第6話 私はジビエ料理人②

 クレハが水切りや運搬を魔法で何とかしてくれたので……地面に置かれた、猪もどきこと六角ボアを解体していくことに。


 刃物は当然持っていないから……そこも、クレハにまた頼む。魔法での解体作業をしていくのだ。


 日本とかでだったら、ゴム手袋とか色々準備は必要だけど……ないならないでやっていくしかない。


 生きていた食材を捌く作業は……下っ端でもなんとかやっていたんだもの。やれるだけやってみるしかない!


 だって、美女神様に転移させられる前にも、なんにも食べていなかったからお腹ぺこぺこだもん!!



「どうするんや?」


「皮を剥ぐのはわかるよね?」


「せやな? 肉を出来るだけ残さぬようにすればええんやろ?」


「そうそう。あと、脂」


「あぶら?」


「肉の上に白い部分があるの」


「……あれか。普段は捨ててたわ〜」


「焼くと美味しいんだよ?」


「……はよ、教えてや」



 特に、猪の脂ってご馳走だからね?


 熟成させるとなお美味しいんだけど……まあ、今回はいいだろう。


 皮剥ぎをゆっくり丁寧に、次は肉と骨の解体。


 ざしゅって、クレハが指示している箇所を目に見えない風の刃か何かで、あっさり切ってくれるのは見ていて面白い。


 皮もだけど、角も骨もこの場合は焼却処分した。


 何かあって寄生虫騒ぎに……ならないのは今更かな?


 クレハが言うには、ここいらはモンスターが過ごす弱肉強食の森だからそうで。



「じゃ……お待ちかね! 焼こう!!」


「おー! 待ってたわぁ!」



 網とかがないので、木の枝をクレハが串のように加工してくれたのに……ブロック肉を刺していく。


 ここに臭み消しなども兼ねて、塩とかを振りたかったんだけど。



「塩……ないかな?」


「あるで?」


「え?」



 クレハがほら、と前足を向けた場所には……ピンクの結晶があった。


 全然気づかなかったけど、あれってつまり!



「岩の塩やねんけど、削れば使えるやろぅ? そんなんも、向こうにはないん?」


「あ、るけど!? こんな道端にあるの!?」


「ここいらは……大昔海の底やった説があるんよ。せやから……時々こんなのが顔出してくるんや」


「使おう!!」



 天然のヒマラヤ岩塩ぽいの!! 是非とも使わせてください!!


 クレハにまた魔法を使ってもらい……削った岩塩の粉を適量ふりかけていく。


 これを……じっくりと焚き火の熱で焼いていけば。



「……ええ匂いやわ〜」



 クレハもうっとりするくらい……たしかに肉が焼ける匂いは格別だ!


 早く食べたいけど……猪肉とかは生焼けが怖いからしっかり焼いていくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る