第22章 魔王、復活

始まり

 中央都市。


 その中心に、世界最大のダンジョン【ガイア】の入り口が存在する。

 最大深度──不明。これまでの最高記録は50階層。

 【特級冒険者】同士がパーティを組んでも踏破することのできない、超高難易度のダンジョンである。

 このダンジョンを制覇した冒険者たち、そしてその冒険者を抱えるギルドマスターにはそれぞれ、女神からどんな願いでもひとつ叶えてもらうことができるという。


 南の大ギルドマスターのフレーシアは、いよいよこのダンジョンを本格的に攻略するため、行動を起こした。

 厳選した冒険者パーティを【ガイア】へと投入。総力をもって、このダンジョンのすべてを暴くのだ。

 世界最高峰の冒険者たちが手元に揃っている今、いかなるダンジョンであっても攻略は容易いだろう。フレーシアはそう考えていた。


 ──しかし。

 

 この進行が、眠っていたケモノたちを目覚めさせることになってしまった。


 ダンジョンが──人間たちにその牙を剥く。



「ええい。これも女神が仕組んだことなのか!?」

「神々のことだ。この状況も娯楽の一環として、楽しんで観ていることだろうよ」

 老人たちが忌々しそうに言った。

 かつてない事態だ。このままではせっかく築いた地位も名誉も、財産も──いや、自分たちの命でさえ危うい。

「ドラゴンバスターズは何をしている!? こんな時に役に立たなくて、いつ役に立つというのだ!」


 騒ぐ老人たちを【遠視】で見ている男がいた。

 これで、中央都市も終わりだ。男は笑う。

「これでよかったのかしら? 少し早いように思うのだけれど」

「私腹を肥やした、憐れな醜い老人たちのおかげで十分”育ち”ましたからね。刈り時でしょう」

「フレーシアには悪いことをしたわ」

「やっと念願が叶うと思った矢先にこれですからね。立ち直れなくなるでしょうね」

「他人事みたいにいわないでくれない?」

「これでも感謝しているのですよ。こちらが介入したとはいえ、あれだけの冒険者を揃えられたのは彼女の力のおかげですからね。それよりも貴女のお気に入り──」

「あなたのお気に入りでもあるでしょう?」


 男は笑う。

 丸眼鏡の位置をいつもの仕草で整えて。


「そうですね。とにかく手は打ってあるのでしょうね?」

「ええ、もちろん。ここには来ない。来られないでしょうね」

「ならば良しです。ここから起こる惨状は、見ない方がいいでしょうから」


 叫び声。泣き声。


 絶望が満ちていく。



 この日──中央都市は壊滅する。

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