第7話 前言撤回と思った。
〈異世界時間:七月二十二日・午前九時〉
宮殿内を見て回った私達は僧衣姿のまま、この国の情報を調べる事にした。事前情報が無いまま国内をうろつくのは大変危険過ぎるもの。
ただね、この状態で魔力を練ると何らかの結界に触れそうだったので神力で魔法行使する羽目になった。これを行うと絶対現れるから極力避けたかったけど背に腹はかえられなかった。
聖精霊が顔を出すから。
『どうせなら〈地図〉スキルが欲しかったよ』
『分かるよ、姉さん。闇精霊が鬱陶しいもの』
『
一応〈魔力隠蔽〉スキルはあるけど〈神力隠蔽〉スキルは無いんだよね。この〈魔力隠蔽〉も無意識に拡散する魔力が見えなくなるだけで魔法として放出した魔力には適用出来ず、多重詠唱で隠蔽しつつ探索するしかないんだよね。
『禁書庫は何処にあるかな?』
『先ずは地図魔法を展開して』
『探索魔法で調査かいし!』
情報を得るなら禁書庫と決まっている。
そこを目がけて地図魔法と探索魔法で該当箇所を探るのだ。神力の魔法だから神を意図的に除外する結界でも無い限り影響はしないしね。
すると私達を見ていた
『三人は息を吸うように』
『魔法を使ってるしぃ』
『う、羨ましい!』
何処からハンカチを持ってきたのか、口に咥えながら唸っていた。あれは神装と同じように創り出しただけみたいね。凄い器用だよ。
一先ず、禁書庫の場所が判明したので、三人の前を歩きながら言い訳した私達だった。
『そこはほら、熟練の経験があるからさ』
『それと鍵言を知っているかどうかもね』
『伊達に三千年以上は生きているからね』
『『『は? 三千年?』』』
『『こらぁ!
『あっ! てへぺろ!』
この子は何処か天然なところがあるよね。
一体誰に似たんだろう? 母さんかな?
そんな会話を行いながら宮殿の奥深く、
『まさか地下にあるとはね?』
『この状態だと素通りだけど』
『幽霊に通用しない物理結界なり〜』
『『私達は幽霊と違うよ!』』
『ごめんごめん。冗談だよ』
『というか
『何処か真実めいているよね?』
『霊体には変わりないでしょ?』
『『『ああ、うん』』』
禁書庫に到着した私達は扉をすり抜けて内部に入った。禁書庫というだけあってその蔵書は相当古い物が多く、建国当時から最新の代物まで、ずらりと並んでいた。
先ずは私が知識神の権能で大規模な魔法陣を禁書庫内へと描く。
『蔵書蒐集開始!』
これは蔵書内の情報を集める特殊魔法だ。
手当たり次第蒐集して魔導書に記していく。
厚さは六法全書と同等くらいになったね。
次いで
『該当情報だけ得たらいいね、姉さん』
『それでいいよ』
これは魔導書検索魔法という特殊魔法だ。
該当情報が魔導書上に魔力膜で表示される。
『何か姉さん達の権能が羨ましくなるよ』
『
『お腹が空いた時なんかはいいなって思う』
『あとは装備品を創る時とかね』
『迷宮に潜る時とかも迷わないし』
『あるある! 都心の某ダンジョンでも』
『
いや、本当に。元々迷宮神の権能は少なかったが、地の能力としてなのか
『ど、どう反応していいか分からない』
『それって適材適所って事でしょ?』
『私達なんて何が出来るのか分からないし』
『うんうん』
『『『・・・』』』
そういえば三人は権能を知らなかったね。
私達は顔を見合わせ、念話で話し合う。
⦅
⦅うん、あれだよね。全体が凍っちゃうやつ⦆
⦅あとは結界系だから両方使うと殲滅だね⦆
護りに使うなら大変役立つ権能だけど。
次に
⦅
⦅そ、それを
⦅姉さんが相手でも股間蹴りが来るよ?⦆
⦅別に下ネタではないけど?⦆
⦅⦅そういう意味で言ってないよ!?⦆⦆
私は冗談で言ったが
もう一つは時間系なので過去を読み取る上では重宝すると思う。嫌な過去を当人が最初に見てしまう弊害もあるが。
⦅
⦅というか創る側だよね。必要なら合成で⦆
⦅役立つよね。ドワーフの主祭神でもあるし⦆
⦅うん。
⦅相性もピッタリだしね?⦆
⦅あとは居眠りババアともね。鍛冶神だし⦆
⦅そこは
分類上は
もう一つの権能は空間系。
という沈黙にも似た念話を行っている間に、
『結果が出たね。膨大な量だから』
『時間がかかったけど。国名はシルフェ王国』
『場所は水上かぁ。大滝壺の真ん中に浮かぶ』
必要な情報が集まった。
場所的にはそこかぁって感じだけど。
『湖に潜ると母さんのゲフンゲフン』
『姉さんって下ネタが好きだよね?』
『うん、割と好きだよ。ムッツリじゃないし』
『というよりそういう場所を造り込む父さんがおかしいのでは? 一応、女性だよ。母さん』
『『確かに』』
そして情報を精査して勇者召喚に至った理由も知った。
『あらら、中層資源の枯渇かぁ』
『ということは、討伐とは名ばかりの?』
『侵略目的の召喚だったのね。おかしいと思ったよ。筋トレ魔王以外は平穏過ぎるもん!』
『『『侵略!?』』』
それが目的だったなら
継続で召喚されてしまっては堪らないもの。
異世界人を消費する手駒としたいだけだからね。必要ならどんどん寄越して浪費すればいい的な。全くもって自分勝手だと思う。
『分かったのはこれくらい?』
『うん。あとは魔法が失敗する話もあるけど』
『失敗ねぇ? 失敗する条件って分かる?』
『魔導神の立場から言わせてもらうなら』
『なら?』×5
『魔力密度が低下している事かな? 下位精霊の数が極端に少ない事も要因だけど』
『『『下位精霊?』』』
『ああ、それはね? 人族が魔法を使ううえで必要な精霊達の事を示すの』
『『『どういう事?
