【付録】 ストーリーバックグラウンド
今回の付録は設定資料集ではなく、ストーリーのバックグラウンドのまとめ編です。
本文中で書かれたことを時系列順に並べたものなので、これまでの説明のおさらいとしてご利用ください。
【ルクスデイ家追放の真相】
本来、ルクスデイ家は雷霆槍ケラウノスを、デウスクーラト家は神聖杯ネクタールを継承する一族だった。
あるとき、ルクスデイ家の次女エヴァンジェリンが、通常の医療では治せない死病に罹ってしまう。
当主であり父でもあるイノセントは、自身の精霊術で娘の未来を占い、一つの答えを得た。
神聖杯ネクタールを用いれば娘を助けられる。
しかし、娘を救えばイノセント自身は破滅の道を辿る……と。
具体的にどのような破滅が待っているのかまでは分からなかったが、躊躇う理由はなかった。
イノセントは友人だったデウスクーラト家当主に頼み込み、神聖杯ネクタールを極秘裏に借り受けて、その守護精霊とエヴァンジェリンの間に契約を結ばせた。
結果、エヴァンジェリンは神聖杯の霊力によって、無事に完治。
ところが、デウスクーラト家と約束した返却期日の直前、何者かの手によって神聖杯が奪われるという事件が発生する。
犯人はイノセントの護衛担当のウルフラム。
しかしウルフラムは、自分が真っ先に疑われる立場だと自覚しており、偽装工作を重ねて追及を逃れていた。
盗まれた神器は発見できず、イノセントは神器喪失の責任を問われ、ルクスデイ家もそれに連座して処罰を受けることになってしまう。
イノセントとその妻子は聖域を追われて追放天使に。
一族の他の構成員も立場を悪くし、法的な処罰は受けないまでも、名門の看板を下げざるを得なくなる。
神器を盗まれた事実は隠蔽され、追放の理由は非公開となり、雷霆槍ケラウノスの管理はデウスクーラト家の管轄に移された。
だが、実際にはこれでも温情ある処罰であり、最悪の場合は一家全員の死刑もありうる歴史的大事件だった。
追放刑で許された理由は、事情を知るデウスクーラト家の当主が働きかけたからこそである。
エヴァンジェリンは、この一連の経緯を知らない――周囲からはそう思われていた。
イノセントから受けた恩を返すためにやってきた聖騎士アヤも、エヴァンジェリンが真相を知って傷つくことを恐れ、そのような事態が起こらないように心を砕き続けた。
しかし実際には、エヴァンジェリンはアヤと出会うより先に、親類の心無い天使から全て暴露されていた。
その上で、自分が真相を知っていると分かれば周囲の者達が心を痛めると考え、何も知らない振りを続けていたのである。
自分が家族の破滅の遠因になり、大勢の人々を間接的に不幸にした事実を突きつけられても心が折れず、それどころか他人を気遣って無垢に振る舞い続ける。
護らなければと思われていた可憐な少女は、その実誰よりも強い心の持ち主だったのである。
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