第23話 登録するために①



「次の者、前へ」



 歩き続けて……検問所らしき、建物の前に到着した。


 チルットって街の前には門があって……その手前には石造りの関所みたいなのがあったわ。ざっくりなイメージだと、アミューズメント施設のチケット売り場みたいね?


 ファンタジーの世界だから、余計にそう見えてしまうかもしれないけど……。


 私はクレハとはぐれないように列に並び、順番が来るまで待つこと少し。


 私達の番になれば、次、と言った兵士さんらしき人の格好を見ると……やっぱり、アミューズメント施設とかのスタッフに見えわ。絶対不審者に思われるから、口にはしないけど!



「新規登録もしたいんやけど、これ身内から渡されたんや」



 クレハは兵士の人にも堂々としていて……長老おじいちゃんに渡されたカードを見せると、兵士さんに何度か頷かれた。



「では、向こうへ。受付はそこで頼む」


「おおきに〜。ヒロ、行こうや」


「うん」



 下手に受け答えは出来ないから、ここは頷いておくことに。服装とかも、今はクレハがコーディネートしてくれたのだから……不審者には見えて、ないはず!


 なので、兵士さんが言った方向にクレハと向かえば……個室みたいな場所があり、扉前に立ってた別の兵士さんが中に入るようにと開けてくれた。



「新規ご登録者の方ですね〜?」



 中には、受付らしいカウンターと……ひとりの女性が立っていた。


 人間の女の人だけど、髪がピンク色。染めた色合いじゃなく、自然なパステルピンク。ふわふわした雰囲気で非常に可愛らしい。


 私にはない愛嬌持ちが、ちょっとだけ羨ましいと思うくらい!



「おん。ここに来るように言われたんよ」



 可愛さなら、こっちも負けていない美少女クレハは……お姉さんに、いつも通りの調子で声を掛けて無地の仮カードを見せていた。



「わかりました〜。後ろのお嬢さんもどうぞ、こちらに腰掛けてください」


「……ありがとうございます」



 お嬢さんって言える年齢じゃないと思うけど!


 初対面の人に、気遣いだろうがそう言ってもらえるのは嬉しい!!


 とりあえず、登録はしなくちゃなのでお姉さんのいるカウンター前の椅子に座ることにした。


 お姉さんは私達が座ると、にこっと笑ってからバインダーのようなものを差し出してきた。



「登録カードの注意事項です。どちらか、文字は読めますかー?」


「……読めます」


「あちきもや」



 やっぱり、美女神様が何かしてくれたのか……こっちの文字もきちんと読めている。日本語じゃないのに、全部ちゃんと読めるのだ。



「では、準備に少しお時間をいただきますので〜、そちらをお読みになってお待ちくださいー」



 と言って、お姉さんが裏手側に行っている間。


 登録カードに関する注意事項とやらを、私達はじっくり読むことにした。



「……クレハも読めるんだね?」


「アヤカシかて、人間と同じことはするでー? あちきの場合は、親が教えてくれたんや」


「その割には……人間の知らない部分あるけど」


「偏ってるからなあ?」


「そうなんだ」



 まあ、家庭事情が人間でもモンスターでも色々あるのは仕様がないもんね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る