今日の世界は非日常なり、その後

日々家が炎で焼かれた日の夜、自衛官会議室では今日の出来事の報告会が行われていた。


「では、今日の出来事を纏めようか。」


話を切り出したのは自衛官官長の時坂 美保(ときさか みほ)である。


「先ず始まりは神域にて高エネルギー反応を感知した時だな。私はその時官長室おり、高エネルギー反応の知らせを得て自動車で神域に向かった。その際君には連絡を入れたのだが、連絡後どう行動したのか聞かせてくれ。」


「はい。私は急ぎ住民を避難させ、各避難場所で欠員が居ないか調べました。すると一人欠けていた為、その方の家に行きました。」


「なるほど、家に行ったところで終わっているが、その方を無事避難場所に送り届けたのかね?」


「はい。しかし、炎神様の炎を見られてしまいました。炎神様の姿まで見られたのかは不明ですが。」


「ふむ・・・、炎神様が炎で燃やしたのはその方の家だったのか。しかし、なぜだ?なぜそんな偶然が立て続けに・・・。」


土屋 勇人は少し躊躇したが、その後すぐ覚悟を決めた顔をした。


「・・・それですが官長、炎神様が炎で狙ったのは私のようなのです。」


「何だと?土屋をか?一体なぜ。」


「それは・・・私が、異界の勇者だからです。勇者であるからこそ、炎神様が警戒したのだと思います。」


「は?私はそんな話聞いてないぞ!」


「すいません。」


「神が勇者を警戒するのは当たり前だ!お前は10年前の天魔戦争を知っているだろ!」


「・・・。」


「あれは酷い戦争だった。今まで正義の象徴だった勇者が、事もあろうに悪魔と共謀し神に剣を向けたのだからな。」


時坂官長は天を仰いだ。


「それもあって今じゃ勇者がダブーと言われているぐらいだ。そんな事、お前は分かっていると思っていたのだがな。」


「すいません。」


「それに!だ。それ以上に、無関係の人間を巻き込んだのが一番問題だ!燃やされた家を見るにそこの住民も危険に晒された事はわかる!お前が自分を!勇者と知っているならば!誰もいない場所に行き炎神様と対話するべきだったのだ!」


「はい。私も考えなしな行動をしたと思っています。私が神に敵対した訳ではないため、神がまさか攻撃して来ないだろうという甘い考えもありました。」


「全く、今回危険に晒してしまった方には後日謝罪に行かなければいけないな。」


「お手数をおかけします。官長。」


「今回は炎神様の機嫌がよかったから大事には至らなかったものの、土屋が異界の勇者だという事の報告漏れには厳しい罰を与えなければいけない。」


「はい。どんな罰でも受け入れます。」


「罰に関しては後日お前に伝える。今日はもう下がってくれ。」


「はい、失礼します。」


土屋が去った会議室、一人残された時坂官長はひじをつき、両手のひらを自分の顔に当てた。


「どおぉぉぉしよぉぉぉ。」


悲痛な呻き声だった。



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