ゲーセンという名の娯楽施設

[日々 和也視点]


「うへー、メダルがもう倍近い数に・・・。」


俺はメダルコーナーで神様と遊んでいた。お金がない時はここが1番時間潰しにいいんだ。


「これは角度とタイミングに注意すればメダルを増やすのは簡単よ。」


神様が右手と左手にメダルを掴んで左右から入れている。なんでこのスピードで正確なコントロールが出来るんだ。


そして今気づいたが無茶苦茶注目されている。まぁ美人だもんな、神様。


しかし一体何の神様なんだろうか。髪の色は明るい茶髪、肌は透き通るような白。良く言って無茶苦茶美人な人、悪く言って神らしくない。


「あ、わたし水ね〜。」


ん?あぁ飲み物か。俺は財布を持って自販機まで水を買いに行った。そして俺は小銭を自販機に入れようとして手が止まった。


あれ?話の流れ的におかしくないか?


俺は一度も飲み物に何が欲しいかなんて聞いていない。それに神様って飲み物飲むのか?俺は少し考えて、何の神様なのかという答えを言ってくれていた事に気づいた。


そっか、水の神様か。一つの国潰しちゃった神だったな。・・・あ〜、俺自衛官に見つかったら捕まっちゃうのかな。終身刑、下手したら死刑になっちゃうな。何か親に電話したくなってきた。


俺が携帯を取り出し母さんの電話番号を探していると、水神様がやってきた。


「ねぇ和也、メダルゲームそろそろ飽きたわ。別のゲームしましょ。後自衛官には見つかりっこ無いわよ。神である特徴は隠してあるからね。」


「ほ、ホントか?スキルで探せば見つかるんじゃない?」


「大丈夫よ。もし見つかっても良くしてくれたって言っておくわ。」


・・・何か申し訳なくなってきた。俺は水神様の顔を見た。水神様はこちらを心配そうに見ている。それは諦めの感情も混ざっていて・・・。


「これ以上迷惑かけられないわね。わたしはそろそろ行くわ。」


そう言って水神様は入り口の方に歩いて行った。










ほっとした自分がいた。今まで通りの日常が帰ってきて。後悔した自分がいた。話した相手にあんな顔をさせて。


俺は奥歯を割らんばかりに噛み締めた。俺はここであんな顔をする奴が大嫌いだ。その原因が俺にある事はもっとずっと嫌だ。







俺は覚悟を決めた。


俺は急いで追いかけ、ゲーセンを出ようとする水神様の手を掴んだ。


「まだ遊んでいないゲームがあるんだ!それを遊ばないのはもったいないだろ!」


俺は引き留めるのに必死だった。水神様はこちらをじっと見ている。心でも見ているのかもしれない。でもそれでもいい。


「ゲーセンは誰でも楽しむために来るんだ。だから、そんな顔をして店を出ないでくれ。まだ楽しめる事は沢山あるから!」


俺は必死だった。俺の好きなゲームを嫌って欲しくない。悲しい顔のままゲームに背を向けないで欲しい、そんな気持ちが頭の中でぐるぐるしていた。


「・・・入り口にいるのは邪魔ね。中に入りましょうか。」


俺は水神様を見た。彼女は何か期待したような顔をしていた。


「ようこそゲームセンターへ!」


俺は店員顔負けの笑顔で応えた。


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