最終決戦、開始

 魔王は笑う。


「ほう。よくここまでやってきたものだ。褒めてつかわす」

「てめーに褒められてもうれしくねーな」

「ふはは、そう言ってくれるな」


 魔王は宙に浮き、アレンたちを見下ろしている。

 邪悪なマナはより強大なものとなり、その身体から溢れ出ている。


「やっほー、セブン。お楽しみの時間だねー!」

 フィーナが手を振る。

「てめーとの付き合いも今日限りだな」

「やだなー。もっと遊びたいんだけどなー。ま、しょうがないっか」

 フィーナが指を鳴らすと、宙に淡い光で魔法陣のようなものが描かれ、そこから黒い、岩の巨人が姿を現した。

「召喚魔法か」

「そ。あと、セブンのせいでほとんど焼かれちゃったけど、魔導生命体たちもいるよ」

 地面から、黒い異形たちが這い出てくる。

「数を揃えたところで……」

 セブンは【英霊召喚】を放った。英霊たちと、黒い異形たちが戦いを始める。

「なにそれなにそれ!? オモシロいねー!」

「うるせー。こっちはオモシロくもなんともねーんだよ」

 セブンは魔剣で、岩の巨人を砕く。一撃だった。

「まだ全部の力が戻っていないってのに、すっごいパワーだねー! どうなってんのそれ!?」

「うるせーなー。小細工はいいから、直接こいよ」

「うーーん。まともにやりあったら勝てないからねー。ま、色々と小細工は使わせてもらうよー」

 フィーナが何かを投げた。これは、受けてはならない。セブンは直感し、回避する。地面に落ちたそれが、爆発する。弾けた欠片が、その周辺を溶かしていた。

「えげつねーアイテム使いやがる。アレン、セレナ。こっちのケリがつくまで、そっちは頼むぜ」

 アレンは頷いた。


 そこで。


 ──アイリスが、ゆらりと奥の闇から現れた。

 そして、魔王は地面に降り立つ。


「ふむ。余とオリジナルとでは力に差がありすぎてつまらぬな。エルフよ、戯れに付き合え」

 魔王がセレナに向けて手をかざす。極大魔法級の闇の力が放たれ、セレナはそれを魔法で往なす。あまりにも簡単にやってのけるので、魔王は嬉しそうに笑った。

 セレナは魔王に向かって極大魔法を連発する。魔王はそれを“素手”で受けきる。

「ふはは! いいぞ、この力! この痛み!」

「アレン。ごめん……こいつで手一杯になる……!」

 セレナはアイリスと向かい合うアレンを見た。


 アイリスの持つ白雪からは、禍々しい力が放たれている。その一撃を受ければ、即死。それでもアレンなら、切り抜けることができるはずだ。セレナはそう信じ、魔王に更なる力をぶつけた。


「ふはは! これは楽しいな、エルフよ。もっと楽しませてくれ!」

 魔王は子供のように笑っていた。

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