セブン

 ブルーは地平線に沈みゆく太陽を見て、涙を落とした。

「なぁに感傷に浸ってやがる」

 セブンが背後から声をかける。

「世界は美しいね、セブン」

「はっ。わかったように言うんじゃねー。世界はもっとでっかくて、キレイなモンさ。ま、キレイなものばっかりじゃねーけど、それでもおれはこの世界が好きなんだよなー。それを今、思い出したよ」

「……うん。決めた。ぼくは、世界中を旅するよ。やりたいことを、思い出したんだ。ぼくは、病で苦しむひとをひとりでも多く救いたい。そして、ブルーの夢も叶える」

「冒険王になるってやつか。そんじゃま、おれも付き合うとするかね」


 その前に。自分をバラバラにした残りの連中をぶちのめさなきゃならない。居場所はもう割れている。力をほぼ取り戻した今ならば、そう時間はかからないだろう。

 こいつフィーナだったら、まぁ復讐に巻き込んでもいいか。けじめをつけさせるといった意味合いでも。


「……来てくれるの? 一緒に」

「ブルーのために行くんだよ。約束、したもんな。あと、おまえフィーナの監視込みだ。いつまたおまえの中のおまえが暴走するかわかったもんじゃねーからな。ってややこしいなぁおい」

「……ありがとう、セブン」

 ふいに抱きつかれ、セブンは驚いた。


「あのぅ。せっかくのいい雰囲気のところぉ、お邪魔して悪いんだけど、あたちも連れて行ってくれないかしら」

 いつの間にか幼女姿のカミラがそこにいた。

「いいけど、なんでまた」

「……あたちも、この世界のこと知りたい。今まで知ろうともしなかったから」

 知れば、何か答えがでるかもしれない。何年先か、何十年先か、何百年先かわからないけれど。


「ま、おれならとことん付き合ってやれるか。それにしても、元スライム……というかもはやよくわからん存在に、吸血鬼の真祖に、不死身のガイコツ。こりゃ、後々伝説になりそうだな。っと、おれはもうガイコツじゃなかった」

 そう言って、セブンは兜を外した。

 ブルーとカミラは驚き、目を丸くし、顔を見合わせる。


 風にさらりと流れる紫の髪。中性的な美しい顔立ち。その声もまた、美しい。

「自分がどんな姿をしていたのか思い出したらこうなった。というかどんな姿カタチにもなれそうだな。ま、いい加減鎧着てるのも飽きたからな。そろそろ脱ぐとしよう」

 セブンは笑う。


「本当の名前、思い出したんだね?」

 ブルーが訊くと、セブンは頷いた。

「ああ。だけど、いいさ。おれは、セブンだ。てめーフィーナがくれた名前だけどな、ちょっと気に入ってんだよ最近は」

「そっか」

 ブルーは、そしてフィーナは笑った。


 ようやく。ずっと、欲しかったものが得られたような気がした。


 新たな冒険が、始まった。



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