第137話 恋するソフィちゃん

「お世話になりました、ソフィ様」

 ルシードがソフィに頭を下げる。

 ルシードは治癒魔法などで傷は回復したものの、精神の疲労によりしばらくのあいだ寝込んでしまっていた。ようやく起き上がれるまでに回復した彼は、ドワーフの里への滞在を許してくれたソフィのもとへ礼を言いに来たのであった。


「わしは何もしておらんよ」

「……あの歌。力を放ち、しばらく昏睡していたと聞きました」

「わしはわしのできることをしたまで。かわいい子たちのためならばたいしたことではないのじゃ」

 ルシードはソフィの小さな手を握った。

「あなたは素晴らしいひとだ。俺は道を外れかけましたが、あなたと、あなたの冒険者たちが俺を救ってくれました。何かあれば、今度は俺が助けます」

「う、うむ。あ、ありがとう……の。それでこれからどうするのじゃ」

「……正直、これからのことは何も考えられません。故郷ももうないし……どこかで新たな道を見つけて生きていきます」

「ふむ。それならば、しばらくここに滞在してはどうかの。温泉もあるしの。何も考えずの~んびりと過ごしみるのもよいじゃろ。おぬし、これまでトレジャーハンターとしてあちこち飛び回り続けてきたのじゃろ。少し羽を伸ばし、休んでみろ」

「……それも、いいかもしれませんね。では、もうしばらく厄介になります。本当に、ありがとうございます」

 ルシードが手を握る力を強める。

 ソフィは愁いを帯びたルシードの表情をじっと見た後で、顔を真っ赤にした。

「あ、あの。手ェ……」

「すみません。痛かったですよね」

「い、いや、だいじょうぶぢゃ。何か困ったことがあれば、いつでも力になるからの!」

 こうして、ルシードはドワーフの里に滞在することになった。


 ソフィはルシードがいなくなった後、握られていた手をじっと見つめて、そしてまたボッと火がついたように赤くなった。


「ソフィちゃんソフィちゃん! あの魔法のステッキ貸して! ジャンのおしりをぶったたくの! って……ソフィちゃん、どしたの?」

「あうあうあう」

「ソフィちゃん!? なにその顔真っ赤っか! おでこから湯気がでてる! すごい熱だー! やっぱりまだ体調が悪いのね! どーしよー! お医者さんどこー!?」

「ち、違うのじゃエクレール。これは、違うのじゃ」

「違う?」

「そうか、これが、この気持ちがそうなのじゃな……胸のドキドキが止まらぬ」

「え? ソフィちゃん、それって」


「エクレール。わし──恋をした」



 ソフィの新たな物語が、ここにその幕を開けるのであった!!!



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