制限時間付きのゲーム

[日々 和也視点]


「で、何のゲームをするの?和也はお金がもう無いと言ってなかったかしら?」


それはそう


俺は水神様を見た。声には出さない。他の客にバレるとやばいから。頼む心を読んでくれ。


「え・・・。それほんとにするの?せっかく隠してここまで来たのに?」


「それしか方法が無くてな。制限時間付きだけどこのゲーセンで1番のゲームを楽しむ事ができる。どう?やるか?」


俺は挑発的な顔で水神様を見た。水神様は面白そうな顔をして、


「いいわ。やってやろうじゃない。それと、わたしの名前はアクアよ。」


「よろしくアクア。じゃあ頼むわ。」


俺は店内の一番奥にいるガタイの良いおっちゃん店員に話しかけた。


「すいません、VIPルーム使いたいんですが。」


ガタイの良い店員がこちらを見た。


「VIP会員証を見せろ。」


「それは無いです。」


「話にならん。失せなガキ。」


店員が睨みつけてきた。だがこっちには奥の手がある。


俺は水神様を手で示した。


「このお方をどなたと心得る。あの有名な水神様だぞ。神様がVIPルームを使いたいとおっしゃるのだ。通してくれるね?」


秘技、虎の威を借る狐!水神様には体の一部を水に変えてもらい水神であるアピールをしてもらった。


「は?え?み、水神様⁈しょ、少々お待ち下さい!」


ガタイの良い店員さんがスタッフルームに入って行った。多分店長呼んでるな。



少しするとガタイの良い店員さんと一緒に少しお腹の出た人の良さそうな方がやって来た。おそらく店長だ。


「水神様、この様な場所にようこそいらっしゃいました。VIPルームを使用されたいとの事ですが、もしかして噂をお聞きに?」


水神様、頷いといて。


「あ、あぁ。この者に聞いたのだ。楽しめると良いのだが。」


「それはそれは。楽しめると思います。なんせこの店には最新型の物を取り寄せていますので。」


「では入って良いのだな?」


「勿論です。こちらへどうぞ。」


そうして店長は俺たちをスタッフルームに入れ、その中のエレベーターに案内した。一般の人が行けない地下4階、そこに例のものがあるようだ。


「こちらでございます。」


店長に案内された場所。そこには高級そうなソファーとヘルメット型の機械と繋がった大きなコンピュータがセットで幾つか置いてあった。


「では説明させていただきます。このゲームはフルダイブ型のものでございます。


このソファーにゆったりもたれ掛かりながらこのヘルメット型の装置をお被り下さい。そうして『ゲームスタート』と唱えればゲームが始まります。


ゲームを終わりたければゲーム内で『ゲームエンド』と唱えて下さい。そうすれば元の世界に戻れますので。


他何かございましたらこちらの電話をお使い下さい。私に直接繋がりますので。ではごゆっくりとお楽しみください。」


そうして店長達は上の階に戻って行った。


「これがこのゲームセンター1番のゲームなのね。」


水神様が聞いてきた。俺は興奮がまだ収まっていない。


「ああ、直に見るのは初めてだ。でもこれはこの前ニュースになっていた最新型のゲーム機で間違いないよ。さぁ、さぁ早くやろう!」


こんなとこで時間かけるべきじゃ無い!


俺はヘルメット型の装置を被り、ソファにもたれ掛かった。水神様も俺に倣っていた。


「「ゲームスタート!」」


これは流石に正解のゲーム引いただろ!












・・・え〜、現在ゲーム内で10日経ってます。


「フェンリル行きなさい!そこで抜かすのよ!」


このゲームは王様に命じられ勇者たる俺たちは魔王を倒すという王道中の王道ストーリーだった。


で、俺たちが今何してるかというと、王都でモンスター競馬場に入り浸っている。


「なぁアクア、そろそろ冒険に行こうぜ。」


「嫌よ。現実にも冒険者はいるけど、それは仕事で冒険してるんでしょ。何でゲーム中に仕事しなくちゃいけないのよ。」


「それは・・・」


あれ?そう言えばそうだな。何もゲームで仕事をする必要なんかないよな?あれ?でも仕事をする事を目的としたゲームもあるし、、、何で?


俺が悶々と考え込んでいると、黒尽くめの人が数人やってきた。


「勇者様方でいらっしゃいますか?この競馬場の総支配人から言伝をお預かりしております。『裏競馬場にどうぞお越しください。』との事です。いかがなさいますか?」


「勿論行くわ!行くわよ和也!」


「お、おう。」


そういえば考えないようにしていたけど、この競馬場も相当おかしい。何でフェンリルって終盤モンスターみたいなのが走ってんだよ。最初の国ってチュートリアルみたいなモンスターばかりじゃないの?


俺達は黒尽くめの人達に連れられて、モンスター競馬場の地下まで連れてこられた。何かと今日は地下に縁があるな。


「こちらでございます。」


着いた場所は悪い意味で賑やかなところだった。装飾は金や宝石で彩られており、観客も派手な服を着て男女で笑い合っている。どこぞのキャバクラかな?


「裏競馬場はモンスター闘技場となっております。モンスター同士で戦わせ、その勝者を予想するゲームとなっています。」


黒尽くめの人達が説明してくれた。確かに中央に結界でできた空間がある。そこで闘わせるのだろう。


「わたしここの空気嫌いだわ。」


「いや、俺も嫌いだけど声抑えて。」


ほんと何が起こるか分からないから。そう思っているとアナウンスが流れた。


『さぁ、次の闘いは特別レートで行います!何とかける金額は最低でも10万コイン。さぁ勇気を持っておかけ下さい!』


何か特別な闘いが始まるようだ。


「なぁアクア。今何コイン持ってる?」


「今は9万コインね。しょうがないから今回は見送りましょう。」


アナウンスが流れた。


『さて、本日のメインイベント!今回のメインで闘うのは、元勇者と元魔王だ!!!!』


あ、このゲーム違う。王道なストーリーじゃない。王道と見せかけた何かだ。じゃあこの後待ってそうなのは・・・。


「勇者様方、特別席をご用意しましたのでどうぞこちらへ。」


黒尽くめの人達が来た。不味いかもしれない。


「アクア、そろそろ帰ろうぜ。今日はここに楽しそうな施設があるって事が知れただけで十分だろ。」


「そ、そうね。私達はそろそろ帰るわ。」


帰ろうとすると黒尽くめの人達に囲まれた。


「まだ来たばかりではございませんか。今日のメインの後はデザートが残っているのです。さぁ、ついてきて貰いますよ。」


黒尽くめの人達と戦闘になった。やべぇ、俺達レベル1だぞ。俺とアクアが何とか敵の攻撃を避けていると俺の目の前が突然真っ暗になった。


『強制終了ボタンが押されました。現実世界に戻ります。』


あ〜、これは。


俺のヘルメット型装置が外された。目の前には強面の自衛官様が立っていた。


「お楽しみだったようだな。どういう事か説明してもらうぞ。」


時間切れみたいだな。




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