逢引肉

奥田啓

逢引肉


三木川「またうちか」

三木川というスーツでビシッと決めたメガネの男が笑う。

悔しがる菜々

三木川は見下すようにこちらを見てくる

菜々「もう少しでうちのはずだったのに・・・」

三木川「まあアイデアはいいけどもう一歩って言うか。準備不足だと思うよ。もっと詰めたほうがいいんじゃないかな」

菜々「くっそ・・・・」

三木川「肉ばっか食べてるから脳が肉ばっかりになって頭が働いてないんじゃない?」

菜々「なっ!この・・・あんたね!」

腕を振りかざそうとした時

夢から覚める。

窓から光がさしていた

菜々「・・・・・・」

菜々「またあいつの夢か・・・」


社内にて

菜々「明日だって言うのにあいつの夢見るの本当腹たつ」

独り言を言う菜々。

部長が菜々に話しかける

部長「ついに明日コンペだな」

菜々「そうですね」

部長「絶対ホワイトドックには譲らん。今回は本当に大口だしうち的には取ったらでかい」

ホワイトドックと弊社ブラックモンキーは長年広告業界でしのぎを削ってきた。犬と猿の戦い。文字通り「犬猿」の中だ。

菜々「ナショナルクライアントですもんね。ライフラットはここ数年で一気に生活日用品の会社のトップになりましたし。女性ウケ抜群ですもんね。」

部長「うちは女性にむけた商品の広告弱かったけど倉橋がメインになってから女性系の商品扱ってるクライアントからめちゃくちゃ取れるようになって女性系といえばと言われつつある。この波に取ってライフラット取れたら天下に一歩近づくと思う。」

菜々「任せてください。今回もプレゼンするのは多分あいつですからね絶対倒してみせます」

部長「三木川ね。あいつ本当ぽんぽんとるからな。」

菜々「今まで結構負けてますけど、今回は女性向けですからあいつは男だからこっちが有利ですよ。だってあいつもろ論理的ですし、恋愛とかしてなさそうだし女性のことわからないと思うから女性に訴えかける広告なんて作れませんよ」

部長「ここは一つ有利だな。どんなに近づいても究極的に男性は女性の気持ちはわからないからな。頼んだぞ。」

菜々「絶対とって見せます」

水原「景気付けに何か食べに行きましょうよー」

菜々より3年後輩の水原が近づいて言う。

部長「そうだな。あっこことかどうだ?」

部長はスマホを取り出し画面を見せる

部長「上野にある店でさここのメンチカツうまいらしいんだよ。口コミでもかなり人気で」

水原「ぶ、部長・・」

菜々がギロリと部長を睨む

部長「あっ・・」


菜々は席を立ち上がり

菜々「ちょっとトイレへ」

一瞬口を拭うそぶりをし、それをさっと隠して菜々は出ていく

水原「もう気をつけてくださいよ肉の話はダメなんですから」

部長「すまんすまん。うっかりしてた」

水原「もー」

部長「なんでダメなんだっけ?」

水原「さあー肉食べちゃダメなおうちで育ったとかじゃないですか?飲み会とか一切肉手をつけないですもん」

部長「まあ確かに一回も見たことないな倉橋さんが肉食べるの」

部長「でもなあ」

水原「?」

部長「なんか一瞬よだれ出てたような」

水原「そんなわけないですよ何言ってんですか。肉めちゃくちゃ嫌ってるのに」

部長「まあそうだよな」






トイレにて


洗面台の前で震える菜々

菜々「くっ・・・」

菜々「あーーーなんで『大山』みせるかなあ!あそこのメンチはめちゃくちゃ美味しいんだよなあー!!メンチハマってた時週3とかで食べてたあの時が蘇って・・・ああメンチ食べたいー!!」

菜々は鏡の前で血走った目をしていた。

菜々「年々肉食べたい欲求が加速してるから抑えるために1週間肉断ちしてたのに・・・」

肉を見ることは食べたいよ急につながるので見ることさえ絶っていた菜々だが思わぬところで目の当たりにしてしまった

菜々「会社でも食べたら無尽蔵に食べてしまってひかれるし肉茎のお店とか回避して我慢してたけど『大山』だけはダメ・・・あれは本当に美味しいから・・・」

菜々「ダメだ明日はコンペなのにこんなことでコンディション崩しちゃいけない」

菜々は頬を両手で叩き気合いをいれる。

菜々「よっしコンペで結果出るまで肉我慢だ!」

SNSを開き「仕事がひと段落するまで肉断ち!」と書き込む

するとすぐにリプライが来る

菜々「あっ『ミートボーズ』さんだ!」

ミートボーズは菜々が憧れている肉グルメ界のインフルエンサー。彼は菜々が知らない肉グルメの情報をたくさん知っており、いつも投稿をチェックしている。フォローされてからたまにやりとりをしてくれたりする。菜々がいつか会いたいと思っている憧れの存在だ。

「お仕事大変そうですね、頑張ってください!終わった後のお肉は格別ですよ!」と返信が来ていた

菜々「うわー優しいこんな私に声かけてくれるなんて。爽やかな人なんだろうなあ」

ニヤニヤしながらトイレを出る。


トイレを出ると水原がいた。

水原が不安そうに声をかける

水原「菜々さん大丈夫ですか?」

菜々「ん?何?さっ仕事仕事ー」

水原「あれっなんか機嫌戻ってる・・・?なんだったんだ?」






次の日ライフラット本社

菜々「でっかい・・・」

巨大ビル1棟丸ごと、ライフラットの本社ビルらしく、それに驚く菜々

部長「さすが天下のライフラットだな。おのぼりさんみたいにみてないでいくぞ」

部長と菜々は受付をすませ入館用のカードを受け取りセキュリティを通る。

エレベータを待つ。

部長「緊張してるか?」

菜々「大丈夫です。昨日ギリギリまで最終チェックしてもう完璧です」

部長「そうか。倉橋さんなら今回取れそうだな」

菜々「ええ。」

遠くから声が聞こえる

徳島「あら、ブラックモンキーさんじゃないですか」

振り返るとホワイトドックの部長と三木川がいた。

部長の舌打ちが聞こえる。

徳島「天下のライフラットは大きいビルでさすがですよねえ。これから定期的にくることになるから見慣れるかなあ」

部長「今日で終わりだろ。今回はうちがもらう。お前に女性の気持ちなんかわからんだろ?大学の時脈なしのやつに5回告白してふられた徳島くん」

徳島「なっ・・・今は関係ないだろ」

部長「そんなお前が女性に支持されている商品を扱う広告を作るなんて面白いな」

部長と徳島は睨み合う。

菜々心の声「二人は同じ大学でライバル関係にありいつも競い合っていたらしいけど。

その代理戦争的なものを私がするのはなんかなあという感じだけど」

三木川を見るとすました顔をしていた。

三木川「今回も勝負になるといいのだが。前回は弱すぎた」

菜々「今回は負けないから。特に男のあんたには。」

三木川「ふっ・・・」

三木川は笑いながらメガネを上に上げる動作をする

菜々「何がおかしいの?」

菜々はイラついて聞く

三木川「なるほどね。君はそういう感じか」

菜々「なんなの」

三木川「まあ後でわかるよ。いろいろね」

菜々心の声「あいつ本当いつも馬鹿にしたような顔をして。今日は絶対倒してやるから」

エレベーターが来て、中に入って、目的の階なお喧嘩が続いていた。











コンペ会場


菜々「であるので女性層を拡大していくためには届いていない女性にも刺さるものとなっております。」

まだ手が届いていない女性ユーザーを増やすという目的の内容でプレゼンが終了した。

ライフラット側の反応を見ると上々だった。

菜々は少し安心した。

進行「では次にホワイトドック社、お願いいたします。」

三木川が前に出てきてモニター前に立つ

三木川「我々は今回で男性ユーザーを取っていきたいと考えております。」

菜々は予想外のことに驚く。

菜々の心の声「いや・・・今のライフラットのやってることを全否定することになるんじゃないの?何言ってんのこの人。これはミスね、勝ったかも」

三木川「ライフラット社の本来の目的に立ち返ってみました。生活を豊かにする、誰もが豊かに生活ができる、その支えになる商品を作っていく、これが創業時の目的でした。女性に多くの支持を集めているイメージがあります。現在のデータでも女性の購入者の数が圧倒的ですが、数年前をみてみると男性もかなりかっていた時期があり、

女性イメージがついたとともに男性購入の割合が減ってきております。

商品をみてみると男性も使えるものが多く、創業時の制作マインドを持っていることが窺え

イメージと制作マインドが喧嘩しているように思えます。

菜々の心の声「余計な提言、もう批判的な内容になっててもうだめねこれ」

三木川「イメージが購入層を棲み分けてしまっているのです。ライフラットは全ての人の生活を豊かにする。そこに立ち返って「生活は豊かになるようデザインできる」

このキャッチコピーをもとに全ての人にライフラットの商品を使ってもらえるよう訴えたいと思います。」

ライフラット人は怒っているだろうと見るとおおおっと声を出し満足げにうなづいている。

菜々「え・・響いてるの・・・?」

そこから畳み掛けるようにプレゼンが続き社長がいろいろ質問してきてとても場がが盛り上がっていた。ブラックモンキー社は空気扱いだった。

徳島がこちらをみてニヤニヤしていた。

部長が睨み返していた。

三木川のプレゼンが終わりこちらをすれ違う瞬間

三木川「詰めが甘い。だから取られるんだ我々に」


定食屋

菜々「負けた完全に・・・・」

菜々は俯いている。二人席の片方には部長が座っていた

部長「我々は沿って言ったが向こうはねじ曲げて説得というパワーで持っていったな」

菜々「三木川のプレゼンで空気がこれ採用したい感が出てました。コンペじゃないですよあれは。最初からホワイトドックにお願いしてそのプレゼンを聴いてるみたいな

部長「まあそうだな」

菜々「すいません・・・社運がかかってたのに」

部長「俺は倉橋のプレゼンいいと思うんだがな。向こうのオーダーに沿ったものを提供した。向こうはオーダーとは違うかなりリスキーなことをしてた。あれは失敗してたらかなりの大ダメージだ倉橋さんは正しい方向に行っていたと思う。ほら今日俺の奢りだ食ってくれ」

菜々「はい・・・・」



菜々の家

ベットに寝転びため息をつく

菜々「ああやっちゃった・・・完璧だと思ってたのはアンパイ的な方向に完璧だったのであって相手は三木川でどんなイレギュラーがくるかを予想できなかった・・ううもう仕事行きたくない・・・」

無意識にスマホでネットサーフィンしていると大山のメンチを見ていた

菜々「メンチ食べたい・・・・」

スマホを手に取りSNSを開き「仕事ミスったもういや」と呟く

菜々「こんなかまってちゃん的なの嫌だと思ってたけど・・・ああだめだーやっぱ消そうかな」

その時DMがくる。

ミートボーズからだった。菜々は慌てて内容を見る

「お忙しい中連絡すみません。なんかナナさん大変そうだったのでついメール送っちゃいました。お仕事大変そうですね」

菜々はミートボーズからのDM少し舞い上がりながら返信する。

菜々「心配していただいてすみません。最近仕事うまく行ってなくて」

ミートボーズ「ありますよね・・・僕も結構上司から詰められたりとかあるので大変ですよね」

菜々「ミートボーズさんはテキパキやってそうです。願掛けのつもりで1週間肉断ちしてたんですか効果なく・・・」

ミートボーズ「1週間!それはすごい。僕は1日で無理ですね。最近気になってるメンチが食べれるとこがあって良かったら付き合ってもらえませんか?御馳走しますので」

ミートボーズからの誘いにドキドキする菜々。

菜々「えっメンチちょうど食べたかったです!」

ミートボーズ「ノリが良いですね。そういう人付き合いがいい感じだからナナさんモテそうですね笑」

菜々「本当ですよ!肉断ちしてるときに大山のメンチ見ちゃって・・・」

ミートボーズ「あれは確かにやばいですね笑 いつごろ空いてますか?」

菜々「土日ならいつでも!」

ミートボーズ「それならちょっと急なのですが今週とかどうでしょうか」

菜々「大丈夫です!」

ミートボーズ「それでは西武池袋線の富士見台というところで待ち合わせましょう。」

菜々「はい!よろしくお願いします!」


菜々「やばいミートボーズさんに会える!お洒落して気合入れていくぞー!」

菜々は部屋で一人気合を入れた。



富士見台駅

土日なので地元の人たちで賑わう駅前。

近くにあるドーナッツ屋はキャンペーンをやっているのか列をなしていた。

菜々はミートボーズからのメールを見る。

身長高で茶色のロングコートきていると書いてある。

菜々も白のコートをきていると伝えている。

菜々はあたりをキョロキョロと見渡す。

身長の高い茶色のロングコートをきた男性が改札から出てきてキョロキョロしている。

一応教えてもらった電話番号をかけて見ると彼が出た。

菜々の方へ手を振り爽やかに笑う。

菜々のイメージ通りだった。近づこうとすると彼が突然驚いた顔をした。

不思議に思ったが菜々のイメージが違ったか何かかなと思いながら菜々はちかづく

菜々「はじめまして菜々です。ミートボーズさんですか?会えて嬉しいです私いろいろ投稿見てて憧れてて・・・」

菜々は憧れの人に会えて満面の笑みで言う。

ミートボーズ「なんで君が・・・・・」

菜々はミートボーズがなんか様子がおかしいことに気がつく。

そしてどこかであったようなと思いよくよく見る

菜々「えっ三木川!!!」

いつもはメガネをして髪をあげているが今はメガネをせず髪を下ろしているためぱっと見では分かりづらい状態であった。

菜々「えっなんであんたが・・・・ここにいるの?」

三木川「いや・・・それはこっちの・・・」

菜々「えっ・・・・ミートボーズってあんた・・・?」

三木川は気まずそうにうなづく。

菜々「最悪・・・・こんなやつに憧れたとか・・・さっきもう恥ずかしいこと言ってたし」

三木川「俺も知らなかったんだよ・・・」

菜々の心の声「めちゃおしゃれしてきたのに・・・もうやだ帰る」

菜々は改札に向かおうとした。三木川は菜々を引き留めた

三木川「ちょっと待て。俺はいいからせめてメンチだけ食ってそれで帰ればいい本当に美味しいからここまできてもったいない」

菜々は「あんたと食いたくない。仕事もうまくいかなくて一つの癒しになると思ったのにこんなの耐えられない」

三木川は少し寂しそうな顔をした。

それを見て菜々は心が痛んでしまった。

三木川「俺は店の場所教えるだけだから。歩いてすぐだし、そこからそれぞれ別行動すればいい」

菜々の心の声「あのにっくき三木川だけどミートボーズでもあるからな・・・彼が言う美味しいは悔しいけど魅力的だな・・・」

菜々「・・・じゃあ教えて」


三木川が前を歩き少し離れて後ろから歩く菜々。

本当にすぐで歩いて2分くらいのところにそれはあった。

2階建てのビルで一回が写真館。その上2階に位置していた。

菜々「牛蔵・・・?えっこれって予約が取れないって言う有名な焼肉屋さんじゃ・・・」

三木川「あっ知ってるのか。」

菜々「ここ何ヶ月待ちとかでしょ!?A5ランクの肉が安く食べてれ・・・超行きたかった」

三木川「そうそう!ここの最初に出るざぶとんって言うお通し的な奴がうまくて一回しか食べれないからマジでそれのためにだけいくまであるからな。たれもうまくて」

菜々は「へー!!」

菜々は一瞬キラキラした目をしたが目の前が三木川だと言うことを思い出し冷めた。

菜々「って言うか焼肉じゃん。メンチでしょ?ここで頼むの?」

三木川「いやここじゃない」

菜々「え?」

三木川はさらに進み店の角を曲がる

菜々もそちらについていくと人がかなり並んでいるお店があった。

牛蔵売店と書かれていた。

菜々「えっここは?」

三木川「牛蔵がやってる惣菜やさんだよ」

菜々「えっ牛蔵惣菜やってたの?」

三木川「牛蔵で仕入れた肉とかこっちで別のお惣菜として売ってるんだよ。地元の人とかでかなり人気なんだ。」

列の最後尾に二人は並ぶ。

ガラス張りの向こうに調理していたり、接客する人がいた。

