四天王、帰る
カミラを除く四天王たちは、途方に暮れていた。誰からも何のお咎めもなく、放置されていたからだ。忘れられているのか、そもそも存在を認知されていないのか。
とはいえ、そのまま何事もなかったかのようにドワーフの里に戻るのも気が引けるので、そこらで野宿をする日々が続いている。
「これからどうすんべ……カミラっちは旅に出るみてぇだし……」
「ウチらもついていっていいような雰囲気じゃなかっただよん……。中央都市の復興が終わったら、しれっと戻ってみよっか……。ってベクター、まだ落ち込んでるんだよん?」
「──違う。惚れた」
「ほ!?」
「あの、アオイとかいうサムライ。美しく、強く、気高く。俺が探し求めていた理想だ」
武、一筋。そう思っていたのに、まさかそんな理想を抱き持っていたとは。これにはオルカもバーバラも驚愕した。
少なくとも、そういう想いを彼は語ることもなかった。いくら理想とはいえ、ニンゲンに惚れるなんて、かつての彼であればあり得ないことだった。
「あのベクターが……変わるもんだよん」
「変われるのだ。我々も」
変わらなければならない時が、来たのだ。新たな世界で、生きるために。
「うーーん! やっぱ、オラ、みんなに土下座して謝りまくって、どうにかまたアレンっちの傍で暮らすだよ!」
「えー。アレンちんはもう諦めた方が……」
あのもの凄く怖いひとたちが黙っていないだろう。しかも一度敵対したとあっては、なおさら。土下座したその頭を平気で踏みつぶすに違いない。オルカは背筋を震わせた。
「アレンっちの傍にいたら、これからも色々と面白そうなことが起こりそうな予感がするだよ! 新しい出会いもあるかもしんね! でも、あわよくば……ワンチャン狙うだよ! そんじゃな! うおおー!」
「あっ! ちょ……バーバラ!! んもー。おいてかないでよー!」
「ならば俺も、アオイの傍にいるため、行くとしよう」
「ベクターまで!」
「温泉で汗も流したいしな」
「……温泉。ウチも入りたいだよん。お肌べたべたで気持ち悪い」
そういえばもうずっと温泉に入っていない。はやくのんびりと温泉に浸かりたいなぁ。オルカはバーバラとベクターに続き、歩き始めた。
結局。
こうして彼らはドワーフの里へと戻っていくのであった。
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