異道具屋物語【部屋編】
『前置き』
この話は異道具屋に迷い込んだ自分、
第壱章『留守番』
迷ってから一夜開け、なんだかんだ有って仮職員となった。不思議過ぎるこの店で分かっている事と言えば...
・老人なのか若者なのかわからない主人。
・鬼の末裔の脚山さん。
・猫にも人間にもなれる家族。(なぜかは知らないがとても可愛い)
・ただただ美味しいご飯...
これくらいである。
まだ奥の方には行ってない。と言うより行けないのだ。行っては行けないような雰囲気を醸し出している。
零香「これから私はこの店を留守にします。キャッツと一緒に留守番宜しくお願いしますね。」
幸 「あの零香さん...キャッツとは?」
零香「私の家族の総称です。」
幸 「でも名前は...」
零香「聞けば答えてくれますので、大丈夫ですよ。」
やはり素っ気ない。脚山さんが言う通りだ。どうにも気持ちが読み取れない。と言うより感情が無いとまで言えそうな程だ。店を任せて貰えるのは嬉しいが心底心配である。
第弐章『シロの部屋』
なんだかんだ考えていても仕方ない。自分が出来る事と言えば掃除位だろうか。まずは自分の部屋を掃除した。思ったよりもホコリが無くて助かった。ついでに家族の部屋も掃除しようか...
幸 「えっと...此処は【シロの部屋】か。何か躊躇いがあるな...昨日の事もあるし...失礼します...」
シロ「んにゃ...んにゃ...」
幸 「寝てる...布団が落ちそうだ。かけてあげよう。」
布団を直そうと少しめくって見たら...裸であった。初めて見る本物の裸体。一瞬にして脳の思考回路がショートした。
シロ「んにゃ...ご主人...?」
幸 「違いますよ...」
シロ「一緒に寝るにゃ~」
幸 「うわっ!?」
何とも言えない柔らかな匂い。包み込まれるような大きな胸。しかし、やはり悪いことをしている。早く抜け出さなければ。その感情で頭がいっぱいだった。
幸 「何とか...抜け出せた。」
シロ「んにゃぁ...って幸!?何でシロの部屋に居るにゃ!?」
幸 「これはその...掃除を...」
シロ「そうかにゃ...もしかして、シロの体見たにゃ?」
幸 「いえ、見てませんよ...」
シロ「じゃあ何で鼻血が出ているにゃ?」
幸 「あ、これは...」
シロ「やっぱり見たにゃ。」
幸 「はい。見ました。」
シロ「まぁ、良いにゃ。見られて減るものでもにゃいし。」
シロは優しい人だ。不本意だと言うことを分かってくれたようだ。僕はさっと掃除を済ませて部屋を後にした。ただ...故意にやったらどうなるのかは考えたくもなかった。
第参章『クロの部屋』
次はクロの部屋だ。家族の一人であることに間違いは無いのだが、見たことがない。シロの黒いバージョンなのか、身長も同じなのか、性格も似ているのかさえわからない。
幸 「行かない事には始まらないか。」
クロ「ん?何の用?」
幸 「掃除をしに来ました。」
クロ「汚く無いししなくても良いよ。」
幸 「でも...」
何を言ってもやんわりと断られる。人に部屋を弄られるのが嫌なのはわかる。でもやっぱり掃除だけでもして役に立ちたいのだ。
クロ「だから良いって。」
幸 「そうですか...でも、綺麗にしたら零香さんに褒められるかもしれませんよ?」
クロ「...っ!ご主人に褒められる...」
幸 「どうします?」
クロ「わかった。わかったよ...」
やっと部屋に入れた。シロよりはしっかり整理整頓されている。クロは奥の方、自分は手前の方をやった。手前の方があらかた終わったのでクロを手伝いに行こうとしたら、
幸 「クロさん、終わりましたよ。」
クロ「ありがと。足場気をつけて。」
幸 「え?うわっ!」
掃除用具のせいで足元が見えず、転んでクローゼットに当たってしまった。その勢いでクローゼットが開き、色とりどりのゴシック・アンド・ロリータの色とりどりの服が目に飛び込んできた。
幸 「え、これって...」
クロ「あ...あああ...」
クロの顔が真っ赤になっていく。よほど見られたく無かったようだ。何も言わずにそそくさと掃除用具を片付け、そっと部屋を出た。
幸 「この事は誰にも言うまい。」
