四天王との闘い
先を急ぐアレンたちに、魔獣たちが襲いかかってくる。次から次へときりがない。
そこに思わぬ助っ人が現れた。
「シャイニング・アロー!」
「ライト・ボール!!」
光の魔法が魔獣たちに降り注ぐ。
「ゴルドさん、メイナードさん!」
「ふふふーん! 助けにきたよ、アレンくん!」
「実はここに閉じ込められて途方に暮れていたことは内緒だ!」
「言っちゃってるよメイナードくーん! はっはははー!」
なぜかやたら気分を高揚させた、ゴルドとメイナードが現れた。
魔獣だらけのこの場所で、よく無事でいられたものだとアレンは驚いた。
──実は魔獣たちは“金”の光が苦手なのだが、そのことをまだ誰も知らずにいる。
「さあ! 先に進もうじゃないか! 正直、何が起きているのかよくわからないけれど、悪はこのぼく“たち”が討つ!」
そう言って、ゴルドが高笑いした。
その姿に、アレンは少しだけ勇気づけられるのであった。
広大な空間に、魔王直属四天王の姿があった。
ベクター、バーバラ、オルカ、そしてカミラ。
「吸血鬼の相手とくればオレだな」
ジャンが破魔の槍を構える。
魔王を打倒に、破魔の槍は有効な手段ではある。しかし、力を取り戻した真祖カミラを相手にできるのもまた、この槍だけだった。
「魔王のヤツはおめぇらで何とかしろ。いてっ」
そんなジャンの後ろ頭を、アオイがはたいた。
「何をひとりで恰好つけようとしているでござるか」
「しょーがないなー。一応パーティメンバーだから、手伝ってあげる」
「ですわ」
アオイ、リィン、ルーシー。そこに──
「我がライバル、アレンくん! ここはぼくたちが引き受けた!」
「ここが我が死に場所と見つけたり」
ゴルドとメイナードが加わった。
アレン、セブン、セレナの三人はこの場を彼らに託し、先へと進んだ。
四天王との戦いが、始まった。
「【ウォーター】、【ウィンド】、【サンダーボール】、【アース】」
オルカが同時に四属性の魔法を放つ。
「初級魔法の連発なら、こちらは!」
ルーシーは上級魔法を放ち、オルカの魔法を打ち消す。
「まだまだまだ!」
初級魔法の連発。ルーシーは対処できなくなるものの、リィンが魔法防壁を張って防御した。
「それじゃ次は中級魔法の連発、いくよん」
オルカは笑いながら、詠唱もなしに中級魔法を連発する。
「あれ、魔法力を自動的に回復する衣を装備してるね」
「ええ。厄介ですわ……」
「極大魔法で一気に勝負かけるしかないんじゃないこれ」
相手はそれを誘導しているのではないかとルーシーは思っていた。恐らく、極大魔法を反射させるつもりなのだろう。狙いは丸わかりなのに、他に打つ手はなかった。
頼みの綱のアオイは、四本腕の敵にかかりきりになっている。
ならば、この誘いに乗るしかない。相手の想定を上回る魔法を、放つのだ。
ルーシーは呪文の詠唱を始めた。その間、リィンは初級魔法と中級魔法を織り交ぜ、どうにかオルカの魔法を凌ぐ。回復アイテムで魔力を補充しつつ、さらに魔法を放つ。ひたすら放つ。
「ルーシー! はやく、はやく! そろそろ魔力がもたない!」
「わかってますわよ! 焦らせないでくださいですわ!」
ついに、ルーシーが炎の極大魔法を放った。
オルカは笑い、【反射魔法】を展開する。
極大魔法でさえも、たやすく撥ね返す。オルカにとって想定内の魔力でしかなかった。故に、容易い。
「ちょっ……全然ダメじゃん! うわー!」
地面に落ちた魔法が、大爆発を起こす。リィンとルーシーが宙に吹き飛んだ。
ルーシーが空中で体勢を整える。そして──二撃目の、極大魔法を放つ。
「へえ。多重詠唱……やるんだよん。でも、その程度の術者、これまで何人も見てきたんだよん。むだむだ♪」
そう。これが、ルーシーの限界だった。どれだけ努力をしても、これ以上の力が身につくことはなかった。
悔しいな。ルーシーはセレナの姿を思い浮かべ、あんな風になれたらよかったのに、と羨む。
極大魔法は反射された。
ルーシーは──それを【反射】した。
「てぇっ!? 反射魔法、使えるの!?」
オルカは驚き、慌てて、再び反射魔法を展開する。
「油断、したね?」
「うへえっ!?」
すぐそばに、リィン。しかも。極大魔法を放とうとしていた。
「わちゃわちゃしてたのは、ぜーんぶ”演技”だよ。いっくよ~!」
「ちょ、やめ、やめ、やめてー!」
双方向からの極大魔法。オルカの反射魔法は破れ、轟音が地面を揺らした。
宙に浮いたオルカが、どさりと地面に落ちた。
戦闘──不能。
「ど、どうにかなりました……わね」
「格下に見てくれてなきゃ、やばかったねー……」
魔力を使い果たしたルーシーとリィンもまた、地面に倒れ込んだ。
彼女らもまた、幾多の死線を潜り抜けてきた冒険者。経験値の差が勝敗を分けたのであった。
ないものねだりはやめた。自分の持っているもの、そして仲間との絆を最大限に活用し、窮地を乗り超える、それが冒険者なのだ。
「すぐにパパのところに駆けつけたいけど……もう、動けないねー」
「ええ……この状態では足手まといになるだけですわ」
「それじゃ……少し、休憩だねー」
疲れ果てた二人は眠気に抗えず、目を閉じた。
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