を課される事だろう。
冒険者ギルドを後にした俺は自分の部屋に戻り、カストルを呼びだすと彼に対して今日の出来事を報告する。
「そうか。風鈴亭はそんな事になっておったか」
カストルは悲しそうな顔をする。若い頃に働いていた思い出の場所が死臭の漂う悪魔の巣窟となっていたのだ。無理もない。
「ああ。だが俺は誰にも言ってないぞ。宿屋にあった死体は全て俺が処分しておいた。数日後にしっかりと討伐されているのかをギルド職員が確認しに来るだろうが、悪魔がいた事や死体があった事はバレないはずだ」
建物などにおける討伐依頼では達成後にギルド職員が確認しに向かう事が多い。
討伐しきれていない場合、近隣の住民に迷惑がかかるかもしれないからだ。
ただ、ギルド職員もいい加減なので宿屋内に多少の肉片が残っていたりしてもスルーするだろう。
「お主には感謝しかない。これが報酬じゃ」
カストルが袋を渡してくる。それを受け取り、俺は中を見る。袋には金貨が入っている。数えると、金貨は8枚あった。
「依頼料金としてギルドを仲介にした報酬が金貨10枚で、他に1ヶ月分の宿代である金貨3枚を返金してくれるという話じゃなかったのか? 袋には金貨が8枚も入ってるぞ」
金貨10枚は冒険者ギルドを介して受け取るのだから、それ以外の報酬は金貨3枚のはず。
「いや、別に良いんじゃ。悪魔と戦う事になるなど、想定外の事も起きたようじゃからの。冒険者ギルドにバレないよう、宿屋で死体を処分したようじゃし、口止め料として受け取って欲しいのぅ」
「そういう事であれば、遠慮なく貰おう」
ガラッと音を立てて、部屋の扉が開く。
「おじいちゃん! こんな所にいたのね! 早く仕事に戻ってよ
カストルは仕事をサボって来たようだ。
「分かっておる。それじゃあまたの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます