断章 新版現代魔術全解より一部抜粋

 初めに、魔術の系統などを紹介する。各魔術の詳細については当該ページを参照。


 [魔術]


 現代の魔法使いの主力となる技。魔法と同様に、幻想を現実化させる行為である。人は生まれた時から魔力をどのように使い、どのような能力を使えるかが大まかに決まっており、その後の本人の趣味嗜好、特技、性格等が影響し、遅くとも青年期頃には魔術の詳細が確定すると言われている。


 魔力とは、魔術を行使する動力源であり、人間の可能性を秘めたいわば潜在能力の塊であり、メイジャーの基礎能力を大幅に強化している要因でもある。通常の人間は生涯を終えるまで魔力を自覚することすら無く、自覚し扱えるようになることを魔力の覚醒と呼ぶ。


 魔力は潜在能力であると同時に、この世界の法則を無視したエネルギーでもある。それを変換した魔術もまた、この世界の法則を無視しているものが大半であり、そのため魔力とは極論、なんでもできる可能性を秘めている。現在のメイジャー試験およびメイジャーには、この魔力のためだけに受験、および在籍する者も一定数おり、その中に紛れる危険因子を排除することが早急な課題となっている……



(中略)



 続いて魔術の分類について説明する。初めに性質による分類を簡単に紹介する。




 《相伝魔術》


 家系や族血によって、生まれた瞬間から定められた魔術。その能力自体も強力なものであり、それを一般人が覚えることは不可能。ただし、術者が相伝以外の魔術を会得したり、相伝魔術自体をオリジナルに改変させる事例は少なからず存在する。



 (中略)



 《一世魔術(旧 不継魔術)》


 その人のみが会得し、継承することのできない魔術。模倣も可能であり、似た魔術を使う人と会うことは珍しくない。過去には継ぐことができない魔術として、相伝魔術の使い手から軽蔑もされていた。



 (中略)



 《伝承魔術》


 師弟関係になり、師匠から受け継ぐ、または植え付けられる、教わるなどして習得する魔術。個人に留まることがない、万人に適用することができる画期的な魔術であり、魔法に近い概念となっている。そのため、現在最も盛んに研究が進められている魔術である。しかし前述の通り植え付ける魔術も存在し、本人の同意なく魔術を習得させる悪質な手口が後を絶たないため、最も警戒されている魔術でもある。


例外として、ルーン魔術は“魔術”と名前が付いているが、その性質から厳密には魔法の一種に区分される。



 (中略)



 《留界魔術》


 本人の手を離れても未だ世界に残り続ける魔術。複雑な技術を必要とするが、現代の魔術師は一度変形させると元に戻せないという制約と科すことで、容易にこの属性を付与することに成功している。



 (中略)




 続いて、能力別の分類を簡単に紹介する。




 《概念型魔術》


 その物体が持つ、あらゆる概念そのものに干渉する魔術。一般に、ものが持つ物理法則を捻じ曲げていれば概念型に分類される。磁性を持たせるのも、磁性という概念を与えるので概念型と分類される。特徴として、概念型魔術の多くは、本来持つ能力と対になる能力が自然に会得される点が挙げられる。



 (中略)



 《顕現型魔術》


 実体のあるものを生み出す魔術。留界魔術のほぼ全てはここに属し、召喚術や武器を具現化する魔術もここに属する。生成するものの大きさ、複雑さ、構成素材、造型によって消費魔力量が増減するほか、特定の動作によって作成された文章や絵画から実物を生成する召喚に近い形の顕現型魔術も存在する。



 (中略)



 《倉庫型魔術》


 物体をあらかじめ収納しておき、必要に応じて取り出したりできる魔術。顕現型と違い、こちらは既に存在している物を扱う。基本的にある種類の物体に限り、人間の許容量を遥かに上回って貯蔵できる能力が多い。そのため、万物を大量に収納できる能力は非常に珍しいとされている。



 (中略)



 《領域型魔術》


 条件を満たすと、相手もしくは自分と相手を自身の領域に引き込む魔術。ただ“陣”を展開して自身の空間に引きずりこむものから、一定条件を満たすことで監獄のような世界に送る魔術まで、引き込む手順や条件によって領域の性質は大きく異なり、基本的にリスクリターンの関係の上に成り立つ。



 (中略)



 《付与型魔術》


 相手もしくは自分になんらかの特殊効果を付与する魔術。バフデバフ、共感覚など、与える効果は多種多様となっており、概念的なものを付与する能力も存在する。


 概念を与える付与魔術と概念魔術の違いは磁性で例えると分かりやすい。付与魔術では磁性がないものに磁性を与えることが可能だが、概念魔術では磁性を与えることは不可能であり、元々磁性を持っているものに対してその磁力の強度を操作することに限られる。



 (中略)



 《操作型魔術》


 一定条件を満たすことで対象を確定でかつ強制的に操ることができる。操作対象は人から物体まで幅広く、特に人を対象とした操作型魔術は、高度な魔術センスがなければ複雑な行程を必要としてしまう。



 (中略)



 《放出型魔術》


 能力によっては発射型、射撃型などとも呼ばれる。魔術を相手に向けて放つ。目に見えるものと見えないものがあり、目に見えなくとも目を凝らすことで魔術であれば視ることができる。

 放出型の中にも操作型に類似する能力が散見されるが、それらの違いは、魔術を跳ね返せるか跳ね返せないかである。操作型魔術は条件を満たすことで回避不可能の魔術を行使できる一方、放出型でそれに類似する能力を行使する場合、相手の力量次第で無効化される場合がある。



 (中略)



 《強化型魔術》


 身体能力を強化する。条件を設けることでその強化具合を底上げすることもできる。最もシンプルだが、単純に物理技で押し込む戦闘スタイルは魔術師としてイレギュラーであり、大半の魔術師が苦手としている戦闘スタイルである。付与型魔術と酷似しているが、元々持つ体質、能力をベースとした強化となるのが最大の特徴。



 (中略)



 《元素型魔術》


 魔力を特定の自然物(以下元素)に変換でき。その元素において圧倒的な汎用性と火力を誇る。元素人ステヒオラーしかこの魔術系統を持たないため、元素型魔術と呼ばれる。



 (中略)


 [二千年前の偉人たち]


 これら九種類の魔術には、法暦時代にて最高峰と呼ばれた魔術師が存在し、そのミドルネームがメイジャーアカデミーの学科の別名にもなっている。

 しかし法暦文明の遺物はほとんど存在せず、残存するその半数も未解読のため、一部欠落しているものも多い。


 名は知らずとも、彼ら九名は今日の魔術を大成させた存在であり、彼らの尽力で滅亡戦争での「人類の完全な絶滅」は免れることができた。



 九名の偉人に敬礼を。彼らの功績を忘れるべからず。



概念型魔術

ノゥト・ライゼン・ハームツェイトネイト


顕現型魔術

○○・フォーレイ・プリ○ジ⚬○ニア


倉庫型魔術

ドブニャッキ・ズウェルダム・○○○⚬


領域型魔術

○○○○○・シュメイル・○○○○○ュ


付与型魔術

○ァー○ニル・ニーズヘッグ・○○○


操作型魔術

ラージャラナ・リドル・ブラウザキ


放出型魔術

アダム・ディーブ・○○○


強化型魔術

ユージク・ノンフィーネ・レグザスター


元素型魔術

マテリアル・アーキタイプ・ステヒオラー


※なお、ユージク・ノンフィーネ・レグザスターは現在も存命であり、世界最高齢の男性とされている。現メイジャー教会名誉会長。



 [行法]


 魔術もとい魔力を操る上で基本となる動作を技としたもの。法暦時代にも存在したとされるが、現在広まっているものは新暦が始まってから作られたものである。より多くの人を魔力に慣らすために作られたものとされており、新暦と同時に誕生したとされるエンフェント族の魔術は行法の延長線上にあるものが多い。




 霊拳


 自分の魔力量の25%以上を込めた打撃。これによって精神状態によるバフ・デバフを受け。最大で通常±300%の攻撃力増減が発生する。




 瞬迎


 オーラを体から1m以内で広げ、オーラ内に入ったものを即座に迎撃するカウンター技。




 陣


 オーラを体から1m以上広げて、オーラ内にあるものの形や動きを感知する。感知範囲は魔術師によって大きく変動し、一般に放出型魔術を扱うものは広い傾向がある。




 壁


 オーラを自身の周囲に纏わせ、周りの現象による被害を防ぐ。炎や爆風、魔力による攻撃は防ぐことができるが物理的な攻撃は全く防げない。と言うか魔法攻撃も防げるか微妙なところ(未熟な攻撃に対する防御としては十分)で、完全に防げるのは威圧や爆風、炎といった実体のないものだけである。

