第21話 王女ルナの恋 ⑳

 ルークは、彼の祖父が送ったボディーガード、ジェウクに見つかってしまったことに気づき、家に連れ戻される前に、レイアと逃げようとした。

 しかしソヨンは、それを察知し、裏の出口に先回りし、逃げようとしている二人をつかまえて、言った。


「やっぱりあなた達は、どうしようもない子供で、バカね」


 そう言われてルークは逆上し、ソヨンに飛びかかってきたのだが、ソヨンはいとも簡単にルークの攻撃をかわし投げ飛ばした。


「レイア姫さん、なぜあなたはこのトラブルメイカーを説得しなかったの?」


 レイアはソヨンの言葉に対して、何も言わなかった。

 レイアはソヨンが言外に言おうとしていることを、もちろん理解していた。


「このドアの向こうには、昨夜、あなたたちが恥をかかせた、あのアラブの王子様の部下たちがあなた達を待っているの。それなのに、のこのこ出て行くなんて、バカとしか言いようがない。あきれるわ」


 二人は似たようなことを、以前にも体験していた。

 そしてその時も、このように逃げたし、その時は、どうにか逃げ切ることができた。下手な成功体験は、ルークに変な幻想を抱かせ、「スターウォーズ」のスカイウォーカーのように、どんな苦境にあろうとも、道は開かれるのだと彼は信じていた。


「あのアラブの王子様は、人を殺すことなんて、何とも思っていないの。

 彼の悪口を書いただけで、殺されたジャーナリストだっている」

 レイアは人並み外れた聡明な子だったので、もちろん、逃げおおせないことは理解していた。

 ただレイアは、少しでも長くルークと一緒にいたかった。

 連れ戻されても、アラブの王子の部下に拉致されても、どのみち二人は引き離される。そしてふたりは、もう二度と会えなくなる。だったらその時までは、ルークと一緒にいたい・・・。

 レイアの気持ちはそうだった。


「もし本当に、恋人と離れたくないのなら、ここから出ないことだわ」

と、ソヨンは二人に言った。

「私達のプロジェクトは、確かに危険なプロジェクトだけど、あなた達を引き離したりはしない。それは約束するわ」


 ソヨンに投げ飛ばされ、ふてくされているルークに、ソヨンは優しく言った。

「ルーク、あなたが協力してくれるなら、あなたを護衛しているジェウクをこのプロジェクトに引き込むことが出来る。彼はニーナと違い、百戦錬磨のプロフェショナルなの。彼がいれば、不可能なことも、可能にできる」

 レイアはソヨンの言葉に 興味を持ったようだった。


「今度のプロジェクトは、特別なプロジェクトなの。

 成功させることが出来れば、ルーク、あなたのお祖父さまも、きっとあなた達を誇りに思うし、認めると思う。

 ふたりを無理矢理、引き離そうとはしなくなるはずだわ」


















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