心の中でそっと誓った。
第肆章【トラの部屋】
クロの部屋の向かい側、トラの部屋である。この店は本当に部屋の数が多い。どうやって建てられたのか検討もつかない。
幸 「こんにちは。」
トラ「ど、どうしたの?」
幸 「掃除をしようと思いまして。」
トラ「良いの...?汚いよ?」
幸 「居候させてもらって居るんですし、それくらいはさせて下さい。」
トラ「じゃあ、お願い...」
何か距離を感じる。恥ずかしがり屋なのか人見知りなのかわからない。ただ、お互い顔もわからないのだし仕方ない事ではあるが、どこか寂しさがある。
部屋の中は...どう言ったら良いのか言葉に困るが...零香さんの写真が沢山貼って有った。許可を取って撮影したものから明らかに盗撮とわかる物まで写真にあまり詳しくない自分でもわかった。少し恐怖を感じる程だった。
幸 「この写真集は一体...」
トラ「...これ?これはね、ご主人が私にカメラをくれたときの写真。嬉しかったなぁ...」
幸 「大切な物なんですね。」
トラ「それから撮り続けて居たらこんなになっちゃった。」
幸 「掃除用具とかで破く訳にも行きませんし、片付けるの手伝いますよ。」トラ「え...良いの?ありがとう...」
手際良く写真を片付けて行く。少し経った時、トラの手が止まった。見てみるととても古い絵とも写真とも取れる物が有った。
幸 「これって...」
トラ「ご主人...?なのかな?」
幸 「それにしても古い写真ですね。後ろに有るのは...村?」
トラ「ご主人が持って居るのは...生首...?」
幸 「何故こんな物を?」
トラ「わからないよ。ご主人が帰って来たら聞いてみる?」
幸 「...これについては触れてはいけない気がします。」
トラ「じゃあ止めて置こうか。」
幸 「そうしましょう。」
その写真を奥にしまい、部屋の掃除を済ませて部屋を出た。
あれはなんだったのか...過去なのか...考えたくも無い。
第伍章【ミケの部屋】
トラの部屋の隣にミケの部屋がある。それにしてもこの店は廊下も長い。奥がうっすら見えるだけで距離感が掴めない。
(グラ...グラグラッ...)
突然目の前が揺れた。
幸 「目眩か?いや、これは地震だ。」
はっきりわかった。さっきから少しユラユラしていたからだ。地震が有ると言う事は此処は日本なのかもしれない。どこかはっきりわかったと言う訳では無いが。
ミケ「揺れたわね~大丈夫?」
幸 「大丈夫です。っぷ...」
目の前が暗くなった。何か柔らかい物に挟まれている。この感覚...何か覚えが有るような...
ミケ「あらあら、本当に大丈夫?ふらついて居るみたいだけど。」
幸 「本当に大丈夫です。うわっ!」
両手と頭がミケの胸に有るのを今気づいた。すぐに手を離し、オロオロしていると、
ミケ「ふらついた拍子に触るとは積極的ねぇ...」
優しくも少し鋭い視線が自分を見ていた。
幸 「ごめんなさい!」
ミケ「良いのよ~触っても気にしないわ。でも、本番は駄目よ?君にはまだ早いから。」
ミケの視線は先には自分の下半身が有った。
幸 「あ...」
ミケ「仕方ないわよ。生物的本能ですもの。」
幸 「お見苦しい物を...」
ミケ「もっと見たい?」
一瞬頭の中が真っ白になった。次に気が付いた時にはミケの部屋のベッドの上に居た。右を向いたらミケが服を脱いで居た。
幸 「な、何を...」
ミケ「君が見たいって言ったから要望に答えているだけよ。」
幸 「でも駄目ですよ...」
ミケ「そっぽ向かないの。私の身体、もっと見ても良いのよ。」
頭の中がグルグルした。シロよりも大きい胸。スラッと美しい脚線美。その中でも何とか理性を保てたのは奇跡と言っても過言ではない。
幸 「やっぱり自分には早い様です!」
そのままミケの部屋を後にした。結局掃除は出来なかったものの、何か大切な物を守れたような気がした。
第陸章【カカオの部屋】
カカオは職員の中で唯一アイドルも兼業している。それのストレスもあるのか前より多少気性が荒くなってしまったらしい。
幸 「根は優しい人だとは聞いたけどやっぱり怖さが有るな...」
あれこれ考えているうちに後ろの気配にも気が付かなかった。
