3-3 最強の自警団、カーニャ
突如として現れた3mほどの大きさのピンクドラゴン。手足は大きく羽は小さめ。所々に紫色の模様が散らばっていて、大きめの蛇腹が喉元から股下を通ってしっぽの先まで続いている。
「誰だ!? もしかして、この運送屋の護衛か!?」
「あ!? もう1匹いたのか!!」
彼女に気付いたブルーとレッドが真っ先に突撃を開始した。
彼女は、ブルーからの拳を右の手のひらで、レッドからの噛みつきを左腕で受け止めた。
「!?」
驚くブルーとレッドを見ながら、ブルーの頭を掴み、レッドの頭へと殴りつけた。
ゴスッ!!
「私はカーニャ、最強の自警団よ!!」
攻撃の後に、カーニャと名乗ったピンクドラゴンが自己紹介をした。
お互いの頭がぶつかり合ったブルーとレッドは、気を失って雲の下へと落ちていく。
「運送屋さん! 今のうちに行きなさい!!」
カーニャがチェインの方を向いて叫ぶ。
「いや、誰なんだお前は……」
チェインが呆れた様子で呟く。
「チェイン、こういう時は、こう言うんだよ」
そしてディークが、女の子の黄色い声援のような声でこんなことを言った。
「きゃー!! ドラゴンさんかっこいいーっ!! そんな奴らやっつけちゃってくださーい!!」
「……」
ダークとチェイン、呆れの表情を見せる。あーもうジト目。しかもチェインにいたってはジト目を通り越して睨みつけてる。
「……俺にそれを言えと?」
チェインは静かに、重い声で一言だけ発した。
「what were you doing to my friend, f**kin b***h!?」
※コンプラの都合上一部伏せ字にして差し上げました。
ドラゴングリーンが高確率で喧嘩に発展しそうな言葉を発しながら、カーニャへ羽を羽ばたかせる。
すると、空気が鋭い刃となってカーニャへと飛んでいき、カーニャにぶつかった。
しかし、カーニャの身体には傷一つ付かなかった。
「……what!?」
「切れ味悪いわねぇ、あなたのエアーカッター」
カーニャはそう言うと、先ほどの魔法と同じものをドラゴングリーンに飛ばした。
エアーカッターはグリーンの翼の付け根に当たり、そこから血が吹き出した。
「!!?!?」
グリーンは驚きで言葉をなくすと同時に浮力も失い、雲の下へと沈んでいった。
「グリーン!! よくもグリーンをぉ!!」
そう言って突っ込んできたのはピンク。自身の身体の周囲にピンク色の霧を纏いながらカーニャに突っ込む。
カーニャがそれを迎え打とうと腕を伸ばし、ピンクの拳を正面から受け止めた。
「ぐぉおらぁ!!」
するとピンクは受け止められた腕を曲げて、突進の勢いを残したままカーニャに頭突きを食らわせた。
もろに食らったカーニャだが微動だにせず、痛がる様子もなかった。
「ふふっ、良いわねぇ。私、あなたみたいな血気盛んな女の子大好きよ」
カーニャが微笑みながら言うと、ピンクは驚きの表情を見せた。
「あっ……、そんな、大好きだなんて……///」
ピンクが照れた様子で言ったそのとき、カーニャがピンクの鼻っ面を思い切りぶん殴った。
「ふぎゃ!?」
「はい隙だらけ」
カーニャは落ちていくピンクを見ながら言い捨てた。
「さて、あとはあなただけね」
カーニャは残ったイエローに顔を向けて言った。
「ま、待って! 分かった! 降参だよっ!」
「今更降参だなんて、虫が良すぎない?」
「何でもしますからーっ!」
「何でも? それじゃあ、三発くらい殴らせてちょーだい」
「ひぃー!」
イエローがしっぽを巻いて逃走を開始する。
比喩表現ではない。本当にしっぽを巻いている。
そんなイエローにカーニャが突進していく。
「……隙あり」
イエローが小さく呟くと、素早く振り返り、向かって来たカーニャを抱きしめた。
「!?」
「秘儀、アシッドブレス」
すると、イエローがカーニャの顔の前に息を吹きかけた。
ハアァァァァァァーー。
「終わりだね。ボクのアシッドブレスをくらって立っていられるやつはいな──」
イエローの言葉の途中、カーニャがイエローの丸々肥えた腹に向けてグーパンを放った。
腕のおよそ半分が埋まるほどの容赦ない腹パンをくらったイエローは、目が飛び出すほどの痛みに苦しみながら、雲の下へと沈んでいった。
そしてカーニャは無言で息を大きく吸って、いっぱい吸って、たくさん吸って、
「だあああああ!!! くっっっっっさいんだよクソがああああああ!!!」
大声で叫んだ。
「息も臭いし身体も臭いしなんならネチョネチョしてたし汗臭いしマジで臭いしお前マジで臭いんだよおおああ!! 絶対あれお風呂入ってないってマジで最悪だしああああああああああクソがああああああああああ!!!」
もう絶叫。カーニャはそこらを飛び回りながら絶叫していた。雲の上にいるというのに地上まで聞こえて聞こえてきそうな音圧だ。
「……」
チェインたちはそんなカーニャをただじっと見ていただけだった。ダークはうるささのあまり耳をふさいでいた。
「すぅーーー、はぁ……」
カーニャの絶叫は、大きな深呼吸を最後に収まった。15秒ほどの絶叫だった。
カーニャはチェインたちを見ると、ゆっくりと真っ直ぐ飛んできた。
「さて、大丈夫? あなたたちも、荷物も」
「うん、全部無傷だよ」
カーニャの問いかけにディークが答える。
「良かった。ここってあいつらみたいな空賊が多いからよく絡まれるのよ。私も前に空賊に荷物落とされて、探すのも謝りに行くのも大変だったからねー。良かったら半分くらい持つけど、どこまで行くの?」
「……」
チェインは訝しそうな目でカーニャを見ていた。
「ああ、ごめんね、お仕事の邪魔しちゃって。でも、またさっきみたいな空賊が来るかもしれないし、隣について行っても良い? ていうか、私こう見えても寂しがりでね。誰かといないと心細くなっちゃうのよ……。ね、ついて行って良い?」
カーニャはここまで言うと、手を合わせてチェインの返事を待った。
「良いんじゃない?」
ディークが答えた。
「……ダークは?」
「え? まぁ、良いと思うぜ」
チェインは少し考えたあと、
「わかった。ついてきな」
カーニャの同行を了承した。
「ふふっ、ありがと」
カーニャは微笑みながらチェインの隣やや下を飛び始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます