第19話 王女ルナの恋 ⑱



「まさか、こんなところであなたに会えるとは思わなかったわ、ジェウク」

とソヨンは言った。


「それは私のセリフだ。

 こんなところで、君に会うとは思わなかったよ」

 ソヨンがジェウクと呼んだ男は、ソヨンに笑いながらそう答えた。


「あなたは、元大統領の警護を今もしていると聞いていたわ」

と、ソヨンは男に言った。

 しかしその問いに対して、男は何も答えなかった。


「あの子、元大統領の孫なんでしょう?

 だから大統領から頼まれ、無鉄砲なあの子を、秘密裏に警護していたんしょう?」


その問いに対しても、男は何も答えなかった。


「君が秘密情報機関にリクルートされたことは、知っている。

 今でも籍をおいているんだろう?」

と、逆にソヨンに聞いてきた。


「今は訳あって、休職中。 個人的なことで動いている。

 このクラブの経営者、ニーナとは学生時代からの腐れ縁なの。

 そして今、一緒にプロジェクトを進めている。

 あなたが警護しているあの大統領の孫も、高額報酬に目がくらみ、

傭兵として、そのゲームに参加することになっている」


「それは困る。彼をそのプロジェクトをから、外してくれ」

とジェウクはいつもの冷静な口調で言った。

「君だったらわかるだろう? あの子は自分の実力を過信して、いきがっているけれど、しょせん子供だ。どんなプロジェクトか知らないが、プロジェクトの足でまといにしかならないはずだ」


「そうね、そうだと思うわ。でもニーナは自分の命を護る、盾ぐらいにはなれると思っている。そして家出少年だから、死んでも誰も気にかけないし、問題になることもないと、思っている」


 そのことばに男は、初めて反応した。


「ソヨン、君ならあの子を外すことも可能なんだろう?

 だったら、あの子を外してくれ!

 あの子が死んだら、大変なことになる。


 あの子が死んだら、あの方は黙っていないだろう。

 君の命だって、危ないと思ったほうが良い。

 何かの機会に、この埋め合わせは必ずするから・・・」

と男はやや懇願するような口調でソヨンに言った。







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