専属連絡係

[日々 和也視点]


「か、彼を専属連絡係にですか?!」


神崎自衛官が悲鳴のような声を上げた。専属連絡係とは、神様に人間から声を伝える事を許可される唯一の役職の事である。神を怒らせる事なく人間を意向を伝えなければいけないので、かなり難易度が高いとされている。陽炎王国では通常自衛官が就く。


というか神崎自衛官は自分が専属連絡係になりたかったのでは・・・。


「水神様、どうか、どうかお考え直しを!彼は自衛官ではないのです!専属連絡係を一般人に任せるのは非効率ですし、その者の負担も増えます!下手すると誘拐などの犯罪にも巻き込まれる可能性があるのです!自衛官以外に任せるのは危険です!」


神崎自衛官が必死に説得している。俺は正直驚きが強すぎてあまり頭が回ってない。誰が予想できるんだよこれ。


「ほら、君からも何か言ってくれ!負担が増え普通の日常を送れなくなる上に犯罪に巻き込まれる可能性もあるんだ。普通の日常を送れなくなるのは嫌だろう?」


・・・


「そもそも専属連絡係って具体的には何をするんですか?」


国と神様の中間で言葉を伝えるだけ?


「専属連絡係はその名の通り国と神様の間でのやり取りを行う中継人になるだけでなく、神様の世話やご機嫌取りも役割の一つだ。また国に対して神様の様子を報告する義務も発生する。」


なるほど、面倒臭そう。俺が断ろうと口を開くと、


「わたしを言い訳にどんなゲームも出来るわよ。」


アクアが口を挟んできた。


・・・マジ?


「神崎自衛官?」


「・・・水神様の言う通り、神様欲するものは国が融通する。物で困る事は無いだろう。」


そっか。なるほど。


「専属連絡係やります。」


「正気か?!危険だと言っただろう?」


「ただし補佐を自衛官から一人つけてください。それぐらいはいいだろアクア?」


「ええ、構わないわ。」


「ま、待て。話を進めないでくれ。本当に危険が伴うのだ。考え直した方がいい。ゲームなど君が働けば問題なく買えるだろう。ゲームをするために命をかけるなんて馬鹿げている。」


うん、言いたい事は分かる。でも、


「私が危険に晒される事はほぼ無いのではないですか?」


「どうしてそう思うんだ。」


「通常専属連絡係には自衛官が着きます。それは国にとって重要な情報を持つ人は狙われやすいからで「ねぇ、話が長いわ。」」


あ、はい。


「わたしからしたら和也が専属連絡係をするという結果さえあればいいのよ。和也に何かするようならわたしが相手するから。もういいかしら神崎自衛官?」


「うっ・・・はい。」


もう神崎自衛官が泣きそうだ。いや、顔はずっと怖いままなんだけどね。


「じゃあ今日は一旦解散しましょう。」


アクアがこの場を閉めた。









俺は今ゲーセンの前で携帯に映る時間を見ている。


完全に遅刻である。やっちまった。


「ま、まぁ今回の事は仕方ないし?事情を話せば・・・いや、はっとり先生は容赦しなさそうだな。俺の事嫌ってるみたいだし。」


俺は気持ちが落ち込んでため息をついた。


「何か宿題とか出たりしてないかな?知り合いは・・・いたらいいんだけど。」


俺は重くなった気持ちを何とか引きずって大学に帰ろうとした。しかし体が動かない。誰かに引っ張られてるかのように。あれ、本当に引っ張られてる?


俺が振り向くと服を掴んだアクアがいた。


「どこへ行くのよ。専属連絡係になったんだからわたしの世話もあるって知ってるわよね?」


「え?おまえって神崎自衛官とスイートホテルまで行ったんじゃなかった?」


「あれと離れるにはそうするしかなかったからね。今はそっちの対応を分身に任せてるわ。」


神崎自衛官、分身に対して説得頑張ってるんだろうなぁ。


「はぁ。でも俺大学に戻りたいんだけど。」


「わたしを置いて行ったら専属連絡係として責任を問われるわよ。下手すれば重い刑罰を与えられるかもね。」


やべぇちょっと後悔してきた。


「で、アクアは何をお望みで?」


「あれの心を見たけどスイートホテルはあなたの家からはかなり遠いわ。あなたの家の近くでわたしの住むところを見つけてちょうだい。」


えぇ〜。何かあったかな?


「ネカフェ・・・。」


「本気で言ってる?」


「結構快適なんだけどなぁ。」


「さすがに店の迷惑になる事はやらないわよ。」


「いきなり神様が行くのはまずいか。」


「・・・そうよ。」


じゃあどうすっかなぁ・・・。


「俺の「は?」いや何でもないです。」


やべぇ。全然思いつかない。


・・・・・・あっ。


「なぁアクア。他の神とは仲悪い?」


「え?そんな事ないけど・・・なるほどね。」


よし、じゃあそうしよう。






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