第114話 嫌な予感しかしない!
「ここが拙者の故郷、ユガワラでござる。ドワーフの里にも負けぬほどの温泉があるでござるよ!」
アオイがふふんと鼻を鳴らす。
「アレンさん! あとで一緒に入りましょうね! はぁはぁ」
シータの鼻息は荒い。そしてエクレールの電撃を受ける。しかし全然堪えた様子はない!
エクレールは今ここにいるメンバーには雷が通用しないと焦った。雷に耐性があるわけではないのに、全然怯まない。このままではまずい。危険だ。危機だ。アレンの、貞操の。
死守しなければ。エクレールはいざという時の力を蓄え始めていた。
「──おお、アオイ! 久しいな」
「父上!」
黒髪で美形。年齢を感じさせない若々しい男性が、アオイと抱き合った。父ではなく、兄といっても違和感はない。アオイは父親似のようだ。顔立ちがそっくりだった。
「おかえりなさい、アオイ」
「母上! お元気そうで何よりでござる」
これまた若々しい母……というよりも明らかにアオイよりも幼い顔で背の低い女性がやってきた。
彼女はアオイの義理の母で、アオイよりも年下と言う何ともややこしい関係性になっているという。
「それで……オロチは今」
「うむ。今は小康状態だ。しかし、厄介なことに【鬼族】が動き始めている」
「また奴らでござるか。オロチを貶める忌々しき一族め」
鬼族。
ジパングに住む、オーガの一種。より人間に近い
「ここ十数年はおとなしくしていた鬼族でしたが、その間、力を蓄え続けていたようです。かつてない規模で各地を攻撃して回っているようです」
アオイの母の顔が青ざめている。
その時だった。
「大変だ! 鬼が攻めてきた!」
「なんだと。数は」
「およそ一千!」
「……く。他の地で暴れている鬼どもは囮だったか。大した数ではないが、割いた戦力をすぐに戻さなければ……」
「父上。拙者たちも加勢するでござる。このような時に役に立つため、拙者は腕を磨いてきたでござるよ!」
とはいえ。
鬼族はオーガよりも強い。武器も操り、戦術も使う。千体の鬼を相手にするのは、いくらアオイであっても勝ち目は薄い。無論、それはアオイひとりであった場合だ。
アオイは仲間たちを見る。
「皆の者。力を貸してくれるでござるな」
アレンたちは頷いた。
ここからが……悲劇の始まりだった。
──もちろん。鬼族たちにとっての。
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