 エンフェント族の防護する青色の弾はこれの応用で、防御力が大幅に向上している他、物理攻撃にも対応している。




 翔


 オーラを足から飛ばし、瞬間的に高速移動したり、空中に高く飛び上がる。空中で軌道を変えることもできる。極めると、微量のオーラを飛ばし続けてホバリングもできる。

 エンフェント族の衝撃波弾はこれの応用技である。




 全霊拳


 霊拳の中でも、自身のオーラの90%以上を込めた打撃のことを指す。威力は最大で通常の三乗。この打撃を行う際は並の集中力ではできないため、そもそもデバフ効果が存在しない。その研ぎ澄まされた集中力によって通常の三乗という驚異的な数値を叩き出す。そのため、これを必殺技とする術者も少なくない。

 しかしその威力にはばらつきがあり、なんの単位を以て三乗としているのかは未だ不明である。最近では、三乗ではなく十三倍であるとする研究結果が出ており、学会では最重要議題の一つになっている。



 また法暦時代の壁画からは、エンフェント族の気弾と酷似した球体を発射して攻撃する絵が多数発見されているため、行法には七つ目があるのではないかと言われている……



(中略)



 [魔法]


 魔力を扱えるものなら、詠唱や魔導具を介することで発動できる汎用的な魔術。しかし現代では魔法は重要視されておらず、一部の魔術師が万全を期するためや興味本位で会得するのみに留まる。


 以下には主な魔法の例を挙げる。が、その殆どは魔導書に記されている。また、二重鉤括弧内の魔法は法暦に存在したとされる魔法である。



箒で空を飛ぶ魔法(スカイブルーム)


 詠唱を必要としない魔法。箒にまたがると箒で飛行することができる。しかしバランス感覚や速度調節が難しい。



魔導書を操る魔法(ブックオン)


 魔導書を取り出したり、触らずにページをめくったり、浮かせて手を空けるために使う汎用魔法。詠唱無しで発動可能。



火の玉を出す魔法(ファイアボール)


 魔法名の詠唱と魔導書、杖を介することで発動可能。さらに詠唱を付け足すことで威力を上げることができる。



雷を落とす魔法(サンダーストライク)


 魔法名の詠唱と魔導書、杖を介することで発動可能。好きな場所に雷を落とせる。



邪心を取り除く魔法(イビルデリート)


――心を邪悪に染められし哀れな人々に慈愛を、神の御祝みしゅくを――


 上記の詠唱で発動。対象の心に蔓延る悪の心を一時的に取り除く。その邪心は自身に降りかかるため、極めて純潔な善の持ち主でなければ自分が悪に染まってしまう恐れがある。

現代には、エンペラー家の聖炎消魔イグ・ムンダーレとして引き継がれている。


攻撃魔法①


 正式名称不明。魔力の塊と思われる球体を放出して攻撃する。詠唱無し、杖を介することで発動。



攻撃魔法②


――肥大して全てを喰らえ――


 正式名称不明。上記の詠唱と魔導具を介して発動。背丈ほどの魔力の球を一発発射する。



憤怒の炎(イラプション)


――我が怒りは星の怒りなり、故に我は星の代弁者なり。我は星の力を以て邪悪を喰らう。されど怒りは収まらず、星は地獄を呼び起こす。煉獄が大地を覆い、無分別に全てを焼き尽くす。万物よ、その行いをとくと悔い改めよ。憤怒の炎イラプション――


 上記の詠唱と魔導具、一分ほどの発動準備時間で発動。背後に火山が出現し、溶岩が辺りを覆い尽くす。現代魔法に於いて最高峰の魔法とされており、その威力も範囲も並の魔術を遥かに超える。しかし、見境無く攻撃を続けるため、仲間や自分自身が巻き込まれる危険もある。



『空を飛ぶ魔法』


『攻撃を跳ね返す魔法』


『浄化魔法』


『回復魔法』


いずれも法暦には存在していたとされる。

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