ラブコメ転移〜目が覚めたらラブコメの世界だった〜

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

金髪ツインテ、襲来

「知らない天井?」


 目が覚めたら天井に「知らない天井」って書かれた貼り紙が貼ってあった。何だあれ?


 いつもの俺の部屋、いつもの俺のベッド。だけど少しだけ違和感を感じていた。それが何かと言葉にしようと考えたが、まるで思いつかない。


 リビングに行くと、母さんも父さんもいない。父さんは会社だろうけど、母さんはいつもの俺の朝食を作ってくれているのにどうしたというのか……。急な用事かな?


 物語の主人公は高校生でも独り暮らしだってりするヤツが多いので、何かそんな気分でちょっと楽しかった。


「ふふ……。こんな感じなのかな。自由だけど、朝食は自分で準備しないといけないんだな……。」


 俺は着替えて朝の準備を進めた。朝食抜きで家を出て学校に向かった。


(ドーン!)交差点で人にぶつかって倒れてしまった。向こうが確認もせず全力疾走していたのだ。


「いてて……。大丈夫ですか?」


 道端に尻もちつくほどぶつかるってどれだけ全力なんだよ。


「あんた! どこに目をつけてんのよっ!」


 そう言って、どびしいっ、と人差し指で指を指してきた彼女は金髪だった! 


 完全に日本人の顔なのに金髪! しかも、ツインテール! まるでマンガやアニメから飛び出してきたみたいだ。あ! 瞳の色は赤! 違和感しかない! コスプレか!?コ スプレなのか!?


 更に、転んで尻もちついた彼女は膝が開いていて、その細くて白い足の付け根には緑と白のストライプの下着が見えてしまっていた。


「あっ!」


 俺の視線に気づいた彼女は慌てて座り直し、ばっ、とスカートを押さえ下着を隠した。


「見た!? 見たでしょ!」


 金髪ツインテール少女にキッと睨まれた。


「い、いや。見てない」


 嘘である。バッチリ見た! 頭の中のメモリーチップに焼き付けた! でも、こんなベタな反応をしてしまうなんて!アニメとかで見るあれは、ホントにあんな反応になってしまうんだな!


「あんた! 覚えてなさいよねっ!」


 少女は三下の様な捨て台詞を言って走っていってしまった。


 ◇

 なんか教室に着いた。途中の事を全く覚えてないぞ!? いきなり教室に着いたみたいな……。なんか今日はおかしい。


 俺の席は教室の1番後ろで一番奥。窓際だ。


(ガラッ)「はい! みんなについて!」


 担任が来た。教室のドアはフラットクローズドアで静かなはずなのに、ガラって音がした!?


 担任は20代女性。みんなから朱里ちゃんとか朱里先生とか呼ばれてる。彼女は大学を23歳で卒業したとして、もつ高校のクラスを担当している。一体どうやったらそんなスピード出世できるんだ!?


「今日は転校生を紹介します!」


 高校に転校生! 中々ない経験! しかも、高校1年の1学期のど真ん中で! 夏休みを挟んで2学期からとかじゃないのかよ!


「中野陽葵ひまりです。よろしく……」


 陽葵って……。なぜ転校生の名前は今年の人気の名前ランキング上位なんだよ!


「って、あんた!今朝ののぞき魔!」


 大騒ぎしている転校生を見たら俺の事を指差している。しかも、あの金髪ツインテールは!


「あれはお前が勝手に見せたんだろ!」


 なんだこのいきなりトップギアでの口喧嘩。普通、出会い頭に喧嘩するか? なんか、今日の俺はおかしい!


「あー、中野さんの席は樋口くんの隣の席が空いてるから…」


 樋口は俺の名前! 席の隣を見たら空席があった! 教室に誰も使ってない机が! ちょっと待て! 昨日もあったのか!? 普通、教室に使ってない席あるか!?


「樋口くんは中野さんと仲が良いみたいだから放課後学校を案内してあげてね」


 学校の案内! 普通に入学した生徒でも案内されないのに、転校生だけ案内!


 はっ! 俺もなんかおかしいぞ! 俺は普段こんなにツッコミ体質だったか!?


