絶望と対峙する希望
響き渡る絶叫。死は止まらない。止められない。
「ダメだなぁ。話が通じないや。アイリスねーちゃん、たぶんこいつら、七つのケモノの赤子だー」
白雪がげんなりして言う。
「……赤子!? この大きさで!?」
「眠りを妨げられたみたいでえらく気がたってるなー。めっちゃ腹へってるみたいだしー」
都市の人間を喰らいつくしたら、次は外か。
「うーん、おっかしーなー。ダンジョンで生まれたモンスターはダンジョンから出られないハズなんだけどなー。でも、この中央都市ってのは天然の魔法陣みたいなモンだから、こいつら、これ以上外には出られないと思うんだよなー」
「それは、どういう……」
「女神さまがそういう場所にあのダンジョンを転移させたんだろ。万が一、ダンジョンからモンスターが出てきても外界にでられないようになー。ただ、ダンジョンの上に都市をつくるなんて思ってもみなかったろうね」
炎のケモノから放たれた灼熱の炎を、白雪が氷の魔法で相殺する。
たった一体のモンスターに釘付けにされ、都市の人々を助けに行くことができない。アイリスは気持ちを焦らせた。
さらにそこに、無数のモンスターがたちが押し寄せてくる。
アイリスは戦った。ただ、ひたすらに。ハンマーを、魔法を振るう。【白銀の闘鬼】の全力は、炎のケモノをも怯ませた。
(こんなところで負けるわけにはいかない──!)
しかし。
終わりは唐突に訪れた。
現れたのは風のケモノ。
力を使い果たしたアイリスに、二体のケモノを打ち破る術はない。
「……アレンさん。助けて……」
アレンはドワーフの里にいる。その声は、届くはずもなく──。
アイリスに向かって、炎が、風の刃が、容赦なく放たれた。
──。
「……アイリス! 大丈夫!?」
「……え?」
アイリスは抱きかかえられて、宙に浮いていることに気づいた。
「──アレンさん!?」
「遅くなって、ごめん」
「いーなー、アイリス。アレンちゃんにお姫様だっこ、いーなー」
エクレールはいつものように、ブーブー文句を言っている。
中央都市に邪悪なマナが渦巻いている。その異変に気づいたのは、ユーリだった。
何か恐ろしいことが起きようとしている。それを聞いたアレンは、中央都市に向かおうとした。
しかし、突如としてドワーフの里周辺に魔獣たちが現れる。この対処に追われ、身動きがとれなくなってしまっていたのだ。
「ドワーフの里が、魔獣に!? ……大丈夫なの!?」
「うん。モンスターたちと冒険者たちみんなが力を合わせて、魔獣を倒してくれている。状況が落ち着き次第、セレナが飛翔船でみんなを連れてきてくれる。守ろう、この中央都市を」
アレンはアイリスに回復薬を手渡した。アイリスはそれを飲む。
身体に力が湧き上がる。そして回復薬以上に力を湧き上がらせるのは、アレンの存在だ。隣にいてくれる。それだけでなんて心強いんだろう。
もう、誰にも負ける気がしない。
アレンとアイリスは顔を見合わせて頷き、ケモノたちへと向かっていった。
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