赤熊決戦

「グラァァァァアアア!!!」


赤熊が俺めがけて、片腕を振り下ろし、襲いかかってくる。


「グッッ!?」


仁は、赤熊の攻撃を幅広の大剣でガードして、吹き飛ばされる。

あえて、攻撃を受けるときに後ろに飛んで、衝撃を少なくして、

かつ、赤熊との距離を稼いだのだ。


「簡易網!!砂嵐!!投擲、投擲、投擲!!」


仁は赤熊への嫌がらせはやめない。

赤熊からしたら、仁は魔力と気配をうまく隠蔽しているので、

雑魚に見える。

だから、赤熊は怒る、怒る、怒る。

だから、仁は逃げる、逃げる、逃げる。


この繰り返しの中、赤熊は気づく。

自分の動きが鈍くなっていると。

魔力、体力共にまだ余裕がある。

しかし、いつもと比べて体が鈍いのだ。

その時、今まで逃げることしかできなかった。獲物が反転して、幅広の大剣を持って自分に攻撃を繰り出してきた。


「やっと、毒が効いたか。お前を切りつけた。大剣にも簡易網にも、石にも全部、俺が深層で見つけて魔力強化した毒をたっぷり塗ってあるんだよ。

そして、その毒をお前は身体のいたるところから侵入させている。

砂嵐は単なる目眩しじゃないんだよ!!」


毒が効いて、体が鈍くなってる赤熊と万全の仁の力は拮抗していた。

しかし、赤熊の体はさらに鈍くなる。

拮抗は崩れ、じわじわと仁が優勢になっていき、さらに、大剣で傷つけられ、

更なる、毒の侵入も許してしまう。


しかし、赤熊は逃げない。赤熊は知っているからだ。

魔力感知を使って、相手の魔力がもう残り少ないことを。


ここで、仁はあえて隙を作る。


「グラァァァァラァァ!!」


赤熊は千載一遇のチャンスに仁に飛びかかるように片腕を上げる。


「砂嵐!!」


仁は足掻きのように砂嵐を発動する。

しかし、赤熊は、その技を何度も見たせいか、まるで止まる気配もなく、仁に襲い掛かる。


「『影縫い』」


仁は、自分の影を伸ばし、赤熊に絡み付け、相手の体制を崩させ、

熊の腕をぎりぎりでかわす。


ブンッッッ!!


とんでもない風切り音がするが、仁は気にせず。

ありったけの魔力を身体強化と魔力強化を大剣にまとわせて、

赤熊の頭に切り掛かる。


赤熊は咄嗟の事に驚きこそしたが、相手の魔力残量から考えて、これが最後の攻撃だと判断した。

ゆえに、この攻撃を守り切れば自分の勝ちだと。

体制が崩された以上、避けることはできない。自分の体に使用している身体強化をほぼ全て両腕に集中した。


ガンッッッ!!


仁の渾身の一撃は赤熊の両手に阻まれ、頭にも首にも到達できずに。

大剣から魔力強化の魔力が切れる。


赤熊はこの時点で、自分の勝利を確信した。

なぜなら、自分は体こそ鈍いが、体力と魔力はまだ残っている。

しかし、相手にはもう、魔力が残っていないのだ。


ドゴンッッッッッ!!!


赤熊が勝ちを確信した瞬間、自分の首に途轍もない衝撃が走る。


この時、赤熊は反射的に首の傷の回復と、首周りへの身体強化をしてしまった。

赤熊から見たら何の、間違いもない、行動。


仁は、大剣を手放し、収納から愛用してした剣を取り出し、

身体強化、魔力強化をして、赤熊の身体強の薄い腹の辺りを

剣で縫うように一閃。


赤熊は胴体が真っ二つに切れ。最後に何が起こっているか分からずに


「グラ?」


と呟いて絶命した。


「よくやったぞ、アッシュ最高のタイミングで攻撃してくれたな。それにしても、この熊、俺が魔力隠蔽を使えるって予想しなかったのか?」


「ワン!!!!」

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