第193話 疾風迅雷 その3
「そそそそそ、その程度の技ァ! う、受け止めてしんぜようッ……! ほら、やってみろよ!」
(あの野郎、かなりビビってやがる……さっきまでの威厳はどこにいったんだ? てか、かつてのオレはこんな奴に憧れてたのか……恥ずかしい限りだぜ)
先程までのロドリゲスの余裕ぶっこいた言動はどこへやら、今は打って変わって明らかに疾風迅雷が繰り出す技に焦っている様子だ。ユウヤのペガサスと、ヒビキのユニコーンの合わせ技、その名を疾風迅雷。まさかこれほどまでに強いとは……
「さぁさぁ、お神さんよォ……かなりビビってるっぽいからさ、特別におまじないかけてやらァ! 痛くなーい、痛くなーい! ほらほら、チクッとしますよ〜ん」
(まるでガキに注射するナースじゃないか……明らかにロドリゲスのことをナメてやがる、我ながらなんてヤツだ……!)
「おおおおおおおおおお、おのれ……! は、早く撃てよ、なんちゃらかんちゃら弾を!」
「あぁ、分かった分かった。いくぞー? 1万分の1に加減した雷網颱禍弾、そーれっ!」
雷鳴と暴風が迸るエネルギー弾がついに発射された。それは光の如きスピードでロドリゲスに飛来し、たちまちロドリゲスを捕まえて物凄い雷撃と風圧を絶え間なく浴びせ続ける。
「グアアアア、アガ、アアアアアアアア! 聖霊如きに、人間……如きにィ……!」
「あーあ、やれやれだ……。ピンチってヤツだなぁ、ロドリゲスちゃんよぉ。だけどな、それはこっちにとっちゃ大大大、大チャンスなんだからなァ! 喰らえダメ押し、雷雲地獄・乱気流ッ!」
さらに疾風迅雷は畳み掛ける。ロドリゲスを大きな雷雲に飛び込め、無数の雷でさらに攻撃する。もはやロドリゲス側に全く動ける猶予は無い。ただただ、疾風迅雷の攻撃を受け続けるのみだ。だが……
「ぐっ……! 流石にオレにも限界が近付いてきてやがる! おい疾風迅雷、もっと力を絞るんだ! そしてユウヤ……早く帰ってきやがれ!」
「アァ!? 誰に命令してんのか分かってんのかこの元ヤンがァッ!」
(ああダメだ! これじゃ話が通じねぇ、一体誰に似たんだか……)
聖霊と聖霊の合体、かつ一時的な人間化。知る人ぞ知る奥義、その名はブレンド。一時的に強大な力を持つ存在を召喚できるが、それはメリットばかりではない。
デメリットその1。ブレンドにより生まれた存在をうまく操縦する必要がある。ゲームのコントローラーを握って画面上のカートを走らせるように、あるいは複雑な機械を1つもミスすることなく動かすように、その難易度は生まれる存在によって千差万別である。
デメリットその2。ダメージやスタミナのフィードバックが、ある程度本人にも共有されること。ほとんどの場合無視していい問題なのだが、疾風迅雷の場合そうはいかない。あまりにも強大な力を持つあまり、流石にヒビキ1人でそれを耐え続けるのは困難なのだ。
デメリットその3。性格は期待できない。いくら良い人と良い人でブレンドを行おうと、生まれてくるのは両者の欠点やイヤな特徴を煮込んだような性格の持ち主である。聖人が生まれてくる可能性など、宝くじに当たるのと同じくらいのレベルだ。
幸い、今はロドリゲスを簡単に足止めできている状況だ。だが、今回は以前のユニコーンとセイレーンのブレンド、その名を雷浪ですら優等生に思えるほど疾風迅雷は問題児なのだ。なんせ、0.01%の力で戦ったかと思いきやどんどん必要のないダメ押しを続ける、下手すりゃ暴走してヒビキを襲いだす可能性もある。
情けない話だが、ヒビキにできることはただ1つ。早くユウヤに戻ってきてもらうことを願うのみだ。
(ハァ、ハァ、ハァ……チッ! しくじったかもしれねぇ、これは! どんどんオレの体力が失われていく、マズい、明らかにマズい……!
だが、ブランドの他に方法も思いつかねぇ、実は最初からチェックメイトだったのか? 少なくともオレらの方はよ……!)
「ハハハハハハハ! さぁさぁ苦しみたまえ、雷と風のコンボはさぞ痛かろう……! だが、これで終わるつもりなどさらさらねぇぜ!」
「アア、アアアアア……! やめろ、それ以上の雷は……!」
「あぁそうかそうか、雷の使い手と言えど、これほどまでの高圧電流には耐えられないよなァ! ならばもう一発だ、百・億雷鉄砲ォォォ――」
「それ以上の雷はオレを更に刺激してくれるゥ! こんな演技に騙されるとは、人間社会で知性も何もかもなまっちまったみたいだな!」
「「何っ!?」」
「フンッ……! 見ろ、この膨れ上がった肉体を! 今のオレはさっきの1000倍は強い、さぁ地獄に落ちろ東雲ヒビキィ!」
「……そ、そんな……」
最悪である。これまでの「ダメージを受けていた」かのような展開はすべてロドリゲスの演技だという。それどころかロドリゲスは雷の力を吸収し、急激なパワーアップを遂げた。実際その肉体の変化は凄まじく、ヒビキへと向かってくるその姿はインドゾウを彷彿とさせる。
だが……
「グヒャハャヒャハヒハヒ、ハ、ヒ……ハ……なんだ、この、かんか、く、は……!?」
「な、何が起こった!?」
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