第8話 翻弄される?あざとい男子

「先生、あそこ違いますよ~」



裕斗君から授業中に指摘される私。




「えっ!?ここ?」

「いや、そこじゃなくて右の所です」

「右?ここ?」

「いや、そっち左だし」

「菜々子ちゃん、右も左も分かんないの?」



一人の男子生徒が言った。



「右と左は小学生でも分かるから」



別の男子生徒が言った。





「菜々子ちゃん、俺達から見たそのままの視界で黒板に書いてるんだし」



最初の男子生徒が言った。






私は赤っ恥をかきながら授業を進めていった。




その日の夜─────




「あれ?菜々子先生、お一人ですか?」

「結岐先生」



私が一人居酒屋にいると、私に声をかけてきた。




「相変わらず名字なんですね」

「すみません…慣れなくて。なんかつい…」

「ご一緒してもよろしいですか?それとも…一人がいいですか?」

「大丈夫ですよ。どうぞ」



私達は一緒に飲む。



しばらくして────



「先生…菜々子先生」

「あっ!ごめんなさい私…」

「いいえ。帰りましょうか?」


「すみません。待って下さりありがとうございます。でも先に帰って貰っても良かったんですよ」


「女性を一人おいて帰れませんよ。何かあったら大変です。気が気じゃないですよ」




私達は帰る事にした。



「すみません。送って下さりありがとうございます」

「いいえ」


私達は別れた。


私は家路に帰宅。



「おかえり、菜々子さん」

「裕斗君。ただいま」

「一人で飲んでたんですか?」

「結岐先生と。偶々、私に気付いて声かけられて」

「ナンパされちゃったんですね」

「ナンパ!?いやいや、ナンパって…意味が違うような」



「菜々子さん美人だから、案外、結岐先生狙っているんじゃないんですか~?」


「まさかっ!職場恋愛なんてありえない」

「じゃあ、禁断の恋はあるんですか?」

「えっ!?」

「先生と生徒」


片目をウィンクする裕斗君。



「いや…それは、それで…」

「じゃあ…俺……狙っちゃおかな?」

「えっ?」




スッと歩み寄ると私の片方の肩に手を置く裕斗君。



ドキッ


「相上菜々子さん、今、俺の目の前にいるあなたを」



ドキーッ



かあぁぁぁ~~~っ!



「………………」




スッと離れる裕斗君。



すると両頬をフワリと両手で優しく触れる。



ドキン



「ひ、裕斗…君…?」




ドキドキと胸が加速する中、ざわつく。




「お顔、真っ赤っかですよ。菜々子さん。お酒飲み過ぎちゃいました?それとも、俺の行動かな~?」

「ひ、裕斗君っ!」




クスクス笑いながらイタズラっぽい笑顔を見せる裕斗君。


反則だ。


年上の私が、年下で生徒である彼に、同居人に振り回されるかのように翻弄されてる?


侮れない、あざとい男子だ。



「と、年上をからかわないの!」



私は部屋に向かう。



「だけど、不思議ですよね?」

「何が?」



私の後を追うように裕斗君が来る。




「本当に偶然なんですか?」

「えっ?」

「なんか偶々にしては偶然過ぎるし~実は後つけられてとか?」


「何言って…そんなストーカーみたいな事…あっ!もしかして…裕斗君、妬いてるの?」


「妬く?俺が?」

「だって…」

「心配してるだけですよ」

「そう?」

「妬いてるって言って欲しかったですか?」

「ち、違います!」



クスクス笑う裕斗君。


私は、そんな裕斗君にからかわれながら────









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