カカ「私の部屋の前で何してるのかな?」
幸 「うわっ!びっくりした。」
カカ「いや、驚いたのはこっち。掃除用具持って何してたのか気になるなー。」
幸 「掃除をしようと。」
カカ「有難いなぁ...ちょうどやろうとしてたんだ。手伝ってよ。」
幸 「喜んで。」
部屋に入ると大きな箱を3つ程持ってきた。中にはファンレターらしき物が沢山詰まっている。どれもこれもまだ未開封のようだ。
カカ「まずはこれの仕分けをして欲しいんだよね。」
幸 「でもどうやって?」
カカ「開けて読んでみて、何か気持ち悪い...と思ったら右に。ただのファンレターだったら左に。。頼める?」
幸 「わかりましたけど...多いですね...」
カカ「そ。有っても邪魔なだけ。」
幸 「でもそれだけ愛されてるって事ですよね。」
カカ「そうともとれるね...」
その後黙々と仕分けをしていき、30分経った頃にはほとんどが片付いた。カカオからお礼を言われ、部屋を出た後に掃除をしていない事に気付いた。
幸 「あ、忘れてた...」
第漆章【ユレイの部屋】
ユレイの部屋。何故かここだけ異様に暑い。暖房でもつけているのか。ここら辺は暖かかった気がするが。
ユレ「何の用?」
幸 「掃除をしようと。」
ユレ「入って。」
部屋の中は一段と暑い。熱中症になりそうな程に。暖房を数えると5個以上も有った。
幸 「こんなに暖房をつけて暑く無いんですか?」
ユレ「私、体から冷気が出るから凍らないように。」
幸 「そうだったんですね。」
ユレ「辛かったら言って。」
ユレイの部屋に物は殆ど無く、ベッドと机が有る位だった。
幸 「趣味とか有ります?」
ユレ「趣味...無い。」
幸 「好きな事は?」
ユレ「ご主人に撫でられる事。」
幸 「零香さんの事好きなんですね。」
ユレ「そう。あの人だけは避けない。」
昔何か有ったのだろうけれども無駄な詮索は良くない。その事についてはあまり触れない事にした。
ユレ「幸も避けなかった...不思議...」
第捌章【マイシーの部屋】
マイシーの部屋に来た。やけに静かで誰も居ないようだ。その時、
(グラ...グラグラッ...)
幸 「また地震だ...この短時間で二回とは何か有ったのかな?」
扉を開いても反応無し。本当に誰も居ないようだ。鬼の居ぬ間に洗濯とはこの事かもしれない。
幸 「今のうちに掃除をしておこう。」
(ポチッ)
幸 「ん?」
(パカッ)
幸 「うわぁぁぁぁ...」
腰ら辺に強い衝撃が有った。薄暗いが多少は見える。どうやら研究所のような所らしい。まずは灯りを付けなければ...
マイ「おや、誰かと思えば幸少年じゃないか。どうしてラボに?」
幸 「なんか...ボタンに当たったらここに。」
マイ「私の部屋に入ったね?まぁ、本が沢山有るだけなんだけどね。で、何故部屋に?」
幸 「掃除をしに来ました。」
マイ「あまり触れない方が良いものもここには有るけど、見てく?」
マイシーに誘われて自分はラボの中を見て回った。道具の元になる物や、肉塊のようなものまで有った。来た場所に戻って来たら、
(ビーッビーッ)
幸 「何の音ですか!?」
マイ「これは...脱走を知らせる警報音...ここのラボにいる何かが脱走したらしい。」
幸 「大変じゃないですか!」
マイ「君はすぐに上に避難して。」
幸 「貴方はどうするんですか?」
マイ「私はラボを区画閉鎖する。何か有った時のためにトランシーバーを渡しておく。」
自分はトランシーバーを片手に一目散に非常階段をかけ登って行った。
第玖章【怪奇】
非常階段を登った所でシロと有った。
シロ「そんなに息を切らしてどうしたにゃ?」
幸 「そ...それ...は...」
マイ「あー、あー、シロかい?ラボで脱走有り。他のキャッツ達に報告頼むよ。」
シロ「にゃんですと!!!すぐ報告するにゃ!」
シロは他のキャッツ達の部屋にすっ飛んで行った。それはそれは目に追えない程の、人の10倍は有るかと思える位の速さで。
マイ「無事だったみたいだね。」
幸 「貴方も無事でしたか。」
マイ「一応ね。区画閉鎖は出来たよ。」
(グシャッ...ニチャッ...)
