第235話 カイルVSスケアクロウ
強さには“枠組み”がある。
筋力で強い奴。
速くて強い奴。
賢くて強い奴。
種族として強い奴。
魔物として強い奴。
強いから選ばれた奴。
強く造られた強い奴。
その“枠組み”を取っ払い、それら全てを世界という土俵へ放り込んだら一体、どいつが強いのだろうか?
かつては【武神王】。だが、過去にソレは覆され、今では誰にも予測できない。
しかし、少なくとも……この中で一つは結末を見れるかもしれない。
『
VS
『
今回の防衛任務において【スケアクロウ】が警戒する優先順位はいくつかあり、戦いの中で常に更新をしていた。
「オラァ!」
だが、当初より危険度が変わらない『霊剣ガラット』は常に最上級の警戒に位置づけている。
「ピピ――」
横から割り込む様なカイルの剣筋。【スケアクロウ】は最小の動作で身体を動かし『霊剣ガラット』の刃を回避する。
「逃がさねぇぞ!」
身を引いた。【スケアクロウ】は『霊剣ガラット』を恐れている。カイルは更に踏み込む。
お前が最強か?
最初に剣を折られて吹き飛んだ時に『霊剣ガラット』からそんな声が聞こえた気がした。だから、俺は柄を握って言い返した。
そうだ! だから見てろ!
敵はデカイ身体。動きは俺の方が速い。長い腕の内側なら……お前は攻撃出来ねぇだろ!
キィィィン――
鞘から抜き放たれた紫色の刀身が振るわれる度に『霊剣ガラット』は息を吸うように、そんな音を立てる。
袈裟懸け。胴薙ぎ。逆袈裟懸け。振り下ろし。
持ち手を多彩に変えつつ、流れる様に放たれるカイルの剣筋は繋ぎ目を感じさせなかった。
それは幾度と繰り返した基礎鍛練が積み上った末にカイルが得た技術。相手に呼吸と反撃の間を与えない程に洗練されたモノだった。
「――――はは」
カイルは思わず笑う。何故なら【スケアクロウ】はその剣筋を全て回避し続けているからである。
ソレは“不格好な避け”ではない。
行動予測。的中率98%――
カイルの身体から重心の掛け方、剣の握りによる刀身の動き。それに伴い伸びる可能性のある
【スケアクロウ】は敵と環境の全てを的確に把握し、最小かつ最適な動きで『霊剣ガラット』を避けているのだ。
ソレはある種の未来予知。だが、ベクトランの様な“未来を見る”と言うモノではなく、あらゆる要因を情報として集約し、現実と限りなく
デカイのに当たらない。
すぐ目の前に居るのに当たらない。
コイツは本当に現実に存在しているのか?
踏み込み『霊剣ガラット』が空を切る度にカイルは思う……
「面白すぎるぜ! お前!!」
強ければ強いほど、届かないと思えば思うほど、カイルの能力は爆発的に加速していく。強く――強く――強く――
「ピピ――」
カイルの刃は継ぎ目が無い。距離を取ろうと空けても追ってくる。
【スケアクロウ】は避けつつ、カイルを生物的に分析。人体が全力で動ける時間は40秒が限度。その息切れを狙う。
行動予測。的中率90%――
キ、キン……
【スケアクロウ】の装甲に『霊剣ガラット』か掠めた音が鳴る。
行動予測。的中率89%――
キュキキン……
更に装甲を掠め――
行動予測。的中率85%――
キン、カッ――
装甲の角が避けきれずにカットされる。
行動予測。的中率83%――
キィィィン――
振り上げが頭部を浅く傷つけた所で、カイルの危険度を更に引き上げる。
40秒も無く斬られる予測を覆す。
『霊剣ガラット』。危険度最優排除――
その時、肩部の装甲が僅かにスライドするとそこから覗く銃口から7mmの弾丸がカイルへ放たれる。
地面が吹き飛び、剣を振るっていたカイルは――
「アハハ、なんだそれ!?」
銃撃を横へ跳んで避けていた。
【スケアクロウ】の光線は銃口が見えたら飛んでくる。そう認識していたカイルの本能は、装甲が開いた瞬間に現れた銃口を見て即座に射線を外れる動きを取った。
『霊剣ガラット』の側面へ、なるべくガードしつつ横へ跳ぶ。結果、初見にも関わらず7mm内蔵砲を回避したのである。
「ピピ――」
【スケアクロウ】は肩部装甲を戻すと避けたカイルへ頭部を向ける。その口部は既に開いており、射線が合えば即座に放たれる。
ソレを察したカイルは射線から動こうとするが、
「あれ?」
ガクッと足に力が入らない。見ると太ももに弾丸が一発だけ被弾し血が流れていた。
対象の被弾を確認。機動力減。『
【スケアクロウ】より全てを消し飛ばす『光線』がカイルへ照射される。
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