第133話 フォーチュン その1
メイが亡くなった……その実感はずっとぼやけた状態でユウヤの心の中に浮かんでいた。今にでも「復活しましたわ」なんて電話をかけてくるんじゃないか、ずっとそのことばかり考えていた。
メイとの出会いは、きっかけは栄田マスターの薦めだった。聖霊について詳しく、それでいて錬力術の扱いに秀でている、と。
実際、メイはかなり心強かった。なかなか戦ってくれないということもあったが、あの男がメイのタロットを奪って襲いかかってきたとき、正直なところかなり恐ろしかった。死神のタロットなんて発動されたものなら、きっと今頃ユウヤはあの世行き、そして次はタケトシ達のところへ向かっていただろう。
お嬢様キャラ。鼻につくことは多かった。だけど、いざ実際に「もう、いなくなった」と考えると……急にあの喋りを聞きたくなったのだ。だが、それももう叶わぬ望み。だから、せめてものメッセージを届けに行くことにした。
「……花、買わないとな」
ユウヤは家を出ると、まずは近くの花屋に向かった。検べたところ、どうやら献花には白い菊などが使われるようで、ユウヤは一輪、白菊を買って駅に向かう。
いつもの風が、どこか儚く感じる。これから暑くなっていう気候にも関わらず、冷たく、重く。そして、まだまだ空から降り注ぐ無数の雨粒。それが、悔いを残して倒れたメイの涙のように感じられた。
「……もしかしてオレがあの時、館を訪れなければこんなことに……」
何度も何度も、どうしようもない罪悪感がユウヤの心を蝕む。抑えても、抑えてもしぶとく襲いかかってくる。ああ、やめてくれ……
ようやく電車は館の最寄り駅に到着した。未だに天気は雨のまま、傘をさしてもパーカーはびしょ濡れだ。ヌタヌタとしたイヤな感じの感触を我慢しながら、そっとパーカーを被り、人目を避けつつ館に向かう。
「オレです、失礼します。返事は……無いか……」
ユウヤはドアをゆっくりと開く。ギイイと古びた扉が音を立てる。扉を開けた先はかなり散乱していた。あの謎の男とメイが戦った跡が生々しく残されており、さらに壁に大きな穴が空いているのだ。そして……
「……メイだ」
その場に倒れていたのは山浦メイ、本人だった。信じたくない、信じたくない信じたくない。だが、受け入れざるを得ない。だけど……ユウヤの脳も心も目も体も、それを拒むばかりだ。
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