第45話 疾風と迅雷の衝突
「はああああああああああ!」
「だああああああああああ!」
ユウヤとヒビキは同時に駆け出し、その距離を互いにどんどん詰めていく。そしてかなり接近したところで上体を捻りながらパンチを曲線状に繰り出す。両者とも、その攻撃は当たらない。それを確認すると互いにものすごい速さでパンチを、キックを繰り出す。
その腕を、脚を攻撃に、防御に目まぐるしくスイッチさせながら少しずつ相手の隙を伺う。ただ響き渡るのは体同士が衝突する音、そして2人の雄叫びだけだ。
「この前より腕を上げたようだなユウヤァ! 思っていたより、ずっとなぁ!」
「あれからずっと修行してきたんだ! そんなの当たり前だ……ろぉ!」
「ぐおっ!?」
ユウヤはそのパンチにキックの猛攻の中に、突然突風を手のひらから出す攻撃を混ぜてみた。流石のヒビキも不意をつかれたのか、体勢を崩しイナバウアーのような状態になってしまう。
「やったぞユウヤ! そのまま押し切れ!」
ユウヤはすかさずヒビキの後ろに回り込み、腰を捻って回し蹴りを喰らわせる。この攻撃にはヒビキも防御も反撃もできない。
「があああっ! クソ野郎がぁ……」
「うるせぇ! 各地の大学を襲撃しやがって、クソはお前だああああああ!」
もはやユウヤに慈悲はない。腕に風の力を込め、何度も何度も胸を、腹を、
今のところはユウヤが押している。だが、ユウヤ達の背後で動き始めた者がいた。
「ガハハ……がら空きだぜ、背中がよぉ……」
「少しお待ちを! ユウヤさん、ゴリラみたいなのがそっちに……!」
腕に力を込めながら立ち上がったのはヴィアンドだった。不気味な笑みを浮かべ、一歩一歩、ゆっくりとユウヤの方へと向かっていく。まだユウヤは気が付いていない。
「これが成長したオレの技だ! タイフーン、スト――」
「
「ぐあっ!?」
ヒビキは突然、不安定な体勢から閃光をその指から放ってきた。思わずユウヤは身を縮こませてそれを回避するが、ヒビキの攻撃は全く違う方向へと向かっていく。その閃光は地面を這うようにどんどん走る。
「まさか、こいつ……!」
「……へ?」
ドカアアアアアアン! 激しい爆発が誰かを襲った。慌ててユウヤは安全を確認する。やられたのはカエデか、メイか、イチカか? いや、それとも……
爆発の炎の中に、ドサッと音を立てて倒れる大きな影が見える。撃ち抜かれたのは……ヴィアンドだ。
ヴィアンドは先程のカナのように、ぐったりして動けなくなっている。ただできるのは、何かを呟くだけだ。
「ヒビ……なん……で……」
ヒビキはユウヤとの戦いから強引に離脱し、歩いてアントの方へ近寄る。そしてヴィアンドの目の前に立ち、鋭い目つきでヴィアンドを見下ろす。
「水を差すヤツは必要ない。朽ち果てろ」
「おい、やめ……」
ヒビキはアントの腹を踏みつけると、
「はあああああああああ!」
と叫んだ。すると上空が光り、ドゴオオオンという音と共に雷がヴィアンドを襲いかかった。思わずユウヤ達も言葉を失う。
「……感謝しろよ、反省のチャンスを貰えてな」
ヒビキがそう呟くと、何度も何度も執拗にヴィアンドを踏みつける。ヴィアンドも苦悶するばかりで、抵抗する体力は残っていなさそうだ。何という男なんだ、東雲ヒビキは。たまらずユウヤは助走をつけ、ヒビキに襲いかかる。
「てっめえええええええええええええ!」
「だから水を差すな、って……」
「ぐぁあああああああああああ!」
今度はユウヤに落雷が襲いかかった。その衝撃には、まるでこのまま押し潰されるほどの重さを感じる。ユウヤはそのまま倒れて悶絶している。
「ぐ、あああああ……」
「おいユウヤ! 大丈夫か!?」
「ユウヤさん……」
「ユウヤ! 1つ質問をしていいか?」
突然、ヒビキが問いかける。
「な、なんだ……質問って……」
「……見たところ、かなりの天才だ、お前は。この短期間でかなりの成長を見せたのだからな」
「それが何だよ……コツとか……教えねぇぞ……」
「違う。オレ達の仲間にならないか? と聞いているんだ」
突然、ユウヤをスカウトするヒビキ。意図は不明だが、ヒビキの表情からすると本気だ。予想外の言葉に一瞬脳がバグったが、ユウヤは大声でその質問を却下した。
「ふざけるな! 誰がお前らみたいな過激派勢力に入るも――」
「今なら一瞬でオレ達と同格だ。“突風”の枠としてな」
「わ、枠?」
「チーム・ウェザーの中には、それぞれ天気や気象現象を暗示した戦士がいる。例えばオレだったら空を駆け抜け大地を割らんとする雷。ちょうど今、突風の枠が空席なんだ」
「な、何が言いたいんだ……」
ユウヤは全く意味を理解できていない。確かに、ウェザーは英語で天気とか天候という意味だ。だが、席が空いているという言葉がひっかかる。だがそれは、大きな大きな因縁があってのものらしい。というのも……
「……死んだんだよ、元・突風の戦士、風谷ヨウマがな!」
「風谷、ヨウマ……?」
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