第22話 今更だが

 クレハが持っていたのは、世界地図みたいなものだった。


 大陸の大きさや形は、日本以外の海外の国のどれでもない。やっぱり、ファンタジーの世界に来たんだな……と納得するものばかりだった。



(……そう言えば、言葉もだけど)



 もの凄く今更だが……私、言葉が通じている?


 クレハもだけど、モンスターの言葉がきちんと聞き取れるし……ちゃんと会話も出来ていた。あの美女神様が腕を治すついでに何かしてくれたのかな?


 人間とはまだ出会ってはいないけど……多分、大丈夫なはず?



「ほな、こっからは歩いて行こか?」


「……人が通るから?」


「それもあるけど、街には検問所言う場所があるんやと。むかーし、帰ってきてたオトンらに聞いたんやけど……まあ、不審なことするかしないか調べるだけらしいで」


「んん?」



 海外旅行の経験はないが、一応知識としては覚えていることがある。


 その入国審査的なので、必要なものがあるんじゃないかなって。パスポート的なのとか……。



「どないしたん?」



 歩き始めようとしていたクレハの肩を、私はとっさに掴んだ。



「クレハ……あなたはともかく、私この世界での身分証とかないけど」


「みぶんしょう?」


「えーと……自分が、どこかの国に所属してるとか……その検問所に必要じゃない?」


「あー。それは心配無用や!」



 にっと笑うと、クレハは指を軽く振ると二枚のカードぽいのを取り出した。カードには何も印刷とかはされていない無地のものだったわ。



「それは?」


「仮の登録カードや。おじぃに今朝送られてきたんよ。おそらく必要やから、二人分持ってけって。検問所で新規登録出来るらしいで」


「おお!」



 さすがは長老おじいちゃん! ありがとうございます!!


 それがあれば、何とかなるらしいと分かれば!


 いざ、チルットと言う街まで向かわねば!!


 靴はブーツみたいなのをクレハに見繕ってもらったけど、結構履き心地いいから土を固めただけの道でも歩きやすい。



「ヒロ、昨夜おじぃに言っとった『タレ』とか『ソース』ってどんなん?」



 歩き始めてから、クレハが疑問を投げてきたわ。


 それには喜んで答えましょう!


 これから探す調味料で出来上がるものだからね!



「えっとね。ひとつの調味料で作れる場合もあるんだけど……昨日も話したのにも付け加えると、複数の調味料を組み合わせて……新しい味にしてくれるものかな?」


「ほんまに美味いん?」


「まだ塩味しか知らないもんね? 例えば、焼いたポルネギもだけど……クリマッシュももっと味が濃くなって美味しくなると思うんだー!」


「……はよ食いたくなるわ〜」


「材料あっても、すぐに作れないけどね?」


「え!?」


「ものによっては、『熟成』って工程が必要なんだよ」



 バーベキュー串で言うなら……焼き肉のタレとかバーベキューソースとか。


 さっと作れるものももちろんあるけど……生半可なことはしたくない。そう決めたのなら、初挑戦でも……そう言った調味料作りもやってみたいもの!!



「え〜……面倒やんな」


「けど、成功したら最高に美味しくなるはずよ!」


「……ヒロがそこまで言うなら、手伝うわ〜」



 とか何とか、雑談しながら歩いていると……少しずつ、人間とすれ違うようになってきた。


 誰も自転車、車、バイクなどを使っていない。


 徒歩だったり、荷馬車とか……まるでのどかな田舎の光景と同じだった。服装も日本とかと違い、私が今着ているようなのと似たファンタジーぽいの!

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