何やらスライムのような泥のような物を上から落とすかのような重い音が遠くから聞こえる。足音の様にも聞こえるが、不規則で何かが這ってくる様にも聞こえる。
幸 「何か変な音しません?」
マイ「そうかい?今は何も聞こえないが?」
(ビシャッ...ズシャッ...)
もう一度よく聞いて見ると音はすぐ近く、上の方で聞こえて居るようだった。よく分からない物が上に居る。それだけでも考えただけで鳥肌が止まらない。
幸 「やっぱり変な音しますって!」
マイ「んな訳...何だこの液体?」
幸 「何か有ったんですか!?」
??「...イ...タ...」
マイ「変な液体が上から...え...?」
(プツンッ)
幸 「マイシーさん!?応答して下さい!マイシーさん!」
その後、マイシーとの連絡がぱったりと途絶えた。
第拾章【襲来】
マイシーとの連絡が途絶えてから数分後、シロがキャッツ達を連れてきた。状況を尋ねられたが気が動転して上手く説明出来なかった。
クロ「マイシーはまだラボにいるの?だとしたら早く助けなくちゃ。」
トラ「...でも、得体の知れない何かが居るんでしょ?」
ミケ「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。」
カカ「またマイシーの事だから変な物でも作ったんでしょ。」
ユレ「でも、マイシーが心配。」
話し合いの結果、まずはラボに居るマイシーの救出。その後、得体の知れない何かの捕獲と処分をする事になった。
まずは自分とシロ、トラがマイシーの救出に行くことになった。灯りが有ると気付かれ安くなる可能性から灯りは無しで救出する事に。
シロ「えっと...非常階段の左位にシャッターのスイッチが有ったはずにゃ。」
トラ「...本当に行くの?」
シロ「行くにゃ!マイシーを見殺しにするにゃんて猫が廃るってものにゃ!」
そのまま非常階段を恐る恐る降りて行ったその先には...粘液のような物にまみれ、息を荒げたマイシーが横たわって居た...
幸 「だ、大丈夫ですか!?」
マイ「....と...て」
幸 「え?」
マイ「もっと...やって...」
シロ「マイシー?大丈夫にゃ?」
マイ「ハッ!今まで何を...」
トラ「無事で良かったよ~」
マイ「頭がフラフラするけど、外傷は無いようだ。心配には及ばないよ。」
マイシーを椅子に座らせ話を聞くに、何か触手のような物が高速で降りてきた。その後、全身を絡め取られ、脳を弄られそうになったそうだ。
第拾壱章【触手】
>その頃、地上では<
??「...ヤッㇳ‥デラレタ‥‥‥‥ハラ…ヘッタ‥」
ミケ「怖いわねぇ...得体の知れない者が居るなんて...」
??「...イタ...」
ミケ「ん?だれ?」
??「...イタダキマス...」
(ヌチャッ)
非常階段を登り、廊下に出てきたら、マイシーと同じ状況のミケを発見した。ただ違う点は服が引き裂かれて居ると言うことだ...
