(三)ひどいんです。
「ゴーストライターでした」
女は、取り調べで語る。
「先生、最初は原作と作画の両方をやっていたんです。でもほら、だんだんと動けなくなったでしょう。精神的なアレで……それで付き合いの長い私が、少しずつお手伝いをするようになりました。私、漫画家やってるんです。全然趣味でやってるだけの、同人作家ですけど」
警官は、女のスマホに『K先生』というエッセイの下書きがあるのを確認した。
「先生ね。ひどいんです。自分の伝記を書いてほしいって、私に頼むんです。死に際はなるべく酷く惨く劇的にしてほしいって。そうしたら、伝説になるからって。でもそんなの、私、先生なんかよりもずっと下手なものしか書けないのに。今だって書けていないんです。全然、進んでいないんです。かろうじて書けているところすら、中身すっからかんなんです。先生のアドバイスがないと、私はたったの一行だって書けやしない」
女は、頬が震えるほどに歯ぎしりをした。
それを見かねた警官は、一枚の紙とペンを女に差し出した。
女は一式を受け取ると、静かにペンを握って、重たげにしたためた。
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