babu~

「狼の赤ちゃんがいる。」


なんの捻りもない、感想が口から出た。


「この赤ちゃん、死にそうじゃん。」


そう言って、狼赤ちゃんになんとなく、頭を撫でようとすると。


「ペロ」


狼赤ちゃんが俺の手を舐めた。



地球にいた頃の仁なら、必ず路上に捨てられている、子犬を助けない。

助けないが、

異世界に来て、心休まる時間が少なすぎたのであろう。

仁は、赤ちゃんを抱いて、木の上にのぼり、回復魔法をかける。


「回復魔法がうまくいって、お前が生き残ったらこき使ってやるから、

生き残ってくれよ。」


仁は、ありったけの回復魔法をかける。

この日、仁は初めて、魔力切れを経験する。

魔力が切れても、赤ちゃんを抱きしめて、体が冷えにように、狼の毛皮をかけてやる。


「俺は、お前の親を殺したかもしれんが、そんなの関係ない、お前のことをこき使ってやるから、生き延びろよ。」


それから、仁は魔力が回復次第、赤ちゃんに回復魔法をかけ続ける。

よくみたら、後ろ足から血が出ているので、収納に準備しといた、お湯で消毒殺菌した、昔使っていた服の切れ端を巻いてやる。


ーーー翌朝ーーー


ペロ、ペロ、


何かに顔お舐められ目を覚ます。


「生き残ったのかお前、運がいいやつだ。腹が減ってるだろう。俺も腹が減ってるから、何か食わせてやるよ。」


仁は木から、狼の赤ちゃんを抱えて、地面に下り、収納から猪肉とお湯を取り出し、赤ちゃんでも食えるように、肉を割いてお湯に浸し、柔らかくする。

木で作った、小ぶりな器にお湯と肉を同時に入れる。


「乳が出ないから、これを食べてくれよ。」


狼の赤ちゃんは、足の一本が怪我して不自由なのか、よちよちと木の器に近づいて、ガツガツ食い始める。


「たくさん食って、早く怪我治せよ。それにしても、よく食うな。足に怪我してたから、何も食えなかったのか?」


この狼の赤ちゃは他の赤ちゃんとの生存競争に負けて、碌に何も食えなかったのかもしれない。毛並みが悪いし。

狼の赤ちゃんは、器の中の肉を食い尽くし、上目遣いでこちらをみてくる。


「よく食うな、猪肉は、腐るほどあるから、いくらでもやるよ。」


猪の肉をほぐして器に入れてやれば、またガツガツ食い続けた。


「これから俺の役に立つために、育ててやるから、名前を決めないとな、

う〜ん?ここは素直にお前の灰色の毛色から、お前の名前はアッシュだ。

分かったなお前の名前はアッシュだ。」


アッシュは全然、こっちに見向きもせずにバクバク飯を食っている。


「まあ、躾に関しては怪我が治ってからでいいだろう。」


アッシュは満腹になって、食べつかれたのだろうか、そこら辺をうろうろして、寝た。


「こいつ、本当に俺の言うことを聞くようになるのか。世話が焼けるな。」


仁は、アッシュの近くで収納から、剣を取り出し鍛錬をする。

剣の鍛錬が終わったら、魔力隠蔽のスキルがないか、試し試しの調査兼訓練をする。

夜になったら、アッシュの足に魔力切れになるまで、回復魔法をかけてやる。



全然、アッシュが起きないから、死んだんじゃないかと思ったけど、体温が昨日より暖かかったので、元気になっているだろう。





ーーーーー3日後朝ーーーー

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