ミケもマイシーとほぼ同じ事を報告した。すぐに服を引き裂かれたそうだ。何を考えているのか分からない。
この得体の知れない者を触手と呼ぶ事にした。
幸 「ミケさん、触手は何処へ行きました?」
ミケ「意識が朦朧としていたから覚えてないわ...ごめんね。」
幸 「いえ、大丈夫ですよ。」
ミケ「でも、ご主人の部屋に入ろうとして痺れて居たのは覚えて居るわ。」シロ「今なら近くに居るかも知れないにゃ!手分けして探すにゃ~!」
とは言ったものの、手掛かりが1つも無い。粘液でも残ってくれれば探すのも楽なのだが、生命体に触れていないとすぐ蒸発するようだ。
(グシャッ)
トラ「ん?これ...なに...?」
触手「....ウマソウ...ウマソウ...」
幸 「トラさん!上!」
トラ「...え?」
触手「...イタダキマス....」
触手に捕まったトラは真っ先に口を塞がれ、服を引き裂かれた。半分涙目になりながら必死に抵抗を試みるも無駄に終わったようだ。少し経ったらトラは痙攣し始めた。脳を弄られて居るのかは定かでは無いが危険なのはわかる。
いつの間にか自分は走り、他の人を呼びに行って居た。
幸 「皆さん!大変です!トラさんが触手に!」
クロ「本当!?」
カカ「マジで!?大変じゃん!」
ユレ「今行く...」
クロとユレイ、カカオが到着した時にはもうそこに触手は居なかった...
クロ「遅かったようね...」
ユレ「無念...」
クロ「まずはトラを助けよう。」
幸 「分かりました。」
ユレ「介抱...救助...」
カカ「結構重いね...」
第拾弐章【行方】
>その頃、零香<
零香「困りましたねぇ...たこ焼きを作ろうとしたのですが肝心の蛸が売り切れとは...烏賊が有ったので買いましたが...」
触手「...オマエ...ウマソウ...」
零香「なんですか?ん?蛸?」
触手「....イタダキマス....」
(ガシッ)
触手「....!?」
零香「いきなり何するんですか。服が汚れてしまうでしょうに。」
触手「....!...!」
(ジタバタ)
零香「粋が良いですね。これを捌きますか。」
触手「...!?....!!!」
(ザクッ)
異道具屋では、全く見つからない触手に全員が意気消沈していた。全員の部屋を探し、倉庫、二階、ラボさえも見たが居なかった。
シロ「何処へ行ったにゃ~?」
トラ「もう無理...疲れたよー」
ミケ「ここまで居ないなんて...」
クロ「外にでも行ったのかな?」
マイ「そうなったら大惨事になりかねないぞ?」
カカ「でももう動けないよ...」
ユレ「活動...限界...」
幸 「自分も...厳しいです...」
皆が気力を無くし、床にへたりこんで居ると、抑揚の無い聞き覚えの有る声が 聞こえた。
零香「戻りましたよ。」
シロ「ご主人にゃ~!」
さっきとは打って変わってキャッツ達は零香の方へ走って行った。
零香「お留守番お疲れ様でした。何か変わった事は無かったですか?」
幸 「実は...」
零香「ふむ、触手らしき者が外に逃げたかも知れないと...」
幸 「すみません...」
零香「良くある事です。気にはしてませんよ。所で、お腹空いてませんか?」
幸 「空きました。」
零香「丁度粋の良い蛸が手に入ったんです。たこ焼き作りますね。」
たこ焼きを作る零香さんの後ろ姿に見入りながら触手の行方を考えていた。移動速度は結構早いが、音を経てながら移動していく。ただ、張り付かれたら厄介だ。そんなことを考えていたら、たこ焼きが完成していた。...相変わらず美味しい...
幸 「この蛸なんか珍しい味がしますね。」
シロ「珍しい蛸でも手に入れたにゃ?」
零香「実は...これを使っているんです。」
そこには足をほぼ失くしたあの触手が居た。
触手「........」
クロ「ご主人、そいつって...」
零香「ああ、暴れるものですから足を切り落としておきました。たこ焼きの中身はこいつの足ですが。」
トラ「それ!探していた触手!」
零香「そうだったんですね。でも美味しいので良しとします。」
キャッツ達全員でも太刀打ち出来なかった触手をいとも簡単に捕獲し、更には捌いてたこ焼きにしてしまう零香さん...得体の知れない者はこの人の事を指すのかも知れない。
食器を片付けて部屋に戻った。その日は疲れきって居たせいなのかよく眠れた。翌朝、触手は特別な培養液に浸けられていた。またたこ焼きに使うのだそうだ。その時の顔は余り見てはいけないものだった...
全身の肉を削がれて居るかのような恐怖を感じた。
異道具屋物語第二弾いかがでしたか?
まだまだ物語はありますが、今回はここまで。
では、また次の作品で会いましょう。
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