第22話 王女ルナの恋 ㉑



 その日、ジョナサンは知り合いの実業家、ダニエル・リーを訪ねて、「クラブ・パラダイス」に来ていた。

 ダニエルは急ぎの来客があったとして、なかなか姿を見せなかった。

 VIP会員で、クラブの常連であるアラブの王子が来ているという。

 その王子が、このクラブの看板ドール、プリンス・チャーミングに会わせろ、と、騒いでいるらしい。

 しかしプリンス・チャーミングは、王子を嫌っていて、会おうとしないのだった。

その騒ぎは、どのような結末に至ったのかは不明だが、しばらくして、ダニエルはジョナサンの待つテーブルへ姿を見せた。


「すみません。すっかり待たせてしまいましたね。

 うちの看板ドールがVIP会員を怒らせてしまったのです」

とダニエル・リーはジョナサンに言った。

「でも突然、予約も無しにやってきたのはVIP会員のほうなので、彼を責められません。彼は予約が取れないことで、有名なので、王子も苛立って強硬手段に出たのです」

 しかしそれ以上は、オーナーは何も話さなかった。


「それで、どのようなご用件なのでしょうか?」


 ジョナサンはソヨンのプロジェクトを支援するために、ここへ来ていた。

 ジョンジュンの警備から、ジョナサンが外れることは大きなリスクだったのだが、

早くルナを救出しなければ、妹ルナを心配するジョンジュンが自ら中国へ乗り込もうとするかもしれない。それはどうしても避けなければならないリスクだった。


 クラブのオーナー、ダニエル・リーは、武器商人と云う裏の顔も持っていた。

 中国へ新たに武器を持ち込むことは、ほとんど不可能だったので、ジョナサンは中国で武器を調達して、それを使うことにした。

 最新装備の実戦用へりと銃を、ダニエルが中国政府から買い付け、試運転の時に、ジョナサンがヘリで研究所まで行き、地上から侵入したソヨンたちがターゲット3人を連れだし、ヘリで救出する作戦だった。


 リスクが大きすぎる割には、ダニエルの取り分は少なく、最初、彼は乗り気ではなかった。しかし救助する人物のひとりが、行方不明だったパンチェン・ラマ11世と知ると、彼は考えを変えた。



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