第145話 謎の合体戦士、自由奔放!?
「な、何っ!? ヒビキ殿、まだこれほどまでの体力を残していたでござるか!?」
「あぁ……ユニコーンにはとある伝承がある。この角には毒に対する強力な力が宿っていてな。オレもユニコーンと一体化した今、
ヒビキは角を指さしながら話すと、アパタイザー達はさらに眉間にシワを寄せて大声を上げる。
「くそっ……演技だったのか、このクソ上司が!」
「……ブチギレてる余裕があるのかな、アパタイザー! アタイ達にかなり押されてるように感じるよ、人数有利なのはそっちなのにね!」
カナの言う通り、ヒビキの秘策によりアパタイザーは窮地に立たされていた。もう2人の攻撃をせき止める余力は残っておらず、膨大な威力を誇る合わせ技に打ち負かされてしまったのだ。
「ぐあああああ……そんな、ボクがまた負けるなんて……」
「ぐっ……コウキ様のチカラを分けていただいたとしても、及ばぬ相手がいるなんて……」
「当然だろ? お前らの戦いのクセもすべて熟知してんだよこっちは」
ヒビキは痰を吐きつける。それが癪に障ったのか、ヴィアンドはゆっくりと立ち上がると腕を広げてタックルを仕掛けてきた。
「ゴミカス野郎……このフィジカルでぶっ潰してやる、覚悟しろヤンキーかぶれとバカ女ァァ!」
「懲りないオッサンねぇ、アタイは接近戦のほうが得意なんだ――」
「いや待て! 何だか様子がおかしいぞこいつ……!」
「ガハハハハハ! その通りだ東雲ヒビキ、オレだけ聖霊を宿してないとデモモモモモモモ思、ナイトデモ思、思思思思思――」
「えっ、これって暴走ってやつじゃ――」
「聞くなカナ、オレの右手を握って寝てろっ!」
「キャッ!」
(すまねぇな、これもトラウマを掘り起こさせないためだ……それにしても、上手くいってくれよ!)
熱暴走を起こしたコンピューターのような挙動を見せるヴィアンドを見て何かを察したのか、慌ててヒビキはカナを気絶させ、「何か」を強く念じ始める。
すると、カナの心臓の辺りから青白い光がゆっくりと生まれ、ヒビキの中へと入り込む。それを確認したヒビキは地面に強く左手を叩きつける。
(ブレンド、すなわち聖霊と聖霊の融合かつ人間化……あの様子を見るにヴィアンドは何らかの聖霊に完全に乗っ取られちまった! まだコウキのヤローの眷属だった方がマシかもなぁ!)
「その通りだ東雲ヒビキ、ヒビキ、ヒビキ、ビキ! 聖霊を宿ビキ、思思思ガハハハハハハハハハハハハ――」
バグを起こして暴走するヴィアンドを無理やり制止するかのように、青と黄色の光が混ざり合い人型のホログラムを投影する。
やがてそれは半透明に実体化し、ヒビキとカナを足して2で割りつつも、セイレーンのような魚の尾びれに長い髪、かつユニコーンのような角と尾を生やした状態で誕生した。
「い、一体何でござるかあの者は!?」
「分からない……けど、なんだかとってもヤバい気がする……!」
「マンドラゴラ、天狗……いや、€⊗ゝとγ‰θθξを宿した者が背後に2人いて……あとは暴走状態のサイクロプス、いや◐ਊσθに完全に蝕まれたジジイが1体……遊んでいても余裕だな」
謎の戦士は人差し指で小さく丸を描くと、その刹那、小さな雷雲が現れた。すると無数の雷と滝のような大雨が一斉にヴィアンドに襲いかかった。
「ヴオ、ヴオオオオオオオオオオ!」
(なっ……! 鼻息だけで山でも切り崩しそうな強さがある、これなら楽チンにあいつらまとめて始末できそうだ!)
「お、おいじゃなくて……あの、聖霊さん。特にあのおっさんは始末してくれ、さもなくば敵味方関係なく大暴れしそうだか――」
「アァ!? 誰に命令してるんだ……? 雷で丸焼きにされてぇのか……?」
(ヒ、ヒビキ殿みたいな性格でござるな……)
謎の戦士はむしろヒビキを威圧する。だが、対するヒビキも臆することなく続ける。
「雷を雷で消滅させられるとでも思うか? お前は一瞬だけ活動できる仮の存在、気分次第で今すぐ消せるんだぞ?」
「ハァ、そんなこと言っていいワケェ? つーかさ、こんなんが上司だから上手くまとまらないのよアンタの班……平成すらずっと前に終わったのよ、ダチに愚痴確定〜」
(こ、これはまるでポワソの性格だ……ボクあの人やっぱ苦手なんだよな……)
まるでヒビキとカナの要素を無理やり混ぜて煮詰めたような性格の彼、彼女? であるが……これではコントロールできない、ヒビキはやり場のない怒りを地面に叩きつける。
「クソォ! やっぱりブレンドは奥の手にすらなれない、しばらく封印――」
「……ねぇ、いい加減名前つけてよ。もう20秒も経ってるじゃねえか?」
「チッ……ならば
「えぇ、もっとイケイケな感じが良かったんだけどぉ、まぁいい……荒波レールガン・ダブルゥゥゥゥ!」
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