2-7 みんなで状況整理
「んの、あれ?」
しばらくすると、固まっていたディークが目覚めた。
「おっ、ディーク! やっと起きたか」
ダークが透明な壁越しに話しかける。
「あっ、ダーク!? ……とチェイン? ここどこ?」
ディークはダークの顔を見るなり慌てて立ち上がった。そして周囲を見渡すと、女王様と目が合った。
「……だれ?」
「ここはヒュモー城。妾はこの城の女王じゃ」
女王様がディークに説明する。
ディークは少しの間、何かを考えたあと、
「……もしかして、プヤイもここにいる?」
「な!? 何故王子の名を知っている!?」
女王様は驚いた様子で声を上げた。
「プヤイが教えてくれたんだよ。お城が退屈だから抜け出してきたんだってさ」
「退屈……。それはいいとして、お主、何故王子を攫った? 目的は何じゃ?」
女王様が真剣な眼差しで聞くと、
「さ、さらった? なんでそうなってるの?」
ディークが困惑した様子で答えた。
「俺はお前が王子を誘拐しているのを見たんだ。言い逃れはできないぞ」
横からリクガメが口を挟む。
「いやいや、ボクがチェインの帰りを待ってたらプヤイが陸からやってきたんだよ!」
「王子が自ら陸に? そんなことありえない! 正直に話せ!」
「そんなに信じられないならプヤイに聞いてみなよ。王子の言葉なら信じられるでしょ?」
「王子は今忙しい。簡単に会えると思うな」
ディークとリクガメがにらみ合う。
「もうよい、妾は王子と話してくる。直接聞いた方が早いじゃろう」
女王様は2匹のやり取りにうんざりした様子で、水中へと潜っていった。
「話がさらにややこしくなったな……」
チェインがため息交じりに呟いた。
「ボクもなんでこうなってるのか全然分からないよ。ていうかダーク、なんでそっちにいるの?」
「ここの王子とぶつかっちゃって、それで犯罪になって捕まった」
ダークが事情を簡潔に説明した。
「あー、交通事故ってやつ? ……あれ? でもプヤイってボクのとこに来てたよね?」
ディークが疑問をあらわにする。
「ディーク、王子……プヤイが来たのは、俺がダークを探しに行った後だろう?」
「うん、そうだね」
「俺が海に潜ったときには、もうダークは捕まっていたんだ」
「あーー、なるほど。ダークが海に飛び込んだときにプヤイと交通事故起こしたんだ。で、チェインが心配になって砂場を荒らしながら海に突っ込んだときには、もうダークはここに連れてこられたんだ」
「そういうことか。……ん? 『砂場を荒らしながら』?」
「やっぱり気付いてなかった? チェイン、海に突っ込んで行ったときに反動でクレーターできてたよ」
「カァー……」
チェインが沈痛な面持ちで嘆息した。
「父ちゃん、オイラのことになると力の制限効かないね」
「黙れ……」
チェインが目を伏せたまま悪態をつくなか、ダークは嬉しそうに笑っていた。
「……で、プヤイはダークとぶつかったあとに陸に上がって来てボクと会ったんだね」
「ていうかディーク。その王子と何やってたんだよ」
「ただお話ししてただけだよ。陸のことに興味があったから、ボクのこととか近くの国のこととか話してたよ」
「……おい待て。ここから近くの国といえばあそこじゃないか。よく教えたな……」
チェインが呆れながら聞いた。
「まぁ、下手に遠出しなくなるから良いんじゃないの? 王子が城を抜け出すの、今回が初めてじゃないらしいし」
「そうらしいな……」
ダークが呆れたように返すなか、リクガメは静かに頷き、
「全く、王子の脱走癖には毎回悩まされている……」
「なぁ、なんでそんなに脱走したがるのかも聞いてないのか?」
「うん、聞いてるよ」
ダークの質問にディークが答える。
「さっきも言ったけど、お城の中がつまんないんだって。お城の動物たちが外に出してくれないから勝手に出ていくしかないって」
「あーー、それは分かる気がする」
ダークが思わず苦笑いをした。
「つまらないとは……。王子には学業や責務があるというのに、それらを放って遊んでるなどと言語道断。女王様が知ったら何と仰っしゃられるか……」
リクガメが困ったように呟く。
「外にも学ぶこととかすることとかはありそうだけどね」
ディークがリクガメをフォローする。
その時、海中から女王様が帰ってきた。
「あっ、女王様! どうだった?」
明るい声で聞くディークを、女王様は睨みつけた。
「お前はやはり誘拐犯じゃった、この嘘つきが」
「えっ、ちょっと? なんでそうなるの?」
ディークは困惑した様子で女王様に聞く。
「別に、妾は王子から聞いたことを伝えただけじゃ。そいつを捕まえておけ」
「承知しましたっ!!」
ディークが動揺している中、リクガメたちがディークを取り囲み捕まえようとするが、
「……えっと、どうしましょうか?」
ディークはまだ炎に包まれていた。リクガメたちはディークに触れることが出来ずにいた。
すると突然水面が揺らぎ、大きな波がディークに押し寄せてきた。
「うわ!? 何っ!」
ディークは慌てて避けるが、今度は水面が上昇してくる。水に使ったディークの足は動かなくなり、そして胴体、頭へと水が被さっていく。
「ディーク!!」
ダークの叫びも虚しく、ディークの身体は固まってしまった。
やがて水は引き、元通りになった。
「こうすれば良いのじゃろ?」
女王様は表情を崩さずに言った。手に持った杖を上に掲げ、魔法で水を操作していた。
ダークが女王様に向かって叫ぶ。
「おいっ! なんてことするんだよ! あいつが出てきたらどうす──」
「ダーク!!」
チェインがダークを睨むと、ダークは申し訳なさそうに黙り込んだ。
「……罪のある者に情けはいらぬ。さぁ、今度こと連れて行け!」
「はっ!」
リクガメが固まったディークを担ぎ、水中へと運んでいく。
「うおおお………、重い……」
とても重たそうに運んでいく。
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