【下書き】#4

しかし、K先生はよっぽど邪悪だった。

K先生は私を見もせずに、こうほくそ笑む。


「お休み」


殺害の動機。

ただこの瞬間に、全部が憎かった。


思えば最初から、K先生は、本当に無神経な奴だった。

自分が才能に恵まれているのをいいことに、他者を見下していた。

顔が良くて性格が良いから、人気を掻っ攫って、逆にそうじゃない私を見下していた。

私のそばにきたのも。

私に先生と呼ばせたのも。

私の作品を読んでくれたのも。

偉そうにアドバイスをくれたのも。

全部が全部、私をあざ笑っていたからだと思えば納得だった。


気づけば私は、彼女の頭をわしづかんで引きずり回し、目に入るもの全てを彼女の喉奥に放り込んでいた。


ハンカチ。ティッシュ。メガネ拭き。いい加減に古いメガネ。カッター。コピック。Gペン。ふざけた表紙の自由帳。液タブとマウス。埃っぽいキーボード。チョコの包み紙。齧りかけの苦い方。コップ。時計。初めて見るアルバム。スマホ。ノート。高いだけのカメラ。空のハンドクリーム。いっぱいのゴミ箱。いっぱいの化粧水。ヘアオイルにヘアアイロン。くたびれたスリッポン。くたびれたイヤホン。学生証と交換日記。連絡網。財布。ピアス。合鍵。

もっともっと。思いつくもの全て。全て、全て。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る