今日の世界は非日常なり(別視点②)

[土屋 勇人視点]


「貴方は、炎神様ですか?」


そう目の前の少女に問いかけた。冷静に、そう自分に思い込ませようとするが、心臓の鼓動がうるさいままだ。


「そうじゃ。で、ワシからの質問の答えはまだかの?」


「・・・はい、私は異界で勇者をやっていました。」


この質問は肯定しない方がいい、しかし見破られる可能性がある。そう考えると危険ではあるが肯定せざるを得なかった。


「やはりか。ワシがようやくこっちに来れたというのに、忌々しい気配がすると思ったわ。」


「私は貴方に何かした事はありませんよ?」


「分かっとるわ!しかし、ワシをこんな姿にしたのは勇者の称号を持った人じゃ!ワシのせっかくのぐらまらすぼでぃーが・・・。」


炎神様が自分の身体を見て項垂れている。私はこの場の脱し方を探した。私の後ろには和也が寝ている。和也だけは無事に帰す必要がある。私は炎神様に提案する事にした。


「炎神様、炎神様の炎で彼が被害に遭いかけたのです。今は怒りを抑えていただいて、彼を避難場所に送り届けるまで待って頂けませんか?」


「あん?彼じゃと?」


炎神様が和也を見た。


「なんじゃそやつは。スキルを一つしか持っておらんし、鍛えてもおらぬではないか。そんな奴は別にどうなろうと構わんじゃろ。」


「ですが彼もこの地域の住民です。自衛官である私には彼の安全を守らなくてはいけません。」


「安全な場所に連れて行くまでは相手しないと。ちっ、分かった。待ってやるのじゃ。しかし、戻って来なかったらわかっとるじゃろうな。」


「ええ。」


俺は和也を彼の母がいる公民館まで運んだ。何をしていたのか聞かれたので、適当にゲームで疲れて寝ていたと答えた。


そして、和也の家に戻った時には炎神様の他に自衛官官長もいた。


「土屋、どういう事か説「おぬしは黙っていてくれぬか。」


「炎神様がそう言うのでしたら。」


官長は時魔法で焼かれた建物を直す作業に戻った。ただ炎神様の炎が特殊で、数日前まで時を戻さないといけなくなったらしい。苦戦している様子が見てとれた。


そして俺の前には炎神様がいる。


「ワシが聞きたいのは一つじゃ。おぬしはワシの、いやワシらの敵か?答えよ。」


俺は答えた。


「いえ、敵ではありません。」


しか「しかし、じゃろ?ワシは心を読める。隠し事は身を滅ぼすぞ?」


炎神様は目を細めた。なので正直に答える事にした。


「しかし、彼を、貴方がそんな奴と言った彼を傷つけるのであれば私は貴方の敵になります。」


炎神様は不思議そうな顔をした。


「なんじゃ?あやつはおぬしの大事な存在か。家族や恋人、という訳ではなさそうじゃな。」


「ええ、親友であり、恩人なんですよ。」


「・・・?あやつがか?スキルも幸運値上昇(小)のみ。社会的に見ても無能ではないか。それでおぬしの恩人になり得ると思えんがの。」


炎神様は訝しげにこちらを見た。確かに和也は社会的に無能の部類である。だが、それでも。


「それでも、彼が私を救ったのは確かですし、わたしが貴方に敵対するには十分な理由になるんですよ。」


・・・・・・・・・


「仕方ないの。和也、と言ったか。あやつには傷つけないよう気をつけるとしよう。ではな、ワシは家に帰る。」


そう言って炎神様は神域の方に飛んでいった。


俺は安堵の息をはいた。何とかなったようだ。


「おい、土屋。全て終わったら会議室だ。説明してもらうぞ。」


官長が建物の修復を戻ってきた。お怒りの様だ。


何とかなってないかもしれない。

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