腰ヘコ村レポート
羊蔵
第1話 警告文
「
その動画は一人の若者のそんな言葉から始まる。
私はこの男の友人ではない。
居酒屋で偶然隣り合った。私の趣味が怪談集めだと知ると、その男は急に神妙な顔になって、
「ちょっと今から俺がする話を動画にとって欲しいんですけど」
という。
私も酔っていたので乗ることにした。
「ここじゃなんだから」
というので、コンビニで酒を買いこみ、公園で飲みながら撮影することにしたのだった。
それから朝までかけて、男は話し続けた。
最後に彼は、この話を動画でも文章でもいいからネットに拡散してくれと私に頼んだ。
以降、この男とは会っていない。
男から託された動画には、身の毛もよだつような恐ろしい話が収録されている。
これを本当に拡散していいものか、私は悩んでいる。
男の話が真実だった場合、人々をあの恐ろしい場所へ誘導してしまうことにもなるからだ。
そう。
あの『こしへこハワイアンセンター』へ。
これから記す文章は、男の話を書き起こしたものである。
この章には、そのさわりの部分だけを提示する。
みなさんには、その冒頭部分をまず読んでいただき、覚悟のできた者だけ次章へ進んでいただきたい。
さわりだけでも「こしへこ様」の危険さは分かっていただけると思う。
男はこう話しだした――。
「
いや。順を追って話そう。
まずは、そうだな……。
見たら詰みってタイプの怪異ってあるじゃないですか。
ほら、くねくねとか、ああいうの。
そいつを視認しただけで、精神に異常おかしくなって、くねくね踊るだけの怪異にされちゃう。人生終わっちゃう。
それと同じですよ。
『こしへこ様』は。
見たら終わりなんですよ。
なのにさあ。
なのにそいつを村ぐるみで公開しようって連中がいるんだよ。
『見たら終わり』のあの怪異が今も一目に去られ差照るんだ。
ああ思い出す……今も目に浮かぶ……。
あのきらびやかなダンスステージがね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます