戦いの準備へ

 翌日。


 ジャンが準備を整えようと街に出ると、ユーリが目の前に現れた。

 それが意味することはすぐにわかった。

「……ヴラドに、会ったか」

「はい。私はこれより、世界樹様と交信し、対処法を探ります。あなたも一緒に来てください」

「……この槍の力を、引き出す手助けをしてくれるんだな」

 やはりこの人は話を察するのが早い。ユーリは満足そうに頷いた。


 ジャンは槍の“声”をはっきりと聴くことができるようになっていたが、力のすべてを引き出そうとすると“拒否”されていた。人の身で扱える力ではないからと槍は言うが、“そこ”に踏み入って欲しくないという強い意志をジャンは感じていた。

 ならば、強引にでも踏み込んでやる。そう思い、彼はユーリにその手助けを求めようとしていた。それをユーリは感じ取り、彼の前に現れたのだ。


 世界樹と交信するためには肉体から精神を切り離し、幽世の世界に赴かなければならない。世界樹の森にいけばそのような手間は省けるが、あの場所に足を踏み入れることはもうできないだろう。

 とにかく。世界樹との交信する過程において、破魔の槍の中へと入りこみ、より深い部分でつながることができれば、その真の力を引き出すことができるかもしれない。そうユーリは考えていた。


「……しかし、いいのですか」

「……ドロップのことだろ? ああ、オレは彼女を守るために戦う。彼女のためなら、オレはたとえこの世界を敵に回したとしても構わない」

 覚悟はできている、ということか。


「セブンさんにも“声”はかけてあります。しかし、何やら問題が生じていて、こちらに戻ってこられるかどうか……」

「いいさ、あてにしちゃいねぇよ。それじゃ、行こうか。おっとその前に、アイテムを買い揃えなきゃな」

「その必要はありません。このような事態に備えて、アレンさんは様々なアイテムを調合していってくれました」

「……けっ。さすがだな、あいつ。ま、ありがたく使わせてもらうぜ」

 ジャンはユーリからアイテムバッグを受け取った。

 “新婚旅行”の準備でそれどころでなかっただろうに。今ごろはセレナとアイリス二人相手に四苦八苦していることだろう。というか制御できるのか、あの二人。自分のことではないのに、想像するだけで苦い顔になるジャンだった。


「では行きましょう」

「ああ……ってうおっ!?」

 ユーリはジャンと共にある場所へと【転移】するのであった。


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