外伝 グッドナイト、ワールド

夜が来る

 地平線を焼きながら、日が沈む。

 幾度見ても、この赤から黒に染まる光景は見ていて心地が良い。


 夜が来る。

 眷属たちが目覚め、ニンゲンたちを蹂躙する時間がやってくる。


 奪い、奪われ。こんなことがいつまで続くのか。

 時々、わからなくなる。

 しかし、内なる声が憎悪を呼び覚ます。


 そうだ。彼らは奪ってはいけないものを自分から奪った。許してはならない。


 悪しきニンゲンもいれば、善きニンゲンもいる。

 だが、彼らは別の生き物。姿かたちは似ているものの、まったくの別種だ。理解しあえることはないだろう。ただひとりを除いては。そのひとりはもう、いない。


 ニンゲンは、強い。

 マナを操る能力も、【スキル】という異能も使いこなし、超越者をも屠ってきた。

 彼らのその強大な力は新たな争いの火種となっている。

 ニンゲンは増えすぎた。この世界にとっては毒だ。


 この世界を誰かが救わなくてはならない。誰かが……。


 そして彼は──行動を開始した。

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