後日…

 フレーシアは指輪を眺めている。


 盗まれなくて、本当によかった。


 今は亡き旦那の形見。思い出の結婚指輪。忘れようとしても、忘れられない思い出。

 

 忘れられない、思い出……。記憶が、波のように押し寄せる。


 ふと。

 彼女は寝室の机の引き出しを開ける。


 ──ない。

 あの絵が、なくなっている。


 あの子の……。事件に巻き込まれ、橋から落ちて……谷底に消えたあの子が……あの子が描いた、家族の似顔絵が。



──お宝を頂きに参ります。




「まさか。そんな」

 



 フレーシアはただただ呆然と、その場に立ち尽くしていた。

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