スキル「ダンジョン作成師」で、調子こいた冒険者を叩きのめす

ぎざくら

ダンジョン作成師、爆誕

 困った……




 どうやら俺の「スキル」が発動したらしい。




 俺は今、ダンジョンの最深部に一瞬で移動してしまっていた。







 俺の名前は洞中ほらなか作太郎さくたろう

 さっきまで何のスキルも持たない、しがない大学生だった。


 こんな無能力者の俺は、世界に無数に出現したダンジョンに探索に入ることなど、想像もしていなかった。


 そんなダンジョンの最深部に今、俺はいる。




 そもそも、自分がダンジョンの最深部にいるということを分かってしまうのも、俺のスキルのすごいところだ。

 自分のいるダンジョンの全体マップ映像を、空中に投影することができる。

 俺が今いるのは、ダンジョンの地下10階。

 多くのダンジョンが探索されつつある現代において、10階はそんなに深いダンジョンではない。


 しかし、俺のスキルは、ここからダンジョンを改造できる。




 マップに階段アイコンを追加すると、そこから繋がる新しい階層を作ることができる。

 さらには、DP(ダンジョンパワー)と呼ばれる力を消費することで、様々なトラップやモンスターも仕掛けることができる。

 設置した箇所は、映像を切り替えることで現在の様子を確認できる。


 現在は、ダンジョンの出入り口に「×」印がついている。

 現地を確認すると、ダンジョンの出入り口は岩で塞がれていた。


 ×印は指で触れると消すことができるようだ。


 ならば、出入り口を閉鎖しておいて、トラップやモンスターをしっかり配置してしまおう。




 出入りができるダンジョンは、すぐに「冒険者」が見つけて入ってくるだろう。




 持ち前のスキルやアイテムを駆使してダンジョンを攻略し、財宝や素材を持ち帰ることを生業とする「冒険者」は、今や花形の職業だ。


 俺の大学の同級生も、ずっと陰キャ仲間だと思ってたのに「スキル」を得た途端に「冒険者」となり、人気者になってしまった。

 そして彼は現在、俺とは音信不通である。俺を切り捨てやがったな、あの野郎!


 そんな彼を代表とした、調子こいてる「冒険者」達。

 そいつらが持つ金やアイテムを回収して、大儲けできるダンジョンに、俺が作り上げてやる!




 作業に没頭すること、3時間。







 よし、完成だ。




 スキルのレベルを上げないと解放されないトラップやモンスターもあるようだが、沢山の「冒険者」を狩ればレベルが上がるのだろうか。とにかく一旦、出入り口を解放してみよう。




 さっそく、一人入ってきた。「冒険者」ってグループでダンジョン探索してる人も多いと聞いたが、こいつはソロなんだな。

 どんな奴か、現地の映像で確認だ。




 ん?こいつ、大学の同級生じゃねぇか!俺と音信不通になった!




 許さねぇ!叩きのめしてやる!




 「まだ誰も来てねぇな、穴場だ!」とかほざいてやがる。今に見てろや。


 同級生、奥へ歩いてく。

 地下1階奥の小部屋に入っていった。

 そこは、宝箱が設置してある部屋だ。


「おっ!宝みっけ!」


 同級生は宝箱を開ける。大きめの宝石が3個入っていた。


 そう。この宝箱は俺が、わざと設置したのだ。

 このダンジョンは稼げると、思わせるために。

 そして、この部屋に「冒険者」を、まんまと誘い込ませるために!




 自然発生のダンジョンと違って、俺のダンジョンはいつでもどこでも、建造物を追加できる。




 小部屋の唯一の扉を、鉄板で封鎖!




「何!?扉なんて、あったか!?」


 慌てふためく同級生。

 ここへモンスターを大量追加!




「わわっ!?モンスターが!!」




 武器で応戦する同級生。

 こいつ、意外と強いな!こういうときは……


 もっとモンスターを追加だ!




「のぎぼぉー!」


 個性的な断末魔を上げて、同級生は倒れた。


 死んではいない。モンスターに頭を殴られて、気絶しただけだ。

 モンスターの行動も大枠は指示できるので、「殺さないように気をつける」という指示をあらかじめしておけば、事故らない限り「冒険者」を殺す事は無い。

 せっかくの俺のダンジョン。死人が出ては目覚めが悪いからな。




 「冒険者」をダンジョンの外へ連れて行く、という指示もできる。

 あ、それともちろん、『「冒険者」の懐から金目の物を取り上げる』という指示も忘れずに。

 色々な指示ができるが、指示の度にDP(ダンジョンパワー)を使うので、計画的にやらないといけない。


 金だけ奪われて、ダンジョンの外にポイされる同級生。ゲームとかで、全滅すると金だけ奪われて生きて帰れるシステムをたまに見るが、ひょっとしてこういう仕組みか?いや、違うだろうな。




 一旦ダンジョンの出入り口を封鎖して、DP(ダンジョンパワー)が溜まるのを待つ。


 しかし、せっかく3時間もかけて地下20階まで作り上げたのに、最初の10分で作ったトラップで片がついてしまった。

 物足りないな。もうちょっと歯ごたえのある「冒険者」が来ないものか。

 有名な「冒険者」が来たら、有名になってもっと稼げるかもしれないしな。




 ただ、今日は疲れたから、とりあえず一旦家に帰るか。


 DPを使えばトラップを消すこともできる。一旦ダンジョンのトラップを消しつつ、ダンジョンの出口へ向かう。


 しかし、ダンジョンを出た後のことを考えてなかった。

 家まで、すぐに帰れる場所だといいんだけど。









 ダンジョンを出た先は、見覚えのない風景。




 現地の人に聞いたら、ここは海外の未開の地でした。


 同級生の奴、こんなところまで頑張って来てたんだな。

 もう、どっかへ逃げ帰っちまったけど。


 捕まえておけば良かったと思っても、後の祭り。













 こうして俺の、家へ帰る方法を探す冒険が始まった。

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スキル「ダンジョン作成師」で、調子こいた冒険者を叩きのめす ぎざくら @saigonoteki

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