灰色の冒険者の見た夢

 いつ、どこで道を踏み外したんだっけか。


 最後の意識の中、グレイは思う。


 彼は“真面目”な冒険者だった。

 堅実で、誠実。彼はとあるパーティのリーダーを務め、それなりの実績をあげていた。


 とある時。

 ダンジョンで落とし穴のトラップにかかり、“モンスターの巣”へと落ちてしまった。それまで固い信頼で結ばれていたと思っていた仲間たちは、グレイをモンスターの群れに投げ入れ、彼が喰らわれている間に逃げていった。

 生きながらに四肢を喰らわれながらも、彼は生き延びた。

 その時、彼の心は壊れた。

 彼は四肢を治してくれた錬金術師を殺し、その財産を奪い、かつての仲間たちに復讐した。

 そこからは血に塗れた人生だった。何をしても高揚感は得られず、どれだけ奪っても殺しても満たされなかった。

 

 しかし。


 最後の方は、ちょっと楽しかったかもな。

 グレイは座り込んでいるユーリを見た。

 最初に出会っていたのが彼らなら、また違った人生を歩んでいたのだろう。そう考えても仕方のないことではあったが──一度彼女と冒険してみたかったと、グレイはそう思ってしまう。


 ああ。

 見える。

 冒険者として、輝いている自分の姿が。


 幸せな夢に包まれ、彼の意識は、消滅した。

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