第15話 王女ルナの恋 ⑭



 眠っている青年の側らで、リールイは静かに、その時を待っていた。

 そろそろ深い眠りから、青年が目覚めるころだった。

 ひと月に一度の聖なる時が、もうすぐ青年に訪れ、青年は本来の姿、ニマの記憶を取り戻すのだった。


 この鉄条網に囲まれた、厳重な警備の研究所で秘かに行われていた研究は、人間の記憶に関する研究で、青年はその特殊な能力を幼きときに認められたがゆえに、国家の脅威とみなされ、ここへ閉じ込められた。

 ここで行われてきた実験は、青年の記憶を消し、別の記憶を青年にうえつけ、国家が支配する人間に、青年を変えることだった。

 しかし実験に携わった医師たちは、青年の中に宿る“聖なる者”にいつしか魅せられ、実験を途中で止めて、青年の中に眠るニマと秘かに会うことを選ぶのだった。

 上に気づかれないように、医師たちは実験は続けながら、一月に一日だけ、ニマが目覚めるように記憶の埋め込み治療をした。

 リーレイも例外ではなかった。

 前任者たちと同じことを、やはり繰り返した。





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