菜々「すごい。牛蔵の肉でお惣菜はめちゃ期待できる・・・地元の人羨ましい。」

三木川「ここのほら見てあれ丸っこいの」

菜々「あれっメンチ丸っこい。珍しい」

三木川「吉祥寺のさとうっぽいよな。そこリスペクトかな」

菜々「そうなんだ」

菜々の心の声「よく知ってるな・・・」

三木川「じゃあここで並べるから。それじゃ」

三木川は去ろうとする。

約束通りではあるが三木川でありずっと憧れていたミートボーズでもあるので

話を聞きたくなっていた。

菜々「ちょ、ちょっと」

三木川「え?」

菜々「一緒の並んでよ」

三木川「えっでも」

菜々「他にもおすすめ知りたいから。私はミートボーズさんに会いにきたんだから」

三木川「・・・いいのか?」

菜々「・・・うん」


三木川「ここのコロッケももちろんうまくてあと焼肉の弁当もある。」

菜々「へー弁当ってじゃあ普通に日常的に牛蔵の肉食べれるじゃん!」

三木川「しかもそんな高くないんだよ千円前後。」

菜々「あっやすい。」

三木川「牛蔵本店では食べれないものもあるのが魅力だな。ハンバーグもある」

菜々「あっ食べたいハンバーグやばいそう!」

菜々と三木川はまず本命のメンチカツとそれぞれ気になるものを渡されたカゴに入れる。

会計の時になると

三木川「俺が払うよ」

菜々「えっべ、別にあんたに・・・」

三木川「御馳走するって言ったろ」

菜々「・・・・・」

会計を済ませ少し離れたところにいく。目当てのメンチを取り出す

菜々「丸っこくて可愛いいただきます」

肉汁と同時に他では味わえない味付けのメンチの味わい深さに襲われる。

菜々は肉断ちをしていた数日ぶりの肉故に余計感動が深まる。

菜々「・・・美味しい・・・・・!!やばいこんな美味しいんだここの・・・やばい」

三木川「だろ。ほんとここのメンチばっか食べちゃうんだよな。」

ニコニコしながら菜々は三木川を見る。三木川が照れながら目を逸らす。

菜々は自分が三木川に向けている表情にはっときがつき目を伏せる。

三木川「出来立てをすぐ食ったからな余計うまいなちょうど出来立てが食えるような時間に調整して正解だった。」

菜々「そうなんだ・・・」

嬉しそうに話す三木川を見る。

いつもは敵としての姿しか見てなかったけどまさか一緒にメンチカツを食べることになるとは違和感で菜々は気恥ずかしさを感じていた。チラッと三木川を見る。

菜々の心の声「普段はメガネをして冷徹なサラリーマンと言う感じだけどメガネを外して髪を下ろすと結構かわいい顔をして・・・・」

菜々は自分の考えていることの気持ちの悪さに落ち込む。



メンチカツを食べ終わり、しばらく世間話をする。

三木川「今度これ行こうとしていてラムのしゃぶしゃぶで」

菜々「えっラムでしゃぶしゃぶって珍しい!いいなあ行きたい!あっ・・・」

ついつい肉の料理になると警戒心を時ガチになる自分を戒める菜々。

メンチカツを食べ終わり、解散する流れになる。少しだけ元気になった自分に驚く菜々。

菜々の声「なんか落ち込まされた相手に元気付けられるのしゃくだけど・・・」

菜々「一応今日はありがと・・・」

三木川は苦笑いしながら、ああと言った。

菜々「じゃあ私帰るね」

三木川は軽くうなづく。

改札に向かおうとしたら三木川が声をかける

三木川「あのさ・・・いかないか?」

予想外の言葉に驚く。

菜々「へ?どこに?」

三木川「さっき行ってた店」

菜々「な、なんで?」

三木川「なんでって・・・」

三木川は口ごもりしばらく考え何かを決したように言う。

菜々「実は前から倉橋さんのこと気になってて・・・」

菜々は予想外のセリフに驚く。

菜々「えっ・・・・いやっいつも馬鹿にしてきてたのに・・・」

三木川「えっ馬鹿にしてないが」

菜々「いや結構行ってきてたじゃん・・・」

三木川「いやあれはなんて言うかうまくアドバイスしようと・・・」

菜々「アドバイスって・・・」

三木川「最初見たときから可愛いなって・・・・なんか仲良くなれないかと思って」

菜々は敵対していた相手から恥ずかしい言葉が出てくるのがもう違和感と困惑で忙しくなっていた。

菜々「いや私たちライバル会社同士だし・・・」

三木川「会社とか関係ない。倉橋さんはどう思ってる?」

やけにグイグイくる三木川に怖気ずく菜々。

構わず迫ってくる。

菜々「ちょっと待って!って言うかグイグイきすぎ!」

三木川「えっ・・ああ、申し訳ない」

菜々「普通引くでしょ最初でこんな。女の子にアプローチしたことないの?」

三木川「経験は少ないな」

菜々「そうだろうなあ」

少ししゅんとなる三木川。コンペの時にこう言う落ち込ませるような顔をさせたかったのになと菜々は思う。

全然知らなかったけど悪い奴じゃないかも、と少し印象が変わっている自分に驚き笑う菜々。

菜々「こっそりなら」

三木川「え?」

菜々「会社の人とかにわからない場所でこっそりとかなら」

菜々は目をそらしながら三木川に言う。

菜々「会社の人にばれたらやばいでしょ。だからわからないとこなら」

三木川「マジかよかった!」

菜々「美味しい肉料理食べれるとこ教えてよ、得意でしょ『ミートボーズ』さん。」

三木川「任せてくれ!」

ライバル会社同士の男女の肉を食べる逢引が始まるのだった。






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逢引肉 奥田啓 @iiniku70

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