番外編:最強決定戦!?─バトル・フェスティバル!!─その2
「中央都市の冒険者諸君、よくぞ集まってくれた。ここに【闘技大会】を開催を宣言する! 観客の皆様方もこの最強を決める祭典、大いに楽しんで欲しい!」
歓声が巻き起こる。
「参加者の準備が整うまで、ひとつ余興を楽しんでもらおう」
喧騒の中でもギムレットの声はよく通った。
コロシアムの中央に、巨大な銀色の箱が運び込まれる。屈強な冒険者たち十数名がその筋肉を隆起させている。
ズシンと降ろされた箱がバラバラと崩れていく。冒険者たちは慌ただしくその場から離れる。
箱から現れたモノを見て、観客たちがどよめいた。
即座にギムレットの声が駆ける。
「心配しないで頂きたい。観客席には危害が及ばないように厳重に結界が張ってある」
観客席の上の方から炎の魔法が放たれる。一瞬、観客たちの叫び声が跳んだが、魔法が観客席にぶつかることなく消滅したことを見るとざわつきは止んだ。
──ギイイイイイィィィィィ!!
ソレから放たれた咆哮は聞くものを恐怖させる。本来なら中級冒険者クラスの戦意を喪失させるものであったが、結界の効力によりそれも薄れていた。
「あれは──カトブレパス。邪視の魔獣!」
クライムは眉間にしわを寄せた。巨大な牛のような姿をしたそれは、古代に多くの生物を殺した魔獣。あまりに多くを殺したために、【神の裁き】を受けて絶滅させられたはずのケモノだった。
アレは……造り出されたモノか。中央都市でも禁忌とされていたものの、フィーナのような一部の狂気の科学者たちは秘密裏に生物を生み出す研究をしていた。再興した今の中央都市にはそのような闇の部分はもはや存在しないが──。
「公に披露してくるとは……恐れるものは何もないというわけですか」
クライムは険しい表情で、丸眼鏡の位置を整えた。この『戦』、絶対に勝たなければならないようだ。
カトブレパスの前に立ったのは、褐色の肌で白銀の長髪の男だった。その美しい容姿と佇まいは男女問わず、魅了した。
「あれがあなたの【切り札】ってところですわね?」
「フレーシアか……って……ずいぶんと懐かしい恰好をしているな。本当に……あの時の君のままだ」
いや。かつての彼女以上に若々しく、そして美しい。一体どういうことだ。
戸惑うギムレットを見て、してやったり、とフレーシアは微笑んだ。
「まさか……! 君も参加するのか!? この闘技大会に」
「ええ、そのつもりですわ」
「なんと……」
本当に、なんということか。
ギムレットとフレーシアのやり取りを遠くから見るクライムは頭を抱えた。
それにしてもあの若々しさはどういうことか。自信に満ち溢れた表情。内に宿したマナの量、魔力も尋常ではない。
そうか。彼が手助けをしたのか。ならば納得だ。
断れなかったのだんだろうなぁ。クライムは彼に同情した。
「勝つのはわたくしたちですわ。挑んできたことを後悔させてやりますわ」
「……ふ。楽しみにしているよ」
歓声が上がった。
白銀の長髪の男の手刀が、カトブレパスの頭部に突き刺さった。血しぶきを浴びたその様でさえ、恐怖の象徴にはならなかった。なぜならその男は美しすぎた。まるで絵画のように。何かの芸術作品を思わせた。
「──強い」
アイリスは男の底知れぬ強さに戦慄した。
恐るべき闘気とマナ。単独の戦闘能力なら中央都市最強のユリアに引けを取らないように感じた。
「ふん。強敵だな。しかし、負けるわけにはいかない。アイリス、約束を忘れるなよ?」
セレナが言う。アイリスはふふんと笑う。
「ええ。この大会で優勝した方が、アレンさんを独り占め……じゃなくて正式な夫婦になるってことで。言い出したのは貴女なんだから後悔しないでよね」
「無論。わたしがアレンといちゃいちゃする様を指をくわえて眺めるといい」
「負けない」
「こちらこそ」
二人の間で、闘志が弾けた。
冒険者はじめました えす @es20
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