幕間
――
日没を迎え、公務を終えた
突然の出来事に周囲の侍女達が怯え竦む。
渓王は即座に人払いを命じ、従者と侍女を執務室から追い出して、仮面の法術士と二人きりで向かい合った。
「どうした、
「ご報告いたします。陛下の腕を苛む黒き呪詛、その解呪法が判明いたしました」
「何だと!?」
驚きに声を荒らげる渓王。
黒尽くめの法術士は人間性を感じさせない口調のまま、淡々と報告を続けた。
「
「そんな事情はどうでもよい! 一体どのような手段を取ったというのだ!」
「
「……何?」
法術士が平然と言い放ったその言葉の意味を、渓王はすぐには理解することができず、怪訝な顔のままで
「何を言っている。黎駿とこの呪詛に何の関係があるというのだ」
渓王は豪奢な着物の袖を捲り上げ、呪詛に根を張られた左腕を露わにした。
「あやつは悪食の異能しか持たぬ出来損ない! 役になど立つものか!」
「いいえ、陛下。そうではありません。元太子の天命は、呪詛を食らうことすら可能としていたのです。元太子は穹国王家の求めに応じ、その異能を
「……馬鹿な。ありえん……そんなことが……」
渓王は顔面蒼白となってふらふらと後退り、執務机の椅子に力なく座り込んだ。
探し求めていたものを、実は既に自ら手放していた――この事実だけでも渓王に衝撃を与えるには充分過ぎたというのに、よもやそれが無能と見限った息子だったとは。
衝撃はもはや絶望にも等しく、渓王は
「
「ふざけるな! あやつに頭を下げろというのか! できるわけがなかろう!」
渓王の拳が執務机を
並大抵の者であれば、王の怒りに触れたことに恐れ
しかし、仮面の法術士は平然と佇んだままで、
「
「……そうだな。確かにそうだ。命令書は
渓王は執務室から追い出していた従者を呼び戻し、現王太子の黎禅を呼んでくるように指示を出した。
それと入れ替わるように、仮面の法術士が黒い霧に包まれて姿を消し――
◆ ◆ ◆
「ああ、実に愚かでございます」
――その後、王宮の屋根の上に再び姿を現した。
眼下に広がる王都
仮面の法術士は雲一つない夜空を見上げ、誰に聞かせるでもない独白を続けた。
「王の威光? 支配の天命? アレはもはや、そのようなものに縛られる存在ではないというのに。たかが一国の王太子風情が、己の
法術士の呟きには明らかな
まるで
「全てを喰らう悪食の
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