『先生って』
『
『姉さんまで言わなくても』
『代わりに教えるけど』
『『『二度言った』』』
『こ、この世界の一般的な常識で言うとね?』
一般的に魔法の行使には体内にある魔力源から必要量の魔力を練って引き出す必要がある。
引き出してから願う魔法へと昇華させる。
呪文詠唱は魔法の昇華補助を行うだけね。
何をどうしたいと精霊に伝えるだけだから。
『実はこの魔力源には下位精霊が宿っていて、宿主の身体へと随時魔力を供給しているの』
『か、下位精霊が』
『私達の身体の中に』
『や、宿っているの?』
『私達は違うけどね。前にも話した通り私達は精霊達に供給する側。神力の残滓、神素を魔力変換する事が精霊の仕事ね。頭痛は下位精霊の苦情が頭に響くからなの』
供給された魔力は体内の器に貯まり続け余剰魔力だけは常時外へと放出拡散しているのだ。
『私達の場合は無意識に変換が出来るから精霊要らずとなるけどね? 蓄える容量もレベルを引き上げれば増えるし、下げれば減るけども』
『『『それならコツを教えて!』』』
話はそれたが、現状の魔力密度低下は人族に宿る精霊が疲弊消滅しているから起きている事案だ。そのうえ魔法が失敗したり魔法が使えなくなる不味い状態へと変化している。
事案だけは分かったが原因不明なまま今の私達では原因の追及自体が不可能な部類だった。
(上から見たら分かるかもだけど、それには登らないといけないしなぁ)
そして次は現在地からの移動経路を探った。
『先ずは大滝壺の湖を出て小山の山道と登って行くでしょ?』
『そこから火山地帯を通り抜けて』
『双子山と平野部の境目まで向かうと』
その先にかつての私達が過ごしていた大森林が存在していて、大森林の中に結界で護られた大神殿が存在する。この大神殿から神界に登れば帰れるのだけど凄い遠いんだよね。
『間にある迷宮門、そこを如何に避けるか』
『だよね。あそこから這い出る魔族が厄介』
『だもんね〜。魔界にも繋がっているし!』
『『『魔界!?』』』
魔界、それは別名:魔族の住まう地だ。
私だけなら割とすんなり通してくれるけど
ほら、
魔族には闇属性を使う者が多いから。
途端にヘコヘコして接待が始まるのだ。
『となると〈空間転移〉で向かうには』
『やっぱりレベル60に上げた方がいいよね』
『現状の魔力だと双子山の頂上が最大だし』
そうして調査を終えた私達は自身のレベルを60にまで引き上げ、宮殿内を地上に向けて闊歩する。まぁ神体のままなので誰何は無いが。
その間に衛兵やら魔導士達の探索魔法があちらこちらから飛んでくる始末だ。
『まだ捜索してるよ?』
『お供は帰還したのにねぇ』
『神隠しに遭ったと思っているみたいだね』
『それはこちらの台詞だよね?』
『自分勝手に召喚しておいて』
『戦地に向かわせようとしたから』
すると、私達の目の前から輿に乗った、
「この騒ぎは何なのです?」
「はっ! 先ごろ、召喚した勇者様方のお連れが王宮より消え去ったのです。原因は不明でして現在捜索にあたっております」
三人の煌びやかな王女様が現れた。
一人は金髪に
胸は目測でノーブラのEカップだった。
魔力属性は闇属性だ。
「そう。ご苦労さま」
「はっ!」
「少々、騒がし過ぎるわね」
「本当に」
一人は金髪に
胸は目測でノーブラのGカップだった。
魔力属性は風属性だ。
最後の一人は金髪に
胸は目測でAカップだった、どんまい。
魔力属性は水属性だ。
その王女様達は仲が良いのか、
「確か、姉上の発案でしたよね、これ」
「ええ。遺跡から持ち込んだ陣を解析して」
「埋め込んで。結果的に謎の剣が飛んできて壊れたとか聞き及んでおりますが」
「ふん。異世界人などに頼らぬとも」
「我らの力で討伐すれば良いものを」
「実の姉ながら呆れてしまいますわ」
輿に乗ったままこの場に居ない残り者の悪口を言い合っていた。姉上って事は妹達かぁ。
「そしてその遺跡にまたも向かって回収中と」
「似たような代物があるといいですわね?」
「そうですわね。あの執着だけは感服ですが」
ショートヘアの王女様はそう言って溜息を吐いていた。なお、背後からは
私はそれを聞き遠い目をして
『なぬ? これはまたやらかすっぽい?』
『やらかすみたいね。って
『ごめんごめん。ちょっと気になったから、おっぱいとお尻を揉んできた。大きかったよ!』
『
『『『そうそう』』』
『ん〜? 何か波長がね、合ったっていうか』
『私もそんな感じ。他人ではない的な』
『他人では無い、ねぇ? ん?』
『あっ』×5
すると何故か見えている反応を示された。
主に揉まれた者達が私達に気づいていたの。
揉まれた箇所を両手で恥ずかしそうに隠して右手に持っていた扇子が輿の上に落ちていた。
『イリス・ティ・ア・シルフェ第二王女と』
『エリス・ティ・エ・シルフェ第三王女だね』
『一応、覚えておこうか。何かあるかもだし』
『『『賛成!』』』
この邂逅がのちに、大騒動を引き起こす事になろうとは、当時の私達は知る由も無かった。
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