 転校生が隣の席に座る。一瞬目が合うと……「ふんっ!」と言って向こうを向いてしまった。


 なんだこのかまってちゃんは! 嫌いなら嫌いでいいから黙ってろ!


「あ、中野さんは教科書が届くまで隣の樋口くんに見せてもらってね! 樋口くんは見せてあげてね!」


 急に転校してきた訳じゃないだろう! 準備できなかったのかよ! あと、学校は転校生用にストックしとかないのかよ!


「はっ!」


 気づけば授業中だ! しかも、現国! 教科書がないと絶対どうしょうもないやつ!


 俺と金髪ツインテは机を付けた。俺は教科書が、中野さんにもみえるよう机2つの間に置いた。


「あんた、悪いヤツじゃないのかもね」


 もうデレかよ。デレる基準が緩すぎだろ!ガバガバだ!


「でも、朝の事は許したわけじゃないんだからねっ!」


 いや、そんなに真っ赤な顔してたらもう許してるだろ! しかも、なんなら既に俺のこと好きになってるだろ!


「えー、だからしてー、こうなるわけだが……ここテストに出るからな!」


 おい! 授業内容無さ過ぎだろ! テストに何が出るんだよ!


「うわっ!」


 俺が心の中で突っ込んていたら、また気づいたら昼休みだ! 授業の内容薄すぎだろ! 文科省に怒られろ!


 金髪ツインテが教室内での挙動不審だった。


「おい、金髪ツインテ! 食堂いくぞ」


 食堂の場所くらいクラスの女子が教えてやれ! いや、その前に一緒にいけよ! いじめか!


「ふ、ふん。そんなに一緒に行ってほしかったら行ってあげるわよ……」


 お前のコミュ力が心配だよ。前の学校でも友達一人もいなかっただろ、それ!


 金髪ツインテは俺の後ろからついてくる。


「おい、あんまり離れるなよ、金髪ツインテ」


「わ、分かってるわよ!あと、私には陽葵って名前があるんだから……」


 そもそもはぐれても昼休みならみんな食堂に向かってるだろ。俺もなんで声をかけたし!


 しかも、初対面で下の名前を呼ばそうとするとかおかしいだろ!


「ひ、ひま……ひまり」


「〜〜〜!!」


 なぜ、自分で呼べって言って、実際呼ばれると真っ赤になってるのか!熟れ過ぎたトマトみたいになってるぞ!


「あ、あんたの……名前は……?」


「俺は碧、樋口碧だ」


 俺も人気の赤ちゃんの名前ランキング上位の名前だーーーー!


「あ、あ、あお……、あんたなんて『のぞき魔』で十分よっ!」


 なぜ、全部呼んでから変える!? しかも、「のぞき魔」は犯罪者だろ!


「でも……あり……がと。碧はいつも食堂なの?」


「まあね」


「そか……ふ、ふーん」


 お前、明日勝手に弁当作ってくるつもりだろう! 知らないヤツが突然弁当作ってきたら、サイコホラーだからな!



「はっ!」


 気づいたら朝だよ! しかも、俺の部屋だよ! 昨日はどうなったんだよ!


 ん? やけに布団が盛り上がってる。そう思った次の瞬間、布団が少しだけ捲られ一人の少女が笑顔で飛び出した。


「やーっと起きた? お兄ちゃん♪」


 い、妹!? 現実世界の妹が朝から兄の布団に潜り込んだりするわけがない! やっぱり、ここは現実世界じゃない! アニメの世界の異世界に転移してるんだーーーー!


「お兄ちゃん♪ お父さんは海外出張でずっと帰ってこないし、お母さんは研究で家を空けがちだし、兄妹仲良くしていこうね♪」


 なんだよ、その説明がもりもりに入ったセリフは!?


 そして、父さんは普通のサラリーマンで海外から帰ってこないってヤバイだろ!


 母さんは何の研究か知らないけど、ブラックすぎだろ!労基署動けよ!


 あと、お前は昨日はいなかったはずだ!


 どうなってんだよ、俺の異世界転移!

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