灰色の冒険者の見た夢
いつ、どこで道を踏み外したんだっけか。
最後の意識の中、グレイは思う。
彼は“真面目”な冒険者だった。
堅実で、誠実。彼はとあるパーティのリーダーを務め、それなりの実績をあげていた。
とある時。
ダンジョンで落とし穴のトラップにかかり、“モンスターの巣”へと落ちてしまった。それまで固い信頼で結ばれていたと思っていた仲間たちは、グレイをモンスターの群れに投げ入れ、彼が喰らわれている間に逃げていった。
生きながらに四肢を喰らわれながらも、彼は生き延びた。
その時、彼の心は壊れた。
彼は四肢を治してくれた錬金術師を殺し、その財産を奪い、かつての仲間たちに復讐した。
そこからは血に塗れた人生だった。何をしても高揚感は得られず、どれだけ奪っても殺しても満たされなかった。
しかし。
最後の方は、ちょっと楽しかったかもな。
グレイは座り込んでいるユーリを見た。
最初に出会っていたのが彼らなら、また違った人生を歩んでいたのだろう。そう考えても仕方のないことではあったが──一度彼女と冒険してみたかったと、グレイはそう思ってしまう。
ああ。
見える。
冒険者として、輝いている自分の姿が。
幸せな夢に包まれ、彼の意識は、消滅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます