2章_2 コウキ始動編

第68話 ダーク・インフルエンサー

「……なぁ、これ通信途絶えたくね!? アズハこの世から消えちまったんじゃね!?」


「うぅ……アズハさん……あの世から脱出できるまで何百年かかることでしょう……」


「それにしても、マジできついな……予想以上にユウヤは成長している」


「……早急に始末しないといけませんねぇ……悲しいですがぁ……」


「あぁ……そろそろお上から雷が落ちてしまうしな」


「やらかしたら私達までお陀仏しちゃうなんて……怖すぎですぅ……」


 チーム・ウェザーのアジトで2人が会議を行っていた。ヒビキの戦意喪失、そしてアズハの現世からの消滅にかなり焦っているのだ。1ヶ月も立たないうちに幹部が半分やられてしまっており、今にでもユウヤを始末しなければ自らの命すら危ないと心の奥底で恐れているのだ。


「そうするにしても……オレの部下も既に1人やられちまってんだよねぇ……ネンミはあれから行方不明、困ったもんだ」


「うぇえん……それならぁ、一気に部下を送り込んで畳み掛けてみてはいかがでしょうかぁ」


「えぇっ! サムとケンジをか!? 残り弾を一気には……それにサムは言うこと聞かねぇし」


「大体、こうなったのもヒビキさんが部下取りすぎたせいですよぉ……コードネームでフルコースを再現したかったそうですがぁ……知るかボケですぅ……うぅ……」


「相変わらず口悪いな、雨谷ナギサ……」


「もしくはぁ……例の、もっと販売してみるのはいかがでしょうかぁ……駒は簡単に集まるかと……」


「あぁ。それなら試作品がある。かなりヤベーやつだけどな」


 コウキは懐から虹色に光を反射するピアスを取り出した。その光は眩しいと同時に、どこか妖しい。思わずナギサもその光に意識を失いそうになる。


「うぅっ、それが……試作品ですねぇ……でもどうやってチェックを」


「そうだなぁ……んじゃあ試してみるかっ!」


 コウキは刑事ドラマのようにブラインドから外を覗き、少しだけ窓を開けてピアスを投げた。ピアスはものすごい勢いで空の彼方に消えていく。


「ひ、ひぇっ!? 捨てちゃって大丈夫なんですか!?」


「まぁまぁ、そのうち通信が始まるさ。よく耳をすましておけよ」


「は、はぁ……」


 コウキは今か今かと窓から映りもしない場所の景色を眺めている。そして、ハッとした仕草を見せると、ニヤリと笑いながら自分の耳につけたピアスを手で塞ぐ。


《……ザザザ……れ? 何か落ち……ぞ?》

《ザザ……構イケて……ピア……ザザ……じゃ……か?》

《……ちょっ……付けて……か?》

《おい、人のかも……い……ザザ……》


「男の人の……会話でしょうかぁ……」


「っぽいな。それに、どうやらようだ」


《オレ最近……新ら……いピアス探してた……だ……》

《……おい、どうし……? おーい、聞こえて……か〜?》

《……様》

《え? おい急にど……しグアアアア!》

《全てはあ……方……ために! チーム・ウェザ……ために!》

《おいたっくんやめろって! いきなりどうし……ぐああ!》


 通信機ピアスからは男同士がいきなり喧嘩を始めた音声が聞こえてくる。コウキはやったぜ、と笑顔でガッツポーズをする。


「成功。やったみてぇだ! あれで駒を1つ確保したなり〜」


「す、すごいです! これを街中にバラまくことができれば!」


「あぁ。早速オレが宣伝するといくか!」


「オレが、宣伝?」


 キョトンと首を傾げるナギサに、コウキはショックを受ける。


「えぇっ!? オレのこと知らねぇの!? ほら、このアカウントだよ、このアカ!」


「し、不沈陽しずまず……って……何ですか?」


「そ、その反応……マジで知らなかったんだね……」


「ひええ! ご、ごめんなさい……」


「まぁとにかく! オレがこのピアスを改良して、街中で売りさばいてやるよーん」


 そういうとコウキは、アジトの工作室へと消えていった。

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