《第一章》 第四話

アジト前 12時30分PM

メル:

「ゼファ…大丈夫?」


シュナイザー:

「遅いぞ~ゼファ?手、貸そうか?」


ゼファ:

「なんの…これしきぃ…!」


買い足したであろう大量の荷物を

一人で背負うゼファ


メル:

「…がんばって?」


シュナイザー:

「”ジャンケンで負けた方が持つ”

とか言うからだよ…まったくも~」


ゼファ:

「だ…大丈夫だって…!

このっ…程度…あぁ?」


アジトの前、床に残る大量の足跡

そして微かに香る…血の匂い


シュナイザー:

「先に入ってるよー?」


ゼファ:

「ッ!待てシュナイザー!」


シュナイザー:

「え…ガフッ!?」


扉を開けたシュナイザーを引きずり込む

銃を持った軍服の男達


メル:

「嫌…!」


ゼファ:

「シュナイザー!!」


そして歩み出る、見知った人物


ヨウェル:

「やれやれ…待ち草臥(くたび)れましたよ

随分、遅かったですねぇ…?」


ゼファ:

「テメェは…!」


ヨウェル:

「また会えて光栄です…ゼファ君

大人しく”ソレ”を此方へ渡して下されば、

そこに居るシュナイザー君は

無事にお返ししますよ…?」


ゼファ:

「なっ…俺達の名前―――」


シュナイザー:

「そんな…どうして…!」


ヨウェル:

「あぁ、てっきり気付いていたのかと…」


メル:

「ッ!」


ヨウェル:

「その”装置”…

発信機と盗聴器を兼ね備えているのですよ

耐久性も一級品でしてねぇ?

首を刎(は)ねない限りは外れません…」


シュナイザー:

「嘘だ!そんな技術…存在するはずが無い!」


ヨウェル:

「”此処”ではできないでしょうねぇ…?」


ゼファ:

「クッ…待ってろシュナイザー!今助けてやる!」


ヨウェル:

「おっと、良いのですか?

お友達が…どうなっても…」


銃を突き付けられるシュナイザー


シュナイザー:

「う…!」


ゼファ:

「て…テメェ…ッ」


メル:

「シュナイザー…!」


シュナイザー:

「大丈夫だよ…”来い、ルーツ”!」


突然、奥の部屋の扉が破壊され

軍服の護衛達を蹴散らしながら現れたのは

スチームドールの…ルーツ


ヨウェル:

「ほぉ、これはこれは…スチームドールですか

念のため部下に拘束をお願いしたのですが、

それを解くとは―――」


シュナイザー:

「やっちゃえルーツ!フルパワーだ!!」


炸薬機構によって繰り出されるハードパンチ

その攻撃を難なく躱すヨウェル

拳が床に突き刺さり、木片が飛び散る


ヨウェル:

「やれやれ…元気が良いですねぇ…しかし」


飛び上がって蹴りを叩き込み

その衝撃でレンガの壁にめり込むルーツ


ヨウェル:

「”教育”が、足りてませんねぇ…?」


シュナイザー:

「ルーツゥウウウ!!」


ゼファ:

「あのルーツが…一撃で!?」


メル:

「ルーツ…!」


ゼファ:

「テメェ…!バースト―――」


シュナイザー:

「待ってゼファ!」


ゼファ:

「シュナイザー!?」


シュナイザー:

「多勢に無勢すぎる…抵抗は…やめよう」


ゼファ:

「本気で言ってんのか!?」


シュナイザー:

「今の僕達じゃ…勝てない…」


ヨウェル:

「物分かりが良くて助かりますよ

ですが、躾(しつけ)は必要ですねぇ…

この子達を拘束してください?」


護衛達が二人を取り囲む


ゼファ:

「ッ!俺に触んじゃねぇ!」


シュナイザー:

「ゼファ…大人しくしてくれ…頼む…」


ゼファ:

「チィッ…わかったよ…!」


ゼファはコラプサーを床に落とした


メル:

「ゼファ…シュナイザー…」


両手を縄で拘束され、

壁際に座らされる二人


ヨウェル:

「楽しく遊んで貰ったようですねぇ?

実に可愛らしい…ですが」


メルに近づき、見降ろすヨウェル


メル:

「…?」


ヨウェル:

「その服は些か相応しくありません…

研究にも支障が出ます

渡していたローブに着替えなさい?」


メル:

「ぇ…」


ヨウェル:

「それとも…今この場で、

私の手を煩(わずら)わせるつもりですか?」


メル:

「…ッ」


ゼファ:

「このゲス野郎ッ!!」


シュナイザー:

「なんて卑劣な…!」


ヨウェル:

「やれやれ…口が悪いですねぇ」


ゼファ:

「グハッ!」


シュナイザー:

「ゼファ…うぐッ!」


護衛から蹴りを入れられる二人


メル:

「二人に手を出さないで…!」


ヨウェル:

「では早くして下さい?でないと、彼等が

もっと酷い目に遭うかも知れませんよ」


シュナイザー:

「ぅ…メルちゃん…」


ゼファ:

「ち…畜…生が!」


メル:

「着替えて…きます…」


ヨウェル:

「素直で、よろしいですねぇ」


奥の部屋に消え、しばらくして

駆け足で出てくるローブ姿のメル


メル:

「ゼファ…シュナイザー…

ありがとう…」


ゼファ:

「メル…!」


メルはフードを深く被り、二人を見ず


メル:

「さようなら…」


そう言い残し、

ヨウェルと共に去って行った―――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る